病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

文字の大きさ
38 / 71

【それは偽りではなく、ノリです。】その1

しおりを挟む
「はい、仕上がりましたよ」
 私の後ろにひざまずき、白いエプロンの結び目を可愛くリボン調に仕上げたクレーが、ポンっと、軽く叩いて合図した。
 大きな鏡の前で、右左と私の肩をグイグイ回して服装のチェックをする。
 こちらの世界に着いたばかりの私は黒髪のショートボブであったが・・・今は少し髪が伸びて、残念なお菊人形っぽくなってしまっている。
 うん・・・ますますお子様風になっているような・・・?
 そして、前髪の金色のメッシュはマクシムのせいで“婚約者の証”で付けられたものだ。
 右側の灰色メッシュはイスマエルの“忠誠の証”、その後ろ側のもう一束が茶色いのはナトンの“敬愛の証”なんだそうだ。
 それを目立たないように、侍女のクレーは私の髪をちょちょいと上手くまとめて、メイドキャップで留めてくれた。
「ありがとう、クレー! それじゃあ今日もお勉強頑張ってきま~す!」
「はい、ミリアン行ってらっしゃい」
 きれいなお姉さんキャラのクレーは笑顔で私を見送ってくれた。

 本日は、城内の職場見学である。
 もちろん、侍女見習いのコスプ・・・制服を着て、マクシムに作法の授業を受けつつの城内の仕事がどんなものであるか教えて貰いながら、歩き方も矯正しつつ・・・である。

 庭師のお仕事は凄い、このだだっ広い城内をこんな素敵に保っているなんて、凄いハードなお仕事だと思う!
 これは、あのネズミ様がいる有名な施設のようなところの庭師レベルではありませんか?
 城内を清掃する専門の業務や、書面の配達を専門とする郵便室、机や椅子を管理し、必要とあれば会議室の備品を素早く配置転換する施設管理業務、はたまた、廊下に飾る花を専門に生ける業務・・・侍女とか下働きとかだけだと敷地が広すぎるので、仕事がどこからからどこまでか区別できないとの事。
 当たり前だよね、だってお城だもん。
 城内の案内を専門とするコンシェルジュっぽいお仕事まであるのだ。

「あれ? 聖女って騎士とか付くの? マクシム」
「ん? ・・・俺達三人が兼任してるよ?」
「兼任?」
「制服とか無いけど、俺もイスマエルもナトンも聖女の為の騎士だよ」
「ええ!」
「・・・ミリアン、言葉使い・・・まあ、そのうち護衛の数も増えていくけどね」
「申し訳ありません。マクシム様とナトン様はなんとな~くわかるのですが・・・」
「イスマエルは・・・あの騎士団長の息子だよ?」
「いや・・・まあ・・・そうなんですけど・・・」
 小姑みたいで、いつも勉強を見てくれてるイスマエル先生の騎士姿なんて想像できない。
 彼はなんだか武官よりも文官っぽい印象が強い。
「ミリアン、俺は聖女様に仕える者として・・・同僚と思っているキミには軽口を叩くけど、実際、本当に侍女を演じ切るなら・・・クレーを真似るのが分かり易いと思うよ?」
「・・・ありがとうございます。とても分かり易いです・・・つい、今日は初めて足を踏み入れる場所が多く、浮かれすぎてしまいました」
「分かればよろしい」
「そして・・・大変申し訳ないのですが・・・」
「ですが?」
「そろそろ私の体力の心配をして頂けると嬉しゅうございます・・・」
 へにゃり。
 と、私は膝から力が抜け、床に沈んだ。
「い・・・一番近い医務室はどこだぁあぁあぁっ!!」
 マクシムが私を床から助け起こし、そう叫んだところで私の意識は途切れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...