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【愛人と奴隷と心理士と諜報員?】その17
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いつも真面目で、少し所作が気障っぽいイスマエルは、とてもしっかり者でプライドがそこそこ高い。
今回の事件で、自分の父親に扮した曲者のせいで少々心労が重なっている被害者でもある。
いや、一番の被害者は私だけどね?
言わずもがな、イスマエルの父であるソラルも・・・自分の姿をした偽物が聖女をかどわかしたのである。
これはちょっと西側聖女育成チームとして世間的な立場が危ぶまれるので、やはり妙な噂が立たないようにマテオGに内密に処理して貰わなければならない。
私はいつもの体力マイナス臨界点に達してしまい、細かい説明は無理な状態なので、この辺は最強上司のマテオGから上手く言ってもらわないとまずそうだ。
プライドの高い男性って、年下女子から何か指摘されると素直に聞いてくれないからね。
クレーとギヨムの先ほどの援護射撃には感謝である。
けれど何故だか二人の言い方では私がさもご立派で思慮深く、イスマエルを思いやっている聖女キャラのような感じになってないかい?
みんなごめん、私の行動は行き当たりばったり要素盛沢山なのだよ。
でも、結果オーライ!!
「ギヨム・・・ヒロコにこのコンソメスープを飲ませたいのだな? とりあえず、この状態のヒロコに飲ませるのであれば皿ではなくティーカップに移してくれないか?」
「は・・・ただいま!」
二人は親し気に、けれど上下関係を配慮した会話を二言三言挟んだ。
そうか、イスマエルを「坊ちゃん」と言っていたのだから、そりゃあ父親であるソラルもその関係性に絡んでるはずだ。
追い追いその昔話については、興味があるので今度聞いておこうと思う。
ギヨムがティーカップに注いだスープをソラルは手に取ると、私の口元に持って来た。
「飲めるか? 何ならイスマエルがくち・・・・」
「のめる・のめる・のめる・のめる・飲めます!」
ソラル騎士団長が言いかけた台詞にかぶせるように答え、赤べこのようにガクガクと首を上下に振った。
「そうか・・・」
いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、彼はカップのふちを私の唇に触れさせたので、首の角度を調節して、要介護状態でスープを少しずつ口に含んだ。
「父上・・・今、なんと・・・?」
「いや、だからこの状態のヒロコに――――」
ソラルの大きな手をがっしりと両手で外側から押さえ・・・・・・。
ごくごくごくごくごくごっくん!
はい、ごちそうさまでしたぁあぁあぁあああああっ!
「げふん、げふん、げふんっ――――ふげほっ!」
情けない事に、鼻から美味しいスープの一部が出てしまった。
ソラルはテーブルの上にあったナプキンで、私の鼻をサッとふき取った。
「よしよし、もう休めヒロコ・・・キミは立派に戦ってくれたのだからな」
ソラルに鼻の頭をナプキンでこすられ、恥ずかしくて顔が熱っぽくなる。
「いくら何でもイチャつき過ぎですよ」
「はあ・・・馬鹿なのか?」
「なっ・・・馴れ馴れしいんですよ、あなたは! ヒロコに対して!」
ソラルはワザとらしい大きなため息をして、恨めしそうな目でイスマエルを見上げた。
「こんなに幼くて可愛い娘が居たら、父親は普通メロメロになるだろうなぁ・・・うちにはどうして年中反抗期の息子しかいないのか・・・お父さんは娘が欲しいよ・・・」
「む・・・むすめ・・・幼い・・・・・・・確かに」
そこは否定してくれないんだ!?
「・・・おまえもヒロコをそう扱っているのではないか? 可愛い、可愛い・・・手のかかる妹のように大事にしているのではないのか?」
そうなのだ・・・これが私に対するヴィヨレとソラルの決定的な差なのだ。
小さな子供をあやすように、優しく触れている。
そこに男女の機微はない、私が勝手に・・・焦がれているのだ。
「聖女ヒロコは普通の女性ではありません。大切な国の宝なので、将来の事を考えて・・・・・・」
そうだよね。
イスマエルも私に対して、妹のように・・・いや、もっと尊い何かのように、程よく接していてくれている。
「そうだな、おまえがヒロコに対して異性として接していたら大変な事になる」
「・・・・・え? ソラルさま、それはどういう――――」
予想だにしない台詞に、私は声を出した。
「黙れ、騎士団長ソラル・・・それ以上は限られた室内と言えど冒涜罪である」
ヒヤリと、室内の温度が下がった。
今回の事件で、自分の父親に扮した曲者のせいで少々心労が重なっている被害者でもある。
いや、一番の被害者は私だけどね?
言わずもがな、イスマエルの父であるソラルも・・・自分の姿をした偽物が聖女をかどわかしたのである。
これはちょっと西側聖女育成チームとして世間的な立場が危ぶまれるので、やはり妙な噂が立たないようにマテオGに内密に処理して貰わなければならない。
私はいつもの体力マイナス臨界点に達してしまい、細かい説明は無理な状態なので、この辺は最強上司のマテオGから上手く言ってもらわないとまずそうだ。
プライドの高い男性って、年下女子から何か指摘されると素直に聞いてくれないからね。
クレーとギヨムの先ほどの援護射撃には感謝である。
けれど何故だか二人の言い方では私がさもご立派で思慮深く、イスマエルを思いやっている聖女キャラのような感じになってないかい?
みんなごめん、私の行動は行き当たりばったり要素盛沢山なのだよ。
でも、結果オーライ!!
「ギヨム・・・ヒロコにこのコンソメスープを飲ませたいのだな? とりあえず、この状態のヒロコに飲ませるのであれば皿ではなくティーカップに移してくれないか?」
「は・・・ただいま!」
二人は親し気に、けれど上下関係を配慮した会話を二言三言挟んだ。
そうか、イスマエルを「坊ちゃん」と言っていたのだから、そりゃあ父親であるソラルもその関係性に絡んでるはずだ。
追い追いその昔話については、興味があるので今度聞いておこうと思う。
ギヨムがティーカップに注いだスープをソラルは手に取ると、私の口元に持って来た。
「飲めるか? 何ならイスマエルがくち・・・・」
「のめる・のめる・のめる・のめる・飲めます!」
ソラル騎士団長が言いかけた台詞にかぶせるように答え、赤べこのようにガクガクと首を上下に振った。
「そうか・・・」
いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、彼はカップのふちを私の唇に触れさせたので、首の角度を調節して、要介護状態でスープを少しずつ口に含んだ。
「父上・・・今、なんと・・・?」
「いや、だからこの状態のヒロコに――――」
ソラルの大きな手をがっしりと両手で外側から押さえ・・・・・・。
ごくごくごくごくごくごっくん!
はい、ごちそうさまでしたぁあぁあぁあああああっ!
「げふん、げふん、げふんっ――――ふげほっ!」
情けない事に、鼻から美味しいスープの一部が出てしまった。
ソラルはテーブルの上にあったナプキンで、私の鼻をサッとふき取った。
「よしよし、もう休めヒロコ・・・キミは立派に戦ってくれたのだからな」
ソラルに鼻の頭をナプキンでこすられ、恥ずかしくて顔が熱っぽくなる。
「いくら何でもイチャつき過ぎですよ」
「はあ・・・馬鹿なのか?」
「なっ・・・馴れ馴れしいんですよ、あなたは! ヒロコに対して!」
ソラルはワザとらしい大きなため息をして、恨めしそうな目でイスマエルを見上げた。
「こんなに幼くて可愛い娘が居たら、父親は普通メロメロになるだろうなぁ・・・うちにはどうして年中反抗期の息子しかいないのか・・・お父さんは娘が欲しいよ・・・」
「む・・・むすめ・・・幼い・・・・・・・確かに」
そこは否定してくれないんだ!?
「・・・おまえもヒロコをそう扱っているのではないか? 可愛い、可愛い・・・手のかかる妹のように大事にしているのではないのか?」
そうなのだ・・・これが私に対するヴィヨレとソラルの決定的な差なのだ。
小さな子供をあやすように、優しく触れている。
そこに男女の機微はない、私が勝手に・・・焦がれているのだ。
「聖女ヒロコは普通の女性ではありません。大切な国の宝なので、将来の事を考えて・・・・・・」
そうだよね。
イスマエルも私に対して、妹のように・・・いや、もっと尊い何かのように、程よく接していてくれている。
「そうだな、おまえがヒロコに対して異性として接していたら大変な事になる」
「・・・・・え? ソラルさま、それはどういう――――」
予想だにしない台詞に、私は声を出した。
「黙れ、騎士団長ソラル・・・それ以上は限られた室内と言えど冒涜罪である」
ヒヤリと、室内の温度が下がった。
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