病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【聖女の育成って何ですか?】その8

 私とノエミとクレーはゆっくりと扉の向こう側に立つ、マクシムの方に顔を向けた。
 その後ろには数人の人影が見えたが、直ぐにササっと姿を消したのだ。
「マクシム様! 早く扉を閉めて下さい!」
 クレーの声にハッとしたマクシムが扉を閉めた。
 ノエミはマクシムの姿を見た途端、私の顔を押さえていた手を離し、私はクレーによってソファーへポイっと投げられた。
「はああぁあっん! ヤッバ・・・三次元のアレクシ様ぁあああっ!!!!」
 今度は自分の両頬を押さえ、体を思いっきり反らしながら悶え始めた。
「クレー! タオルでノエミの顔をっ――――」
 (ヨダレと鼻血を拭いてあげて)
「う・け・が・お・・・グフッ・・・」
 クレーはノエミの顔にタオルを当てつつ、ポイっと彼女をソファーに転がした。
「クレー、出来れば鼻血が止まるまで横向きで!」
「承知しました!」
 真っ赤な顔をして、ソファーに横たわるノエミ、その横のお誕生席に腰を落ち着けた私、呆然と立ち尽くすマクシム、そして、静かに常温のカモミールティーを準備し始めたクレーであった。
「とりあえず、マクシム、こちらの席にどうぞ」
 横たわるノエミの向かい側のソファーの席を勧めたので、彼は黙ってその席に着いた。
 一番冷静なクレーは、背の高い白い陶器のティーカップに入ったカモミールティーを三人分テーブルの上に並べた。
「え~と、午後の作法の授業は中止でいいよね? ヒロコ」
 とりあえずノエミはそのままにして、私達二人はゆっくりとカモミールティーを口にした。
「うん、この後、来客の予定も入ってスケジュールが押せ押せになってるから、次回がんばります」
「よろしくね」
 ガタン・・・と、ベランダで大きな音がして、窓の方に視線を移した。
 大きな黒い影がそこにはあった。
 ぶほっ!
 マクシムと私は仲良くカモミールティーを吹いた。
「んなっ!? なんでルベンがここに・・・て、ノエミが居るんだからそうか・・・」
 ガラス窓の向こう側に、肩で息をしながら、青ざめてこちらを睨みつけている。
 暑苦しい黒衣を纏った、長髪のルベンが窓に張り付いていた。
 (こっわ・・・さすが魔王、赤い瞳が迫力満点だわ!)
 どうやら、断りもなく飛び出してきたノエミを必死で追いかけて来たらしい。
「ノエミ様!!」
 ベランダへ続くガラスの扉が勢いよく開き、鍵の部品が千切れて吹っ飛んだ。
 クレーが床に転がった壊れた扉の部品を拾い、嫌そうな顔をする。
「鍵の応急処置が必要ですね・・・」
 ノエミが横たわったソファーに駆け寄り、彼女の様子に更に驚きの声を上げた。
「貴様ら! ノエミ様に何をした?」
 ムッ、としたマクシムがカモミールティーを啜りながら言い返した。
「逆に君は何してた? いきなりこの部屋に奇襲をかけて来たのはそっちじゃないか。このバカ娘をちゃんと見張っとけ!」
 どうやらマクシムは‟音楽の才”を使い、先程までのこの部屋の音を拾っていたらしい。
「なに! 聖女を捕まえてバカとはなんだバカとは!?」
「は~い、バカ1号で~す!」
 鼻血を流しつつ、ノエミは手をゆるりと上げた。
 どうやら、お気に入りキャラからのののしりプレイはオッケーらしい。
「な・・・ノエミ様!」
「は~い、2号で~す」
 私も手を上げた。
「ヒロコまで・・・仲いいな、君ら・・・」
「まったく、届けられた手紙を読んだ途端、遣いに来た侍女を・・・」
「脱がして、庭に飛び出した・・・と?」
 ルベンは私の方を見て、直ぐにその場で跪いた。
「ヒロコ様、先ほどは大変失礼いたしました。うちの聖女がご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません・・・」
 (どこの迷い犬の飼い主だよ!)
「そっちの聖女はどうやら“探知”・“体力”・“浄化”の才を持っているようだね?」
 ギクリ、と分かり易い表情をしたルベンに、意地悪気な笑みをマクシムは浮かべた。
「私は、私は?」
 私にそう聞かれたマクシムは、眼を瞑り、首を傾げながら。
「ヒロコは・・・“浄化”の力が異様に強いね。後は・・・“増幅”かな? 他にもあるようだけど、どれも俺が感じた事のない能力だからよくわからないよ」
 腕を組み、眉間に皺を寄せながら答えた。
「“増幅”だと? よりにもよって・・・」
だろう?」
「増幅って何?」
「ヒロコ・・・君の近くにいると魔力と体力が増幅されるようなんだ。異世界召喚された人間は伸びしろが大きいと言われている。ヒロコ自身の“浄化の才”もこれから様々な進化をすると思うよ?」
「えええっ! 聖女ってポケ〇ンみたい!」
 (ノエミちゃん、右に同じだよ)
「ああ、ですから私の魔力と体力の回復が早かったんですね?」
 クレーは合点が付いたと言わんばかりに頷いていた。
 マクシムは、まぶたを薄っすら開きながら、宙を見上げた。
「まあ、お互いに能力について把握しないと厄介だから教えたけど。陛下への公式報告までは内容は多少ズレると思うね。あくまで俺の光属性での判定の範囲だからご愛敬だよ」
 金糸のような髪、透き通る青空色の双眸、桜色の柔らかそうな唇は背の高い白い陶器のティーカップを傾け、喉を潤す。
 白人モデルも真っ青な顔面偏差値カンスト級だ。
 よもや土下座王子だとは思えない風貌に、鼻血を垂らしながらうっとりと見つめるノエミがいた。
 黒髪長髪の魔王ルックスの迫力ある端正な顔のルベン。
 鼻血を流しつつも、茶色のメイド服を、チョコプリンな茶髪で可憐に着こなせるノエミ。
 (私以外、みんなルックスがおとぎ話レベルだなあ・・・)
 私は見目麗しい、白い陶器の芸術品のようなティーカップでお茶を啜りつつ、現実逃避をする為に庭の美しい花々に視線を移した――――。
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