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【それは偽りではなく、ノリです。】その2
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ぱちり。
目を覚ますと、普通の高さの白い天井が視界に入った。
最近ようやく見慣れた豪奢な天井ではなかった。
逆に、今まで見ていたことが夢で、私が今いるのは病院のベッドだと言われれば納得できたかも知れない。
私は簡素なベッドにひとりで横たわっていた。
きょろきょろ見回すと、病院の個室のように思えたが・・・残念ながら壁も窓枠もベッドの作りも私の知っている近代日本の造りとはかけ離れていた。
美しい曲線を描く窓枠、はめられたガラスの透明度はかなり低いが、趣がある。
頭がなんだかぼうっとして、次の正しい行動が思い浮かばなかった。
扉のひとつ向こう側は、沢山の人の気配がして随分と騒がしい。
ひょっこりと起き上がり、ベッドの横に置かれた靴を履き、心の赴くままに扉を開き廊下に一歩足を出した。
「あ、あんたね! ドジ踏んで降格したって言う新人は?」
「えっ!?」
ぐいっと、左腕を掴まれ、灰色の制服を着た体格の良いおねーさんにそのままリネン室に連れて行かれ、タオルの入ったカゴを渡され、おねーさんの方はシーツの山を担いだ。
「もう! 初日から迷子ってどういう事? 制服がまだ支給されてないってのは聞いてたけど、勝手に病室に入っちゃダメじゃない!」
「あ・・・はい、すみません」
訳も分からず、とりえず謝っておいた。
このおねーさんはどうやら看護師のようだ。
「あんたもそんな若いのに、いきなり看護塔に配属されちゃうなんてついてないわね」
周りは包帯を巻いたケガ人やら、同じ灰色の制服を着た看護師らしき人達がいた。
ここは城の一部なのだろうか?
(はじめて来るところだから、何がなんだかわかんないや・・・)
「あたしはノア、あんたは?」
鼻息を荒くした妙齢の女性が、胸を張って名乗る。
「・・・・・・・・・ミリアンと申します」
「十代の娘が来るって聞いてたけどさ・・・そんな立派な侍女服来て・・・」
何故か同情するような眼差しで見つめられた。
「あ、あのう・・・」
確実に別人と勘違いされている事に気が付き、誤解を解こうとしたのだが。
「わかってる、わかってる! どうせエロ親父にセクハラされて反撃しちゃったんでしょう? あるある、ここに来る可愛いくて若い娘はみんなそう、そんで、ここのハードな仕事に参っちゃって、ごめんなさいして元ン所で頑張り直すのよ!」
力技で言い負かされたような気分になり、どうでも良くなってきた。
ノアは大股で力強く歩きながら、途中で蒸しタオルの入った桶を準備し、私に渡した。
「新人は、まずは清拭に慣れてね! ま、男性が多いから最初は照れちゃうかも知れないけど」
本当に病院みたいだ。
床の白い樹脂の四角いタイル、白い壁・・・薄汚れているけれど、たまに、血痕らしき壁の汚れが視界をかすめた。
(き・・・気にしない、気にしない・・・)
「清拭・・・ですか?」
「そーよ、教えるから」
彼女は元気な笑顔で、六人部屋へと案内し、清拭の準備を始めた。
「ノアさん・・・そんな若い子の前でオレに脱げと・・・?」
「脱げっ!」
足を骨折した兵士の青年が悲しそうな顔をした。
「いーい? 今から見本見せるから・・・」
「あの、ノアさんお忙しいんですよね?」
「そりゃ・・・まあ、ここの仕事はハードだし」
「私、習った事あるやり方があるんで、ここは手分けして済ませちゃいましょう」
(本と動画と支援センターでほぼ付け焼刃で覚えたんだけど・・・実家のばーちゃん元気かな・・・)
「え? 大丈夫? 身体拭くだけだけどさ・・・力もいるよ?」
「では、手を貸して頂きたいときは声を掛けさせて頂きますね」
「はい、それでは失礼します」
私はささっと、ベッド周りのカーテンを閉めた。
「若輩者の私でもよろしいですか? 勉強の為、貴方の身体に触れてもよろしいでしょうか?」
骨折した兵士を不安にさせないように、営業スマイルを向け、承諾を確認した。
「もお・・・好きにして・・・」
「では、顔から失礼しますね・・・痛くはないですか?」
ゆっくりと目頭から目尻へとタオルを優しく触れて行く、額、頬、顎の順番で・・・耳も耳の裏も指でなぞっていく。
「うん、丁寧で気持ちがいいよ・・・」
「骨折しているのは足だけですか?」
「ああ・・・でも、手首を捻っていてね、動かすと辛いんだ」
「そうですか、気を付けますね・・・気になるところはありますか?」
「頭を・・・洗いたい・・・」
さすがに洗髪剤は高級品扱いらしいので、ハッカ油を垂らしたお湯で洗ってあげたいと思った。
「なるほど・・・では、お湯で洗っていいか、後で確認しましょうね・・・、腕、上げてもよろしいですか?」
「うん、自分で上がるよ・・・」
などど、触れるたびに本人に確認しながら全身を清拭し、足の指の間までゴシゴシと拭って終了した。
本来は末端から心臓に向けて拭くのが基本らしいが、蒸しタオルを替えつつ、上から下へと今回は清拭をした。
一丁上がり!
私は腕で、汗をかいた額をグイっと拭った。
目を覚ますと、普通の高さの白い天井が視界に入った。
最近ようやく見慣れた豪奢な天井ではなかった。
逆に、今まで見ていたことが夢で、私が今いるのは病院のベッドだと言われれば納得できたかも知れない。
私は簡素なベッドにひとりで横たわっていた。
きょろきょろ見回すと、病院の個室のように思えたが・・・残念ながら壁も窓枠もベッドの作りも私の知っている近代日本の造りとはかけ離れていた。
美しい曲線を描く窓枠、はめられたガラスの透明度はかなり低いが、趣がある。
頭がなんだかぼうっとして、次の正しい行動が思い浮かばなかった。
扉のひとつ向こう側は、沢山の人の気配がして随分と騒がしい。
ひょっこりと起き上がり、ベッドの横に置かれた靴を履き、心の赴くままに扉を開き廊下に一歩足を出した。
「あ、あんたね! ドジ踏んで降格したって言う新人は?」
「えっ!?」
ぐいっと、左腕を掴まれ、灰色の制服を着た体格の良いおねーさんにそのままリネン室に連れて行かれ、タオルの入ったカゴを渡され、おねーさんの方はシーツの山を担いだ。
「もう! 初日から迷子ってどういう事? 制服がまだ支給されてないってのは聞いてたけど、勝手に病室に入っちゃダメじゃない!」
「あ・・・はい、すみません」
訳も分からず、とりえず謝っておいた。
このおねーさんはどうやら看護師のようだ。
「あんたもそんな若いのに、いきなり看護塔に配属されちゃうなんてついてないわね」
周りは包帯を巻いたケガ人やら、同じ灰色の制服を着た看護師らしき人達がいた。
ここは城の一部なのだろうか?
(はじめて来るところだから、何がなんだかわかんないや・・・)
「あたしはノア、あんたは?」
鼻息を荒くした妙齢の女性が、胸を張って名乗る。
「・・・・・・・・・ミリアンと申します」
「十代の娘が来るって聞いてたけどさ・・・そんな立派な侍女服来て・・・」
何故か同情するような眼差しで見つめられた。
「あ、あのう・・・」
確実に別人と勘違いされている事に気が付き、誤解を解こうとしたのだが。
「わかってる、わかってる! どうせエロ親父にセクハラされて反撃しちゃったんでしょう? あるある、ここに来る可愛いくて若い娘はみんなそう、そんで、ここのハードな仕事に参っちゃって、ごめんなさいして元ン所で頑張り直すのよ!」
力技で言い負かされたような気分になり、どうでも良くなってきた。
ノアは大股で力強く歩きながら、途中で蒸しタオルの入った桶を準備し、私に渡した。
「新人は、まずは清拭に慣れてね! ま、男性が多いから最初は照れちゃうかも知れないけど」
本当に病院みたいだ。
床の白い樹脂の四角いタイル、白い壁・・・薄汚れているけれど、たまに、血痕らしき壁の汚れが視界をかすめた。
(き・・・気にしない、気にしない・・・)
「清拭・・・ですか?」
「そーよ、教えるから」
彼女は元気な笑顔で、六人部屋へと案内し、清拭の準備を始めた。
「ノアさん・・・そんな若い子の前でオレに脱げと・・・?」
「脱げっ!」
足を骨折した兵士の青年が悲しそうな顔をした。
「いーい? 今から見本見せるから・・・」
「あの、ノアさんお忙しいんですよね?」
「そりゃ・・・まあ、ここの仕事はハードだし」
「私、習った事あるやり方があるんで、ここは手分けして済ませちゃいましょう」
(本と動画と支援センターでほぼ付け焼刃で覚えたんだけど・・・実家のばーちゃん元気かな・・・)
「え? 大丈夫? 身体拭くだけだけどさ・・・力もいるよ?」
「では、手を貸して頂きたいときは声を掛けさせて頂きますね」
「はい、それでは失礼します」
私はささっと、ベッド周りのカーテンを閉めた。
「若輩者の私でもよろしいですか? 勉強の為、貴方の身体に触れてもよろしいでしょうか?」
骨折した兵士を不安にさせないように、営業スマイルを向け、承諾を確認した。
「もお・・・好きにして・・・」
「では、顔から失礼しますね・・・痛くはないですか?」
ゆっくりと目頭から目尻へとタオルを優しく触れて行く、額、頬、顎の順番で・・・耳も耳の裏も指でなぞっていく。
「うん、丁寧で気持ちがいいよ・・・」
「骨折しているのは足だけですか?」
「ああ・・・でも、手首を捻っていてね、動かすと辛いんだ」
「そうですか、気を付けますね・・・気になるところはありますか?」
「頭を・・・洗いたい・・・」
さすがに洗髪剤は高級品扱いらしいので、ハッカ油を垂らしたお湯で洗ってあげたいと思った。
「なるほど・・・では、お湯で洗っていいか、後で確認しましょうね・・・、腕、上げてもよろしいですか?」
「うん、自分で上がるよ・・・」
などど、触れるたびに本人に確認しながら全身を清拭し、足の指の間までゴシゴシと拭って終了した。
本来は末端から心臓に向けて拭くのが基本らしいが、蒸しタオルを替えつつ、上から下へと今回は清拭をした。
一丁上がり!
私は腕で、汗をかいた額をグイっと拭った。
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