病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【異世界召喚ですか?】その9

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「確かに彼女の事は気の毒だと思うんだけど・・・ヒロコの対応はもうちょっと大人の対応って感じだったし、あの聖女宣言に、俺、胸が熱くなっちゃったんだよね! もう、これはヒロコに清き一票を捧げなければっ! くぅっ!」
 っと、何故か硬い拳を握るマクシムに呆気にとられた。
 (マクシムさんや? 私は選挙活動をしてる政治家かっ!?)
「いや、実際の年齢は私の方が上だと思うから仕方ないよ」
 (どう考えても、その子は普通のオタク系JKだよ、それは絶対“ 二次元に恋するオトメ”だと思う)
「そうなんだけど・・・僕もヒロコの最初の召喚士に対する、見事な介抱活動見ちゃった後だったし、第一印象は大事だと思うよ?」
 (いや、ナトンさんや? そこで面接官みたい事言われても困るんだけど・・・)
「私・・・その子が他人だと思えない」
 (言えない! 自分の担当していたラノベ買いに行って、事故ったのが聖女様になってるとか)
「そうなの?」
「うん、まったく同じ世界から来てそうだし」
 (説明できない! スマゲーの“沼友達”になれそうだとか)
 私達は敵か味方かまだわからない、もう1人の聖女について調査をする事にした。
 (隣の“沼”は何色だ!?)

 バラ園でのピクニックランチも終了に差し掛かったところで、「聖女の資質とは何か?」について四人で緊急ミーティングを開いた。
 ・・・・・・が、まったく判らない。
 出てくる意見がみな憶測でしかないのだ。
 凛々しい、美しい、様々な才能がある、頭脳明晰、聖母のような優しさ、乙女である・・・などなど。
 (どれも私には掠ってもいませんけど?)
「ねえ・・・みんな、私はまずこの世界の事をちゃんと勉強するよ。このままお互いに共通知識がないままにミーティングをしても何の解決にもならないよ・・・私にどうかこの国で生きて行く術を教えてください! お願いします!」
 私はピクニック用の敷物の上で土下座をした。
 (浄水器の交換フィルターにはなりたくない!)
 その場にいた全員が、土下座する聖女を目の当たりにして唖然とした。
「ヒロコ! 聖女がみだりにそんな頭を下げてはなりません!」
 イスマエルが先生のように私を叱った。
 私は慌てて頭を上げ、眼鏡のレンズ越しの、深く青い瞳を直視した。
「うん・・・わかった! イスマエル、もっと私に色々教えて下さい。ちゃんとした作法も覚えます」
 マクシムはそんな私をじっと見つめて、右手を伸ばしかけたが・・・戸惑いながら、私に届く前に下ろした。
 どうやらナトンが隠し持っていたナイフで、マクシムの背中をツンツンしていたらしい。
「ヒロコ・・・俺ならダンスレッスンや、美しい作法なら教員免許を持っているから、貴婦人の相手は得意分野なんだ。君を皇帝陛下の御前に出すぐらいワケないさ!」
 キラキラとした晴れた日の青空色の瞳で、私を見るマクシムに少々たじろぐ。
「へ・・・皇帝陛下の御前!?」
 (神の代理人の前になんか私を出すな! その場合は全力で逃げる!)
「そうだよ! え~と、僕は勉強とかは教えられないけど、ヒロコの為に護身術を教えられるよ! 例え体が小さくて、体力がなくて、か弱くても、技を磨けば素晴らしい体術を身に着けられるんだ!」
 いつもおちゃらけた雰囲気のナトンが、グリーンキャッツアイのような瞳で真剣に言った。
「技を磨く“体術”・・・でスか?」
 何故か目の前の男子達が、様々な意見を出し、意気投合し始めた。
 (ナニゴト! この体育会系の連帯感は?)
 三人は示し合わせたように頷き、イスマエルが自信ありげに眼鏡のアームを持ち上げ、こう言った。
「ふっ・・・では、“史上最強、最高品質、聖女育成計画”を始める!」
『おぉーーーっっ!!』
 男子三人は右拳を空に向かって掲げた。
 (ふおぅっ! 私が“育成”されるのデスカ~?)

 大変申し訳ないのですが、もう精神と体力と、色々と環境変化に対応し切れないので、本日のミーティングは強制終了させて頂きますっっっ!

 ガックリと脱力した私が正座したまま倒れた先は、極甘の潤んだ青い双眸を向けるマクシムでも、一生懸命に声をかけてくれて、相談に乗ってくれそうなナトンでもなく、時々小姑のように口うるさいけれど、ぎこちない表情で心地よい距離を保ってくれるイスマイルの膝の上だった。
「ごめん・・・今日はもう体力が限界だよぅ」
「まったく・・・早く大人に育って下さいよ」
「ムリだから!」
 そして、そんな無茶ぶりをされた私に、衝撃的な事実を告げた。
「そう言えば、ヒロコの世界の星回りでは、1年は何日あるのです?」
「は? 1年は365日でしょう?」
「やはりそうか・・・」
 その言葉にナトンもマクシムも顔を見合わす。
「やはり? ・・・て?」
「この世界での1年は、ひと月が40日で十三ヶ月あるんだ」
 マクシムが上から私を覗き込みながらそう言った。
「な・・・なんですとぉっ!?」
 ナトンは仔猫のように可愛らしく首を傾げる。
「ヒロコ・・・ここでの1年間は520日だよ?」
「は、早く言ってよぉおおおおおっ!」

 つまり・・・この世界標準では、私は17歳かぁーーーいっ!
 もう薬が、三日分しかないんですが・・・。
 ウツ病の私はどうすればいいんでしょーか?

 後にこの世界の精神科医についてジワジワ思い知る事になるが・・・まったく私の世界とは異なる部分が多く、やはり根底には“根性論”が横たわっていた。

 三日後には薬も底を尽きそうだったので、デプロメールは量を調整し、服用して六日目で在庫切れとなった、入眠剤は2日分は消費せずにお守りとして取っておいた。
 (だって昼寝できるもんね!)
 仕方がないので1日の24時間(星の自転は地球と同じらしい)のうち、14時間をベッドの上で過ごしながら、この世界の常識を少しずつ学び、聖女としての役目を学ぶ事となる。

 どうやら私の次の転職先は、城仕えの“聖女見習い”に決定したらしい――――。
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