53 / 71
【それは偽りではなく、ノリです。】その16
「あんたのイメージする“ソラル”だ」
「ああ、そーゆー事ですか・・・てゆーか? ソラルさまじゃないですよソレ」
「・・・・・・魔力はあんたの涙から貰った・・・城の警備も難なく騙せたはずだ」
そうか、やっぱりあの時の涙が、彼を更なる段階に進化させちゃったワケだ。
(ポケ〇ンか? ポケ〇ンなのか? 無意識に育成しちゃったか?)
先ほどまで自信満々だった“ソラルさまもどき”の化けの皮が剥がれたのだ。
「私が強く貴方に理想を求めたから、出来上がったのはソラルさまじゃなくなってしまったんですね?」
「理想? 何の事だ?」
「その生温い白い手で、ソラルさまのように剣を振るって人を殺せますか?」
「手だと?」
彼の両手が緩み、私の首から離れた。
私はその手を両手で包み、そっと頬を寄せた。
「だから最初に言ったでしょう・・・先生の代わり・・・って・・・」
「ソラルではなく・・・先生か?」
「ソラルさまの手は剣だこができるほどかたい手ですが・・・先生の手は筆を持つ為のしなやかな白い手でした」
その言葉を聞いた偽物は、深いため息をつき、一度目を閉じて見せた。
だが、次の瞬間見開かれた瞳は魔力を帯びた金色に変化していたのだ----。
「なるほど、聖女サマの想いが強すぎて、俺は想像上の人物に化けてしまった訳か!」
彼は思い切り私の手を振り払った。
思わず身体ごと後ろによろめくが、引いた左足ですぐに体勢を整え、声色に強い意志を込めて私は言い切る。
「だって匂いがぜんぜん違う!」
「おまえは犬か!?」
(わん!)
これはまさに4Ⅾ! 匂い付きの環境を最大限に“萌え”に生かさずにしてどうするのだ!?
「貴方から油絵の匂いがしたら、マジでヤバかった!」
「くそ・・・香りか、次の課題だな」
彼は慌てて踵を返し、ベランダに向かった。
「待ぁてぇよぉぉぉ~」
私は思わず彼の外套を思い切り掴み、後ろに引いた。
彼はあっけなくひっくり返り、そのまま床に背中を付けた。
「な・・・に・・・」
段々と彼の瞼が痙攣しながらも閉じていくのが月明かりで分かった。
「惜しかったね? 匂いが分かるほど私に近づかなければよかったのに」
「どう、いう・・・」
「あのチョコレート、私が作ったなんて言ってないでしょ?」
「・・・・・・・なんなんだあんた・・は・・・」
眠るまいと彼の意識が抵抗する苦悶の表情が読み取れた。
「私が作ったトリュフチョコレートの効果を、今日遠征から帰ってきたソラルさまが知っている訳ないでしょ?」
因みにイスマエルに聞いたところ、ソラルさまはチョコレートを高カロリーの栄養補給食だと認識しているらしく、好き好んで食べないそうだ。
私が鬱の治療に処方されていた睡眠導入剤は・・・医者から「これは犯罪に使えるものだから取り扱いには気を付けてね」と、散々口うるさく言われていた薬の一つ・・・まさかこちら側の人間に、こんなに効くとは思わなかった。
ものすごくごめんなさい・・・でも、下手したら私の方が殺されていたかもしれないから、正当防衛・・・だよね?
床に仰向けに倒れ、男は心地よい寝息を立てている。
部屋のランプの薄明りの中、私は目を凝らしてその男の容姿を凝視した。
一瞬だけれど・・・先ほど確認した瞳は野性のオオカミを思わせる金色だった。
髪は月明かりに照らされてやっとわかるような不思議な紫色をしている。
何も知らずにこのままの姿のこの男に出会っていたら、多分、かなり、私は気に入っていただろう。
その男らしい物腰と、偽りのない乱暴な言葉遣い・・・絶妙なツッコミ・・・そして化ける才能・・・。
是非ともコ〇ケで出会いたかった人種だよ!
「・・・さて、これどうやって説明しよう?」
どストレートに、正直に話したとしよう・・・まずい! ソラルさまの名誉にかなり影響しちゃうのではないか!?
まさか自分の姿で聖女の私を口説いたヤツが現れたなんて噂が立てば、ソラルさまが悪くなくても・・・彼の名誉に傷がつくだろうな。
「つまり、コイツの狙いは・・・・・・私の誘拐?」
無論、私にも隙がアリアリで猛省しなければなるまい。
深呼吸代わりに大きなため息をこぼし、天蓋付きのベッドのサイドボードに置いてある真鍮の呼び鈴に手を伸ばし、クレーお姉ちゃんに色々とお願いをする事にした。
絶対明日は、イスマエルの説教が待っているに違いない――――。
「ああ、そーゆー事ですか・・・てゆーか? ソラルさまじゃないですよソレ」
「・・・・・・魔力はあんたの涙から貰った・・・城の警備も難なく騙せたはずだ」
そうか、やっぱりあの時の涙が、彼を更なる段階に進化させちゃったワケだ。
(ポケ〇ンか? ポケ〇ンなのか? 無意識に育成しちゃったか?)
先ほどまで自信満々だった“ソラルさまもどき”の化けの皮が剥がれたのだ。
「私が強く貴方に理想を求めたから、出来上がったのはソラルさまじゃなくなってしまったんですね?」
「理想? 何の事だ?」
「その生温い白い手で、ソラルさまのように剣を振るって人を殺せますか?」
「手だと?」
彼の両手が緩み、私の首から離れた。
私はその手を両手で包み、そっと頬を寄せた。
「だから最初に言ったでしょう・・・先生の代わり・・・って・・・」
「ソラルではなく・・・先生か?」
「ソラルさまの手は剣だこができるほどかたい手ですが・・・先生の手は筆を持つ為のしなやかな白い手でした」
その言葉を聞いた偽物は、深いため息をつき、一度目を閉じて見せた。
だが、次の瞬間見開かれた瞳は魔力を帯びた金色に変化していたのだ----。
「なるほど、聖女サマの想いが強すぎて、俺は想像上の人物に化けてしまった訳か!」
彼は思い切り私の手を振り払った。
思わず身体ごと後ろによろめくが、引いた左足ですぐに体勢を整え、声色に強い意志を込めて私は言い切る。
「だって匂いがぜんぜん違う!」
「おまえは犬か!?」
(わん!)
これはまさに4Ⅾ! 匂い付きの環境を最大限に“萌え”に生かさずにしてどうするのだ!?
「貴方から油絵の匂いがしたら、マジでヤバかった!」
「くそ・・・香りか、次の課題だな」
彼は慌てて踵を返し、ベランダに向かった。
「待ぁてぇよぉぉぉ~」
私は思わず彼の外套を思い切り掴み、後ろに引いた。
彼はあっけなくひっくり返り、そのまま床に背中を付けた。
「な・・・に・・・」
段々と彼の瞼が痙攣しながらも閉じていくのが月明かりで分かった。
「惜しかったね? 匂いが分かるほど私に近づかなければよかったのに」
「どう、いう・・・」
「あのチョコレート、私が作ったなんて言ってないでしょ?」
「・・・・・・・なんなんだあんた・・は・・・」
眠るまいと彼の意識が抵抗する苦悶の表情が読み取れた。
「私が作ったトリュフチョコレートの効果を、今日遠征から帰ってきたソラルさまが知っている訳ないでしょ?」
因みにイスマエルに聞いたところ、ソラルさまはチョコレートを高カロリーの栄養補給食だと認識しているらしく、好き好んで食べないそうだ。
私が鬱の治療に処方されていた睡眠導入剤は・・・医者から「これは犯罪に使えるものだから取り扱いには気を付けてね」と、散々口うるさく言われていた薬の一つ・・・まさかこちら側の人間に、こんなに効くとは思わなかった。
ものすごくごめんなさい・・・でも、下手したら私の方が殺されていたかもしれないから、正当防衛・・・だよね?
床に仰向けに倒れ、男は心地よい寝息を立てている。
部屋のランプの薄明りの中、私は目を凝らしてその男の容姿を凝視した。
一瞬だけれど・・・先ほど確認した瞳は野性のオオカミを思わせる金色だった。
髪は月明かりに照らされてやっとわかるような不思議な紫色をしている。
何も知らずにこのままの姿のこの男に出会っていたら、多分、かなり、私は気に入っていただろう。
その男らしい物腰と、偽りのない乱暴な言葉遣い・・・絶妙なツッコミ・・・そして化ける才能・・・。
是非ともコ〇ケで出会いたかった人種だよ!
「・・・さて、これどうやって説明しよう?」
どストレートに、正直に話したとしよう・・・まずい! ソラルさまの名誉にかなり影響しちゃうのではないか!?
まさか自分の姿で聖女の私を口説いたヤツが現れたなんて噂が立てば、ソラルさまが悪くなくても・・・彼の名誉に傷がつくだろうな。
「つまり、コイツの狙いは・・・・・・私の誘拐?」
無論、私にも隙がアリアリで猛省しなければなるまい。
深呼吸代わりに大きなため息をこぼし、天蓋付きのベッドのサイドボードに置いてある真鍮の呼び鈴に手を伸ばし、クレーお姉ちゃんに色々とお願いをする事にした。
絶対明日は、イスマエルの説教が待っているに違いない――――。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載