34 / 71
【本物って誰のこと?】その15
厨房内ではナッツチョコの争奪戦が繰り広げられた・・・のではなく、私があみだくじを作り、参加者の名前を聞き、書き込んで、当たった順番で皿に分けて行くルールにした。
「そのあみだくじって”面白いゲームだな?」
「まあ、順番や力の差なんか関係なく、運のみで恨みっこなしですから、結構、平和的な解決ができて便利なんですよ。平等や公平、実力なんて無視です、無視!」
笑い声が響く、和やかなムードの厨房内・・・これもまた作戦である。
お分かり頂けたろうか?
私はこの数分の間で、厨房内の人間の名前を聞き出し、堂々と紙に書き記したのだ。
しかも、あっという間にこのグループに打ち解けた・・・。
(まあ、私のこんな腹の中はクレーにもイスマエルにも秘密なのだが)
他人に侮られると言うのは、心地好く、楽である。
期待される重荷など・・・私には苦痛以外の何物でもないのだから。
期待の重圧・・・人々の期待に応えようと120%の力で挑んでいたが、体がついて行かなかったのが現実である・・・それが私の人生の失敗だった。
「なんか、聖女様が2人もいると、扱いに困りません?」
「え~? ミリアンちゃん、それを言ったらお終いでしょう!」
「う~ん、私は今の上司がヒロコ様一人ですけど、もう一人上司が増えちゃったら体一つじゃ足らない仕事量になっちゃうかな~って、すごく心配なんです」
「おお・・・確かにあるよねえ、偉い人が2人で、一体どっちの話を聞けばいいのか? っての」
「そうなんですよ、私の前の職場では本来は一人の人間に、多数の上役を付けることが禁止されてたのに・・・」
係長・課長・次長・部長・・・みんな言ってる事違うし、おいおい、それ労働基準法とか守ってないから! リテールマーケティングの試験問題にも思いっきり間違いだって出題されているからっ!!
よくある、よくある・・・。メンヘル試験にも出てるってばよ・・・。
「どちらかが偽物って路線の話しか?」
ピシッと、空気が張り詰めた。
ずずん、と、体格の良いシブい中年のおじ様が、白い調理師の制服を着て仁王立ちをしていた。
(ヤダ! かっ・・・かっこいいっ!!)
顔に刻まれた深いシワ、白髪混じりの揃えられた短髪、大鍋を振るう為の太い腕、鋭い眼光。
(ス・テ・キ!)
「りょ・・・料理長! いま、こちらに席をっ! ささっ!」
どすん、と、質素な丸椅子に腰を置いた料理長が落ち着いた瞬間に、私は飛び上がった。
「初めまして、侍女見習いのミリアンと申します。あの、いつも聖女様のお食事を作っていただいている方でしょうか?」
「ああ・・・そうだ」
料理長は不機嫌そうに、眉間にシワを寄せたまま腕を組んで座っている。
「お会い出来て光栄です。いつも美味しい食事をありがとうございます」
「そうか・・・聖女様はたくさん召し上がるので、あの予算では10人前がやっとなのだがな」
「・・・はあ?」
と、私は思わずイスマエルの方に振り向いた。
そのイスマエルもさすがに目が点になっている。
「ん? どうした? 聖女様は膨大な魔力を維持するために沢山召し上がるのだろう?」
「え? 食べてないよ? なんで? いつも、パンは二つだし、スープとサラダは一皿だし、お茶で空腹満たしていますし、おやつは確かに二人分食べますけど・・・」
「んん? そんなばかな・・・」
私は再びイスマエルの方に振り向く、彼は左右に首を振っていた。
「知らん!」と・・・。
誰かと一緒に食事を取るとき以外は、他のメンバーは貴族にお呼ばれしているか、貴族専用の食堂を利用しているはずだし、聖女のスペースで食事なんかしない・・・おかしい・・・。
例え、イスマエルが執務室で同じメニューを取るとしても、そんなに食べないだろう?
「それって・・・誰のおなかに入っているんですかね」
「聖女様本人は何人前召し上がるのだ?」
「たくさん食べても二人前が精一杯ですけど・・・」
(確かに大盛ごはんは食べますけど、おかずは一人前で十分ですよ?)
「おかしいな・・・注文票と違うぞ?」
「あの、ちなみに毎回請求される手数料が1千Bなのですが・・・それは何故でしょうか? 料理長様の指名料が発生するのでしょうか?」
「はあ? そんなもん取る訳がないだろう! どこの宿屋のルームサービスだ?」
私はその言葉を聞いて、胃の下の方がふつふつと煮えたぎるように感じた・・・イラっとしたのだ。
(誰だい? こんなバカバカしい、ケチ臭い事をする大馬鹿野郎は・・・)
私は振り向き、再びイスマエルと眼を合わせた。
彼の眼が怒りに冷たく燃えている。
「料理長様、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「なぜだ?」
「いえ、さっきのナッツチョコ争奪戦のあみだくじで名前を頂いてないので、どうしよっかな~? と」
「ナッツチョコだと!?」
「そのあみだくじって”面白いゲームだな?」
「まあ、順番や力の差なんか関係なく、運のみで恨みっこなしですから、結構、平和的な解決ができて便利なんですよ。平等や公平、実力なんて無視です、無視!」
笑い声が響く、和やかなムードの厨房内・・・これもまた作戦である。
お分かり頂けたろうか?
私はこの数分の間で、厨房内の人間の名前を聞き出し、堂々と紙に書き記したのだ。
しかも、あっという間にこのグループに打ち解けた・・・。
(まあ、私のこんな腹の中はクレーにもイスマエルにも秘密なのだが)
他人に侮られると言うのは、心地好く、楽である。
期待される重荷など・・・私には苦痛以外の何物でもないのだから。
期待の重圧・・・人々の期待に応えようと120%の力で挑んでいたが、体がついて行かなかったのが現実である・・・それが私の人生の失敗だった。
「なんか、聖女様が2人もいると、扱いに困りません?」
「え~? ミリアンちゃん、それを言ったらお終いでしょう!」
「う~ん、私は今の上司がヒロコ様一人ですけど、もう一人上司が増えちゃったら体一つじゃ足らない仕事量になっちゃうかな~って、すごく心配なんです」
「おお・・・確かにあるよねえ、偉い人が2人で、一体どっちの話を聞けばいいのか? っての」
「そうなんですよ、私の前の職場では本来は一人の人間に、多数の上役を付けることが禁止されてたのに・・・」
係長・課長・次長・部長・・・みんな言ってる事違うし、おいおい、それ労働基準法とか守ってないから! リテールマーケティングの試験問題にも思いっきり間違いだって出題されているからっ!!
よくある、よくある・・・。メンヘル試験にも出てるってばよ・・・。
「どちらかが偽物って路線の話しか?」
ピシッと、空気が張り詰めた。
ずずん、と、体格の良いシブい中年のおじ様が、白い調理師の制服を着て仁王立ちをしていた。
(ヤダ! かっ・・・かっこいいっ!!)
顔に刻まれた深いシワ、白髪混じりの揃えられた短髪、大鍋を振るう為の太い腕、鋭い眼光。
(ス・テ・キ!)
「りょ・・・料理長! いま、こちらに席をっ! ささっ!」
どすん、と、質素な丸椅子に腰を置いた料理長が落ち着いた瞬間に、私は飛び上がった。
「初めまして、侍女見習いのミリアンと申します。あの、いつも聖女様のお食事を作っていただいている方でしょうか?」
「ああ・・・そうだ」
料理長は不機嫌そうに、眉間にシワを寄せたまま腕を組んで座っている。
「お会い出来て光栄です。いつも美味しい食事をありがとうございます」
「そうか・・・聖女様はたくさん召し上がるので、あの予算では10人前がやっとなのだがな」
「・・・はあ?」
と、私は思わずイスマエルの方に振り向いた。
そのイスマエルもさすがに目が点になっている。
「ん? どうした? 聖女様は膨大な魔力を維持するために沢山召し上がるのだろう?」
「え? 食べてないよ? なんで? いつも、パンは二つだし、スープとサラダは一皿だし、お茶で空腹満たしていますし、おやつは確かに二人分食べますけど・・・」
「んん? そんなばかな・・・」
私は再びイスマエルの方に振り向く、彼は左右に首を振っていた。
「知らん!」と・・・。
誰かと一緒に食事を取るとき以外は、他のメンバーは貴族にお呼ばれしているか、貴族専用の食堂を利用しているはずだし、聖女のスペースで食事なんかしない・・・おかしい・・・。
例え、イスマエルが執務室で同じメニューを取るとしても、そんなに食べないだろう?
「それって・・・誰のおなかに入っているんですかね」
「聖女様本人は何人前召し上がるのだ?」
「たくさん食べても二人前が精一杯ですけど・・・」
(確かに大盛ごはんは食べますけど、おかずは一人前で十分ですよ?)
「おかしいな・・・注文票と違うぞ?」
「あの、ちなみに毎回請求される手数料が1千Bなのですが・・・それは何故でしょうか? 料理長様の指名料が発生するのでしょうか?」
「はあ? そんなもん取る訳がないだろう! どこの宿屋のルームサービスだ?」
私はその言葉を聞いて、胃の下の方がふつふつと煮えたぎるように感じた・・・イラっとしたのだ。
(誰だい? こんなバカバカしい、ケチ臭い事をする大馬鹿野郎は・・・)
私は振り向き、再びイスマエルと眼を合わせた。
彼の眼が怒りに冷たく燃えている。
「料理長様、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「なぜだ?」
「いえ、さっきのナッツチョコ争奪戦のあみだくじで名前を頂いてないので、どうしよっかな~? と」
「ナッツチョコだと!?」
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載