病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

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【本物って誰のこと?】その16

 料理長の厳しい視線が周囲をぐるりと一周し、その場にいた部下の調理師達は口の端にチョコを付けながら目を逸らした。
「お忙しそうだったので・・・お先に頂きました・・・」
 一番おしゃべりだった金髪の調理師が、ムグムグと自分のナッツチョコを全て口に放り込んでいた。
 私はイスマエルが持っていた冷えたトレイの上のトリュフチョコレートを、トングで二つほど皿に移し、料理長の前に出した。
「どうぞ、まだまだ未熟な私のお菓子ですが・・・聖女様の御心が入っております」
「聖女様の・・・?」
「私は聖女様の侍女見習いのミリアン、陰日向となり、あの方を支える役目を担っております」
 クレーはすっと立ち上がり、頭を垂れる私の横で同じく料理長に頭を下げた。
「私は聖女様の直属の侍女クレーでございます。この、幼いミリアンを・・・立派な淑女に育てる指名を仰せつかっております。以後、お見知りおきを・・・」
 眉間にシワを寄せながら、トリュフチョコレートを料理長は口にした。
「・・・これは・・・素晴らしいな、チョコレートとコニャックの香り、そして主張しすぎないナッツが入っている。見事だ・・・」
 何事もなかったかのように、料理長はトリュフチョコレートを胸のポケットに入れようとしたが。
「あ、それすぐに溶けちゃいます」
「・・・そうか」
 私の忠告を素直に聞いて、もう一つ口に含んだ。
 料理長の周りに、薄っすらと金色の光が滲む――――。
 (あれ? ヤバイ、私また祝福しちゃったか?)
「俺の名前はギヨム、ここの料理長をしている・・・以後、お見知りおきを・・・で? 今夜の夕食は何人前で予算はいかほど? 手数料は今後とも存在しないので、犯人の心当たりを確認しようか?」
「いえ、正式な注文書を料理長ギヨム殿にお渡しします。調査は後日、証拠を集めますのでご協力頂けると助かります」
 真面目眼鏡イスマエルが、そう言いながら一枚の紙を出した。
 それはまごうことなき、夕食の正式な注文書だ。
 今までイスマエルは口頭で指示を出していただけだったのだろう。
 ギヨムはその注文書を静かに受け取った。
「坊ちゃん・・・相変わらず姿を消すのが得意なようだ・・・」
「まあな、かくれんぼで練習したからな・・・」
 どうやら二人は知り合いらしい。
「本日と明日も二人前ですね、きちんと証明印も入ってますね。やはり、いつものメモ書き程度の注文書は偽物でしたか・・・」
 そう言って、ギヨムは渋くも爽やかな笑顔でイスマエルを見つめた。
「このがどうやら“本物”を運んで来てくれたようですね」
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