病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【本物って誰のこと?】その9

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  それは、とっても大事な事だった。
 そう、憧れのおじさま、ソラルさまは既婚者であって、イスマエルのお父様である・・・と、ゆーことは・・・言わずもがな。
 ソラルさまの奥様、つまりイスマエルのお母様と言うお方がいらっしゃる。

(まぶしい・・・)
私はその神々しさに眼を細めた。
 目の前の貴婦人はモデルのようにスラリと背が高く、氷を砕いたように乱反射する銀髪と、雪のような白い肌を持ち、匂い立つような色気を漂わせている。
 老若男女問わず惹きつける紫水晶を思いわせる美しい宝石の瞳をしていた。
 顔の下半分を白いレースの扇で隠し、背の高い彼女の視線は、私を品定めをするかのように上から下へと動いていた。
 夫であるのソラルさまの代わりに、美しいお母様をエスコートする息子のイスマエル。
 そして、私の横には・・・自称“婚約者”のマクシムがいる。
 (横も眩しい・・・)
 何故か室内でも日焼けしそうな勢いだ。
 でも、無表情に近く落ち着き払っているイスマエルを視界の端に入れていると、なんだか安心した。
 きっと色的にも、服装的にも地味だからだろう。
「ヒロコ様・・・ご挨拶のできる機会がなかなか定まらず、大変失礼しました。父も呼んだのですが、急な討伐依頼が入ってしまい、取り急ぎ私から母の紹介をさせて頂く事となりました・・・・」
 (これがイスマエル先生のお母さん? マジでキレイ系!)
 とりあえず、同じ女性として自分が恥ずかしくなってきた。
「・・・イスマエル、聖女様はどちらに?」
 少し首を傾げながら隣に立つイスマエルの服を指でつまんだ。
 (うん、仕草も何故かかわいい・・・)
「えーと・・・母上? こちらが聖女のヒロコ様です」
 彼女は私が何者かはじめて気が付いたかのように、すぐに扇を閉じた。
「あら? あらあらあらあらあらあら・・・」
 いや実際、イスマエルに言われてから初めて聖女だと認識してくれたのだろう・・・。
「初めまして、現在、聖女(見習い)の職務にたずさわっております。ヒロコと申します、以後お見知りおきを・・・」
 私はスカートの両端をちょこんとつまみ、淑女らしく身を屈め挨拶をした。
「まあ、まあ、まあ、まあ、まあ、まあぁあああ・・・ご、ごめんなさい、わたくしからご挨拶をするべきでしたのに!!」
「母上、落ち着いて!」
 軽く呼吸を乱しながら、彼女は敬意を払う仕草で静かに目を伏せた。
「愛しい夫と、大事な息子を夢中にさせる聖女とやらが現れたと言うから、どのような魔性な女性かと思っていたのですが・・・こんなに可愛らしい方とは思いもよらず、ぶしつけな態度を取ってしまい大変申し訳ありません」
「母上、彼女はまだ右も左も分からない少女ですよ? そんな“魔性”だなんて・・・ぷふっ・・・」
 隣のマクシムも、口元を押さえながら肩を震わせているのが、私の視界の端に入った。
 むう、と、口をとがらせて下からイスマエルをひと睨みしておいた。
 彼女は咳払いをし、たたんだ扇を後ろにいるお付きの侍女にそれを渡した。
「・・・大変失礼をいたしました。わたくし、ソラルの正妻であり、イスマエルの母・・・フォスティンヌと申します」
 美しい銀髪の奥様は、私と同じ姿勢でスカートの両端をつまみ、私の背丈よりも深く屈もうとした。
「ストーップ!! 屈まなくていいですぅ! そんな無理な姿勢、おなかに影響が・・・赤ちゃんが、赤ちゃんがあ~~~っ!! ほ、ほ、ほら、クレー、今すぐソファーにクッションを準備して!」
 私が言い終わらないうちに、クレーは目にも止まらぬ素早さで、身重のフォスティンヌを一人掛けのソファーに座らせた。
「まあ、そんな・・・わたくしごときが、上座に座るなど!」
 直ぐにソファーから身を起こそうとしたフォスティンヌを、私は掌を前にかかげて止めた。
「そんな姿勢でお腹に力を入れちゃダメ! 今はまだ安定期じゃないのですから、楽な姿勢でどーぞっ!」
「はあ・・・はい・・・恐れ入ります・・・」
 フォスティンヌはソファーの手すりを握り締めながら、姿勢を楽にする。
「クレー、ノンカフェインのハーブティーと、常温のお水をたっぷり用意して」
「かしこまりました・・・そして、ヒロコ様がまずは落ち着いて下さい」
「はい・・・すみません・・・」
 がっくりと肩を落とし、ソファーの背もたれに片手を置き、私は反省のポーズをした。
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