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1年前に婚約破棄と、冤罪で国外追放を宣言した元婚約者がいきなり現れた
エピローグ
ジャンが夜会にやってきた理由は解ったけれど、絶対に手引きをした人物がいるはず。
「でも、なんで一年もかけたのかしら?」
ジャンは隣国の公爵子息で、私と婚約破棄をして国外追放を言い渡し、その後公爵家で軟禁くらいはされていただろうけれど、それだけ。
国際法に抵触するような犯罪を犯したわけではないので、出国は少しは難しかったかもしれないが、隣国、すなわち私の故国まで来てしまえば、あとは自由に行き来できたはずだ。
たしかに外国人なので、入れない施設などはあるが、それは紹介者が必要というものだけで、ここが生国の者であっても、紹介者がいなければ立ち入れないので、ほとんど変わらない。
「検問があったなら解るけど、それもなかったし」
検問は敷かれていなかった。
なぜ断言できるのかというと、王都に続く道の一つが私の実家の領地なので、検問を敷くときは必ず通達される。
他の道だけ検問していて、うちの領地を抜ける……なんて検問は存在しない。
「検問があったとしても、一年は長すぎよね」
考えれば考える程、
「…………探らないほうが良さそうね」
触らないほうが、長生きできそうな気がしたので、ジャンとその実家については深入りしないことにした。
……のだが、ジャンと再会してから一年たった頃に、報告書が届いた。
「強制労働ね」
かなり厚みのあるもので「これを読むの……」と思ったが、なにか重要なことが書かれているかもしれないので、頑張って全てを読んだ。
初回の報告書に書かれていたのは、マルロー伯爵令嬢アンジェリクについて。
アンジェリクにはジャン以外にも恋人がいた。これについては、私も報告を受けていた。私はアンジェリクにはさほど興味がなかったので、それ以上は知らなかったが、
「頭が悪いというか、なんというか」
アンジェリクは「貴族は政略結婚なので、恋人を持つのがあたりまえ」という暗黙の了解を拡大解釈して「婚約者がいても恋人を作っていい」と思っていたのだそうだ。
「アンジェリク本人は、貴族の暗黙の了解に則っていたつもりだった……」
こんな謎な思考回路の持ち主に近づかなくてて良かった。
近づいていたら、私の気が触れていたかもしれない。
報告書を更に読み進めると、ジャン以外の恋人たちは結婚後もアンジェリクとの関係を続けていくつもりだった。
だが公の場でのジャンの婚約破棄、そして国外追放宣言により、マルロー伯爵家が捕縛され尋問された結果、他の恋人たちのことも明らかになって、三人が婚約破棄で、一人は家が傾くほどの慰謝料を支払ってなんとか婿に迎えてもらった……そうだ。
マルロー伯爵はアンジェリクに婚外恋愛について、正しく教えていなかったことを叱責されたが、これは法律ではないので、特に罰せられることもなく終わった。
公的な刑罰は受けなかったが、付き合っていた恋人たちの実家と彼らの婚約者の実家から攻撃を受けてもの凄い速さで没落していった。
「親もアンジェリクの恋愛を許していたのだから、仕方ないといえば仕方ないのでしょうけれど」
その結果、マルロー伯爵一家は強制労働施設へと送られた。
そこでアンジェリクは一年後にジャンと再会して詰めよって、過失致死により亡くなった。
「貴族令嬢が半年も労働施設で働くなんて、相当大変だろうから……もしかしたら、見た目が随分と変わっていたりしたかも……」
そんなことを思いながら、まだ残り三分の一もある報告書を机に放り投げた。
続きは明日読もう……明日読もう……と思っているうちに月日が流れ、一年が経った。
「お嬢さま。お手紙が」
そして分厚い報告書が届いた。
「え、今年も届いたの?」
ちらりと目を通すと、そこにはジャンの苦難の日々と、婚約破棄されたジャン以外のアンジェリクの恋人たちの悲惨な人生が綴られている。
特に詳しいのは、実家が没落するほどの慰謝料を支払って婿入りした人物。
「もしかして……」
私はジャンになんの興味もなかったが、婚約者のことを愛していた人がいたのだろう。その人が憎さの余り……。
「連絡も取れるけど、きっとそんなことはしていないって言われるわよね」
黙って報告書を受け取っておくことにする。
下手にコンタクトをとって、おかしなことに巻き込まれたらたまったものではないから。
数年後……ちょうどジャンが腕を失った年に、報告書に別の男性の名前が追加された。
誰かと思って調べたところ、ジャンの後釜に座った、公爵と愛人の間の息子だった。家名が同じなので、ジャンの実家に関わり合いがある人だとは思ったけれど、一体何をしたのだろうかと思って読んでみたら、ほぼジャンと同じことをしていた。
「…………」
血は争えないというか、なんというか。これ以上報告書に名前が追加されないよう祈り、そして自分が追加されないよう気を引き締めたいと思う。
「でも、なんで一年もかけたのかしら?」
ジャンは隣国の公爵子息で、私と婚約破棄をして国外追放を言い渡し、その後公爵家で軟禁くらいはされていただろうけれど、それだけ。
国際法に抵触するような犯罪を犯したわけではないので、出国は少しは難しかったかもしれないが、隣国、すなわち私の故国まで来てしまえば、あとは自由に行き来できたはずだ。
たしかに外国人なので、入れない施設などはあるが、それは紹介者が必要というものだけで、ここが生国の者であっても、紹介者がいなければ立ち入れないので、ほとんど変わらない。
「検問があったなら解るけど、それもなかったし」
検問は敷かれていなかった。
なぜ断言できるのかというと、王都に続く道の一つが私の実家の領地なので、検問を敷くときは必ず通達される。
他の道だけ検問していて、うちの領地を抜ける……なんて検問は存在しない。
「検問があったとしても、一年は長すぎよね」
考えれば考える程、
「…………探らないほうが良さそうね」
触らないほうが、長生きできそうな気がしたので、ジャンとその実家については深入りしないことにした。
……のだが、ジャンと再会してから一年たった頃に、報告書が届いた。
「強制労働ね」
かなり厚みのあるもので「これを読むの……」と思ったが、なにか重要なことが書かれているかもしれないので、頑張って全てを読んだ。
初回の報告書に書かれていたのは、マルロー伯爵令嬢アンジェリクについて。
アンジェリクにはジャン以外にも恋人がいた。これについては、私も報告を受けていた。私はアンジェリクにはさほど興味がなかったので、それ以上は知らなかったが、
「頭が悪いというか、なんというか」
アンジェリクは「貴族は政略結婚なので、恋人を持つのがあたりまえ」という暗黙の了解を拡大解釈して「婚約者がいても恋人を作っていい」と思っていたのだそうだ。
「アンジェリク本人は、貴族の暗黙の了解に則っていたつもりだった……」
こんな謎な思考回路の持ち主に近づかなくてて良かった。
近づいていたら、私の気が触れていたかもしれない。
報告書を更に読み進めると、ジャン以外の恋人たちは結婚後もアンジェリクとの関係を続けていくつもりだった。
だが公の場でのジャンの婚約破棄、そして国外追放宣言により、マルロー伯爵家が捕縛され尋問された結果、他の恋人たちのことも明らかになって、三人が婚約破棄で、一人は家が傾くほどの慰謝料を支払ってなんとか婿に迎えてもらった……そうだ。
マルロー伯爵はアンジェリクに婚外恋愛について、正しく教えていなかったことを叱責されたが、これは法律ではないので、特に罰せられることもなく終わった。
公的な刑罰は受けなかったが、付き合っていた恋人たちの実家と彼らの婚約者の実家から攻撃を受けてもの凄い速さで没落していった。
「親もアンジェリクの恋愛を許していたのだから、仕方ないといえば仕方ないのでしょうけれど」
その結果、マルロー伯爵一家は強制労働施設へと送られた。
そこでアンジェリクは一年後にジャンと再会して詰めよって、過失致死により亡くなった。
「貴族令嬢が半年も労働施設で働くなんて、相当大変だろうから……もしかしたら、見た目が随分と変わっていたりしたかも……」
そんなことを思いながら、まだ残り三分の一もある報告書を机に放り投げた。
続きは明日読もう……明日読もう……と思っているうちに月日が流れ、一年が経った。
「お嬢さま。お手紙が」
そして分厚い報告書が届いた。
「え、今年も届いたの?」
ちらりと目を通すと、そこにはジャンの苦難の日々と、婚約破棄されたジャン以外のアンジェリクの恋人たちの悲惨な人生が綴られている。
特に詳しいのは、実家が没落するほどの慰謝料を支払って婿入りした人物。
「もしかして……」
私はジャンになんの興味もなかったが、婚約者のことを愛していた人がいたのだろう。その人が憎さの余り……。
「連絡も取れるけど、きっとそんなことはしていないって言われるわよね」
黙って報告書を受け取っておくことにする。
下手にコンタクトをとって、おかしなことに巻き込まれたらたまったものではないから。
数年後……ちょうどジャンが腕を失った年に、報告書に別の男性の名前が追加された。
誰かと思って調べたところ、ジャンの後釜に座った、公爵と愛人の間の息子だった。家名が同じなので、ジャンの実家に関わり合いがある人だとは思ったけれど、一体何をしたのだろうかと思って読んでみたら、ほぼジャンと同じことをしていた。
「…………」
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