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【それは偽りではなく、ノリです。】その8
私はこちら側で黒歴史を一つ作った事に後悔しながら落ち込んでいると、クレーがマクシムが到着した旨を伝えて来た。
「ヒロコ・・・ごめん、直ぐに迎えに行きたかったんだけど、殺傷事件で身動き取れなくなっちゃってさ、とりあえず医師を連れて来た」
「なんで?」
既に聖女の普段着ヒラヒラファッションに身を包んだ私が、勉強机から顔だけ上げた。
私の手元にはこの国の産出物や生産物の資料の束があった。
教師の教え方が良いのと、異世界転移者特有のチート能力のお陰らしく、読む事だけは早くなっていた。
だが、こちら側の文字を書くのは不慣れな為とても遅い。
「ほら、看護塔の近くでキミは倒れただろう? 最近だいぶ調子が良かったのに倒れたから、さっき見て貰った医師を直接連れて来ちゃった」
「つ・・・連れて来ちゃったって・・・すごく忙しい方なのでは?」
「・・・え、いや・・・さっきのアレでみんなほぼ回復状態になったんで、その隙にと」
「アレって?」
「“金の波紋”です!!」
マクシムの後ろから、彼をぐぐっと押しのけ、眼の下にクマを携えた医師らしき人が興奮気味に声を出した。
「あ、そーすか・・・」
(あ、だめだ、言葉遣いが直らない)
白っぽい上着には、よっぽど急いで来てくれたのか、生々しい血液が少々付着していた。
つまり私は、殺傷事件の騒ぎの中、更に騒ぎの種を植え・・・瞬時に開花させてしまったという事だ。
「六十年ぶりに召喚された聖女様ですよね? 素晴らしいお力です!」
いやにテンションの高い水色天パの極太眼鏡のおじさま? な、医師が前のめりに唾を飛ばしながら喋り始めた。
「こ・・・こんにちは?」
「いや・・・はははっ! すみません、初めまして! 聖女様、お会いできて光栄でございます。ワタクシ、看護塔の医師を務めておりますアーチュウと申します!」
興奮を表すかのように声が大きく、その声量に鼓膜がキンと震えた。
「よろしければこちらへ・・・」
コホンと、クレーが咳払いをしつつ目の前の応接セットの方へと二人を案内した。
とりあえず、大人しく二人は席に着いたが、アーチュウが分かりやすくソワソワしている。
(ああそうか、この場合は相手が先に自己紹介をしたので、次は私のターンだよね?)
礼儀作法、礼儀作法・・・と、頭の中で習ったことを繰り返した。
「はじめまして・・・私は現在聖女見習い中のヒロコと申します」
「いやはや・・・本当に幼い・・・先代のあの方よりも・・・」
「あの方?」
と、私が質問すると、クレーが再び咳払いをした。
「お話し中、申し訳ありません・・・アーチュウ様はあの方とお会いした事がおありなのですか?」
「ええ! 家庭教師として・・・少しの間ですがお仕えした事がございます」
「初耳です! 東西の宰相様以外であの方と面識があるなんて・・・先生は何歳なのですか?」
マクシムの声が一瞬裏返った。
「マテオ様とは歳が近いですねぇ・・・詳しくは内緒です!」
東の宰相であるマテオGは、確か還暦はとっくに超えているはずだ。
「クレーあの方って誰の事?」
「先代の・・・聖女様です・・・」
「ええ!? その話をもっと詳しく・・・」
机越しに前のめりになる私を静止する為か、マクシムが右手をすっと上げた。
「悪いのだけど・・・先代の話はご法度のはずですよ? アーチュウ先生、分かっていますか?」
「え! いや・・・その・・・はい、マテオ宰相のお許しがなければ・・・はい、ワタクシの口が滑りまして、大変申し訳ありません」
同時にあのマクシムがクレーを嗜めるような眼で睨み、思わず彼女が深く頭を垂れた。
「・・・今度、その若作りの情報だけこっそり教えて下さい」
「――――ソコ? マクシムが聞きたかったのソコなの!?」
いやいや・・・ツッコミ入れている場合じゃなかった・・・。
「ヒロコ・・・ごめん、直ぐに迎えに行きたかったんだけど、殺傷事件で身動き取れなくなっちゃってさ、とりあえず医師を連れて来た」
「なんで?」
既に聖女の普段着ヒラヒラファッションに身を包んだ私が、勉強机から顔だけ上げた。
私の手元にはこの国の産出物や生産物の資料の束があった。
教師の教え方が良いのと、異世界転移者特有のチート能力のお陰らしく、読む事だけは早くなっていた。
だが、こちら側の文字を書くのは不慣れな為とても遅い。
「ほら、看護塔の近くでキミは倒れただろう? 最近だいぶ調子が良かったのに倒れたから、さっき見て貰った医師を直接連れて来ちゃった」
「つ・・・連れて来ちゃったって・・・すごく忙しい方なのでは?」
「・・・え、いや・・・さっきのアレでみんなほぼ回復状態になったんで、その隙にと」
「アレって?」
「“金の波紋”です!!」
マクシムの後ろから、彼をぐぐっと押しのけ、眼の下にクマを携えた医師らしき人が興奮気味に声を出した。
「あ、そーすか・・・」
(あ、だめだ、言葉遣いが直らない)
白っぽい上着には、よっぽど急いで来てくれたのか、生々しい血液が少々付着していた。
つまり私は、殺傷事件の騒ぎの中、更に騒ぎの種を植え・・・瞬時に開花させてしまったという事だ。
「六十年ぶりに召喚された聖女様ですよね? 素晴らしいお力です!」
いやにテンションの高い水色天パの極太眼鏡のおじさま? な、医師が前のめりに唾を飛ばしながら喋り始めた。
「こ・・・こんにちは?」
「いや・・・はははっ! すみません、初めまして! 聖女様、お会いできて光栄でございます。ワタクシ、看護塔の医師を務めておりますアーチュウと申します!」
興奮を表すかのように声が大きく、その声量に鼓膜がキンと震えた。
「よろしければこちらへ・・・」
コホンと、クレーが咳払いをしつつ目の前の応接セットの方へと二人を案内した。
とりあえず、大人しく二人は席に着いたが、アーチュウが分かりやすくソワソワしている。
(ああそうか、この場合は相手が先に自己紹介をしたので、次は私のターンだよね?)
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「はじめまして・・・私は現在聖女見習い中のヒロコと申します」
「いやはや・・・本当に幼い・・・先代のあの方よりも・・・」
「あの方?」
と、私が質問すると、クレーが再び咳払いをした。
「お話し中、申し訳ありません・・・アーチュウ様はあの方とお会いした事がおありなのですか?」
「ええ! 家庭教師として・・・少しの間ですがお仕えした事がございます」
「初耳です! 東西の宰相様以外であの方と面識があるなんて・・・先生は何歳なのですか?」
マクシムの声が一瞬裏返った。
「マテオ様とは歳が近いですねぇ・・・詳しくは内緒です!」
東の宰相であるマテオGは、確か還暦はとっくに超えているはずだ。
「クレーあの方って誰の事?」
「先代の・・・聖女様です・・・」
「ええ!? その話をもっと詳しく・・・」
机越しに前のめりになる私を静止する為か、マクシムが右手をすっと上げた。
「悪いのだけど・・・先代の話はご法度のはずですよ? アーチュウ先生、分かっていますか?」
「え! いや・・・その・・・はい、マテオ宰相のお許しがなければ・・・はい、ワタクシの口が滑りまして、大変申し訳ありません」
同時にあのマクシムがクレーを嗜めるような眼で睨み、思わず彼女が深く頭を垂れた。
「・・・今度、その若作りの情報だけこっそり教えて下さい」
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