10 / 21
1年前に婚約破棄と、冤罪で国外追放を宣言した元婚約者がいきなり現れた
前編
しおりを挟む
「会いたかった、ブランシュ」
私のところへやって来た、かつて私を追放した婚約者は、私の顔を見るなりそう言った。
「二度と顔を見せるなと言ったのは貴方だった筈ですが?」
私の元婚約者は、王家の親戚筋の公爵家の嫡男。
「私はあのアンジェリクに騙されていたんだ!」
私は隣国の公爵令嬢で、同盟強化の為にと婚約が結ばれたのだが、ジャンはその婚約を不満に感じていた。
ジャンとは、公爵家の長男で私の元婚約者の名前。
「アンジェリクさんとは、マルロー伯爵令嬢のことですか?」
「そうだ!あいつは!私以外にも、男がいたんだ!」
私は目の前でがなり立てるように話しているジャンの婚約者だったので、交流を深めるためにジャンの国へと渡った。
ジャンは最初から私を目の敵にしていたので、交流を深めるもなにもなかった。
そのうちジャンは、マルロー伯爵令嬢アンジェリクという女性と、深い仲になった……らしい。
一応ジャンはマルロー伯爵令嬢のことを隠していたので。
愛人……本人にとっては、真実の恋人らしい。なにせ婚約破棄を叫んだ現場で、そう言っていたので。とにかく真実の恋人マルロー伯爵令嬢に対して、嫉妬に狂った私が何をしでかすか解らないので、知られないように交際していたそうだ。
ただジャンも私も、互いに監視がついているので、その状況はすぐにバレてしまい、私はジャンとマルロー伯爵令嬢の関係について伝えられた。
私としては政略結婚なので、ジャンが愛人を囲うが興味はないし、故国の両親やジャンの両親に訴えたところで「正室がそんなことで、騒ぐものではない」と言われるのが関の山。
なので、特に何もしなかった。
なにか困ったことが起こっても「そっち」で処理してくれるのだろうと、無視を貫くことにした。
ジャンとマルロー伯爵令嬢だが、私が二人の関係を知ったことを知らなかった。
そんなことは、報告する必要がないからだ。
二人は私に気付かれていないと思い違いをしたまま過ごし、そしてある夜会で、マルロー伯爵令嬢をエスコートしたジャンが、私へ婚約破棄を宣言した。
更にマルロー伯爵令嬢を虐めた罪で、国外追放を言い渡された。
異国に嫁ぐので、法律について勉強していたが、完璧ではなかったので「この国では、公爵家の子息が、国外追放を言い渡すこともあるのだろう」として、随員達を率いて故国へと帰国した。
帰国後、両親に少しだけ注意されたが、
「伯爵の娘を虐めたという罪をでっちあげ、無関係な家の夜会で婚約破棄のみならず、国外追放を言い渡すような非常識な男と、どうやってよい関係を築けと?」
言い返したら、両親も黙った。
「愛人くらい大目に見ろと仰いましたが、常識が無い人間にそれを許すとこうなるようですね」
「済まなかった」
更に謝罪まで。
とにかく私は、してもいない嫉妬に狂い、マルロー伯爵令嬢を虐めたという罪で、国を追放された。
その後の私だが、ジョンの言動に傷付いたと思われるのは嫌だし、なにより傷付いてなどいないし、私の故国では「隣の国の常識なしが、奇行を繰り返し、愛想を尽かした公爵令嬢(私)が帰国した」としか思われていないので、精力的に夜会などに出席した。
ジャンのことについて聞かれはしたが「まだ処理が終わっていないので。全てが終わったらお話しします」と適当に濁した。
どうせ一ヶ月もしないうちに、新しいゴシップが夜会を席巻して、私の国外追放など忘れ去られる。
「さらに、父上は私を廃嫡すると!」
マルロー伯爵令嬢と婚約しようとしたジャンだったが、父親の公爵もだが、国王が激怒してしまった。
それはそうだ。同盟強化のための婚姻を、権限を持たない者が一方的に宣言したのだ。怒らない筈がない。
ジャンの国の国王には娘しかいなかった。
そして我が国にも娘しかいない。更に我が国は跡取り王女一人だけなので、国外に嫁がせるわけにはいかないので、親戚筋の私が、隣国国王の親戚筋の公爵家に嫁入りすることになったのだが……。
「私にはもう関係ないので」
「君と婚約を再度結べたら、きっと!」
”きっと”で動いてるのか……そう言えばジャンが私を断罪した時も”きっと貴様は嫉妬し”だったり”きっと貴様は悪事がバレないと”等々……思い込みで動く人なんだろうな。
婚約者だった頃は、ジャンのそんな性質は知らなかった。いまも知りたくはなかったが。
「何をする!私は公爵家の嫡男だぞ!」
招待客でもないのに、我が国の夜会に忍び込んだジャンは、警備に捕まり会場から連れ出された。
「どうやってたどり着けたのかしら」
ジャンやマルロー伯爵令嬢の行く末に興味はないが、隣国の夜会に草臥れた普段着で乗り込んでこられた理由は気になった。
私のところへやって来た、かつて私を追放した婚約者は、私の顔を見るなりそう言った。
「二度と顔を見せるなと言ったのは貴方だった筈ですが?」
私の元婚約者は、王家の親戚筋の公爵家の嫡男。
「私はあのアンジェリクに騙されていたんだ!」
私は隣国の公爵令嬢で、同盟強化の為にと婚約が結ばれたのだが、ジャンはその婚約を不満に感じていた。
ジャンとは、公爵家の長男で私の元婚約者の名前。
「アンジェリクさんとは、マルロー伯爵令嬢のことですか?」
「そうだ!あいつは!私以外にも、男がいたんだ!」
私は目の前でがなり立てるように話しているジャンの婚約者だったので、交流を深めるためにジャンの国へと渡った。
ジャンは最初から私を目の敵にしていたので、交流を深めるもなにもなかった。
そのうちジャンは、マルロー伯爵令嬢アンジェリクという女性と、深い仲になった……らしい。
一応ジャンはマルロー伯爵令嬢のことを隠していたので。
愛人……本人にとっては、真実の恋人らしい。なにせ婚約破棄を叫んだ現場で、そう言っていたので。とにかく真実の恋人マルロー伯爵令嬢に対して、嫉妬に狂った私が何をしでかすか解らないので、知られないように交際していたそうだ。
ただジャンも私も、互いに監視がついているので、その状況はすぐにバレてしまい、私はジャンとマルロー伯爵令嬢の関係について伝えられた。
私としては政略結婚なので、ジャンが愛人を囲うが興味はないし、故国の両親やジャンの両親に訴えたところで「正室がそんなことで、騒ぐものではない」と言われるのが関の山。
なので、特に何もしなかった。
なにか困ったことが起こっても「そっち」で処理してくれるのだろうと、無視を貫くことにした。
ジャンとマルロー伯爵令嬢だが、私が二人の関係を知ったことを知らなかった。
そんなことは、報告する必要がないからだ。
二人は私に気付かれていないと思い違いをしたまま過ごし、そしてある夜会で、マルロー伯爵令嬢をエスコートしたジャンが、私へ婚約破棄を宣言した。
更にマルロー伯爵令嬢を虐めた罪で、国外追放を言い渡された。
異国に嫁ぐので、法律について勉強していたが、完璧ではなかったので「この国では、公爵家の子息が、国外追放を言い渡すこともあるのだろう」として、随員達を率いて故国へと帰国した。
帰国後、両親に少しだけ注意されたが、
「伯爵の娘を虐めたという罪をでっちあげ、無関係な家の夜会で婚約破棄のみならず、国外追放を言い渡すような非常識な男と、どうやってよい関係を築けと?」
言い返したら、両親も黙った。
「愛人くらい大目に見ろと仰いましたが、常識が無い人間にそれを許すとこうなるようですね」
「済まなかった」
更に謝罪まで。
とにかく私は、してもいない嫉妬に狂い、マルロー伯爵令嬢を虐めたという罪で、国を追放された。
その後の私だが、ジョンの言動に傷付いたと思われるのは嫌だし、なにより傷付いてなどいないし、私の故国では「隣の国の常識なしが、奇行を繰り返し、愛想を尽かした公爵令嬢(私)が帰国した」としか思われていないので、精力的に夜会などに出席した。
ジャンのことについて聞かれはしたが「まだ処理が終わっていないので。全てが終わったらお話しします」と適当に濁した。
どうせ一ヶ月もしないうちに、新しいゴシップが夜会を席巻して、私の国外追放など忘れ去られる。
「さらに、父上は私を廃嫡すると!」
マルロー伯爵令嬢と婚約しようとしたジャンだったが、父親の公爵もだが、国王が激怒してしまった。
それはそうだ。同盟強化のための婚姻を、権限を持たない者が一方的に宣言したのだ。怒らない筈がない。
ジャンの国の国王には娘しかいなかった。
そして我が国にも娘しかいない。更に我が国は跡取り王女一人だけなので、国外に嫁がせるわけにはいかないので、親戚筋の私が、隣国国王の親戚筋の公爵家に嫁入りすることになったのだが……。
「私にはもう関係ないので」
「君と婚約を再度結べたら、きっと!」
”きっと”で動いてるのか……そう言えばジャンが私を断罪した時も”きっと貴様は嫉妬し”だったり”きっと貴様は悪事がバレないと”等々……思い込みで動く人なんだろうな。
婚約者だった頃は、ジャンのそんな性質は知らなかった。いまも知りたくはなかったが。
「何をする!私は公爵家の嫡男だぞ!」
招待客でもないのに、我が国の夜会に忍び込んだジャンは、警備に捕まり会場から連れ出された。
「どうやってたどり着けたのかしら」
ジャンやマルロー伯爵令嬢の行く末に興味はないが、隣国の夜会に草臥れた普段着で乗り込んでこられた理由は気になった。
応援ありがとうございます!
238
お気に入りに追加
806
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる