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あなたは私の救い主【連載中】
カチュアとブライアン
カチュアは使用人の大半が去った、寂しい館でこの先について考えていた。
「どうしたら……」
カチュアには兄がいた。
地味で平凡なカチュアとは違い、華やかで賢かった二歳年上の兄。
性格は良くはなく、カチュアのことを見下していた。平凡なカチュアは兄に対してなにも言うことはできなかった。
両親もカチュアより、跡取りで賢い兄のことを優先していた。
カチュアもその状況にすっかりと慣れてしまった。
そんなある日、カチュアの兄が学園で知り合った男爵令嬢に入れあげ、両親になにも告げないどころか、相手にも一切説明せずに婚約を白紙にした。
そんなことができるのか?
カチュアの兄が優秀だったのが禍した。彼はどこにどのような書類を提出すればよいか?あとはどこに賄賂を贈ればいいかなどを理解していた。
「その才能を他のところに使ってほしかった」
薄暗い部屋でカチュアが呟くのも無理はない。
両家が預かり知らぬところで婚約は白紙になり、兄は実家の財産の半分ほどを持ち出し、男爵令嬢と共に駆け落ちして、未だに見つかっていない。
駆け落ち相手の男爵令嬢は、半年ほど前まで平民で、無理矢理男爵家につれて来られており、庶民に戻りたいといつもこぼしていたと、カチュアは全てが終わってから聞いた。
カチュアは兄が男爵令嬢と恋仲になり、婚約者を裏切るなど思ってもいなかった。
兄は賢い男だったので、地位や名誉を捨てて家を出て行くなど、考えもしなかったのだ。
兄が駆け落ちしたあと、カチュアの実家と兄の婚約者の実家とで話し合いがあった。両家だけでは、話はまとまらないだろうと位の高い貴族の当主が立ち会った。
その立ち会いも無駄だった。
両家の父親は両者とも激昂して、殴り合いになりカチュアの父親は殺害された。立ち会い人が居る場での出来事だったので、殺害した兄の婚約者の父はその場で逮捕された。
カチュアの父の死と、カチュアの兄が起こした婚約白紙事件は相殺されて、この一件は終わったことになった。
その後の婚約者の実家がどうなったのか?カチュアには解らない。カチュアにはそんなことを知る余裕がない。
当主が死に、次期当主が駆け落ちしたいま、この家を継げるのはカチュアだけ。
「婿入りはできるけれど、いまの君の家に婿入りはしたくない」
カチュアの婚約はなくなった。
そして母はこの惨状に耐えきれず発狂してしまい、ある日の朝、水が溜まっているだけになった噴水に浮いていた。
「もう……どうしたら……」
人がまばらにしか来なかった母親の葬儀を執り行ったカチュアは、自分の体を抱きしめた。
「大丈夫か、カチュア!」
「ブライアン?」
途方に暮れているカチュアの目の前に現れたのは、兄の幼馴染みのブライアン。
「カチュア、こんなにやつれて」
ソファーに座っていたカチュアの隣に腰を降ろして、カチュアを抱きしめるブライアン。
久しぶりの人のぬくもり、そして優しさに安堵してカチュアは張り詰めていたものが切れて意識を失った。
目を覚ますと、そこは閑散としたカチュアの寝室。
侍女も誰もいない殺風景な部屋で目を覚ましたカチュアは、
「夢……だったの……」
体を起こしてブランケットを握り締めた手に、涙がつぎつぎと降り注ぐ。
「カチュア……どうした?」
しばらくしてカチュアの部屋にブライアンがやってきて、
「夢かと思って!」
「夢なんかじゃない」
再びブライアンがカチュアを抱きしめた。
「来るのが遅くなって済まなかった」
落ち着いたカチュアの隣に座り、カチュアの手を握りながら、ブライアンが遅くなったことを詫びた。
「来てくれただけで」
優秀なブライアンは国費留学をしていたので、カチュアの実家の騒ぎを聞いても、すぐに帰国することができなかった。
「あいつが駆け落ちしたと聞いて、本当はすぐにでも帰国したかったのだが」
するべきことを片付けて急いで帰国したブライアンは、邸で一人ぼっちで震えているカチュアを見て後悔した。
「ありがとう、ブライアン」
カチュアは涙を浮かべたまま、久しぶりに笑った。
そしてブライアンは、そっと昔のようにカチュアの額にキスをした。
「どうしたら……」
カチュアには兄がいた。
地味で平凡なカチュアとは違い、華やかで賢かった二歳年上の兄。
性格は良くはなく、カチュアのことを見下していた。平凡なカチュアは兄に対してなにも言うことはできなかった。
両親もカチュアより、跡取りで賢い兄のことを優先していた。
カチュアもその状況にすっかりと慣れてしまった。
そんなある日、カチュアの兄が学園で知り合った男爵令嬢に入れあげ、両親になにも告げないどころか、相手にも一切説明せずに婚約を白紙にした。
そんなことができるのか?
カチュアの兄が優秀だったのが禍した。彼はどこにどのような書類を提出すればよいか?あとはどこに賄賂を贈ればいいかなどを理解していた。
「その才能を他のところに使ってほしかった」
薄暗い部屋でカチュアが呟くのも無理はない。
両家が預かり知らぬところで婚約は白紙になり、兄は実家の財産の半分ほどを持ち出し、男爵令嬢と共に駆け落ちして、未だに見つかっていない。
駆け落ち相手の男爵令嬢は、半年ほど前まで平民で、無理矢理男爵家につれて来られており、庶民に戻りたいといつもこぼしていたと、カチュアは全てが終わってから聞いた。
カチュアは兄が男爵令嬢と恋仲になり、婚約者を裏切るなど思ってもいなかった。
兄は賢い男だったので、地位や名誉を捨てて家を出て行くなど、考えもしなかったのだ。
兄が駆け落ちしたあと、カチュアの実家と兄の婚約者の実家とで話し合いがあった。両家だけでは、話はまとまらないだろうと位の高い貴族の当主が立ち会った。
その立ち会いも無駄だった。
両家の父親は両者とも激昂して、殴り合いになりカチュアの父親は殺害された。立ち会い人が居る場での出来事だったので、殺害した兄の婚約者の父はその場で逮捕された。
カチュアの父の死と、カチュアの兄が起こした婚約白紙事件は相殺されて、この一件は終わったことになった。
その後の婚約者の実家がどうなったのか?カチュアには解らない。カチュアにはそんなことを知る余裕がない。
当主が死に、次期当主が駆け落ちしたいま、この家を継げるのはカチュアだけ。
「婿入りはできるけれど、いまの君の家に婿入りはしたくない」
カチュアの婚約はなくなった。
そして母はこの惨状に耐えきれず発狂してしまい、ある日の朝、水が溜まっているだけになった噴水に浮いていた。
「もう……どうしたら……」
人がまばらにしか来なかった母親の葬儀を執り行ったカチュアは、自分の体を抱きしめた。
「大丈夫か、カチュア!」
「ブライアン?」
途方に暮れているカチュアの目の前に現れたのは、兄の幼馴染みのブライアン。
「カチュア、こんなにやつれて」
ソファーに座っていたカチュアの隣に腰を降ろして、カチュアを抱きしめるブライアン。
久しぶりの人のぬくもり、そして優しさに安堵してカチュアは張り詰めていたものが切れて意識を失った。
目を覚ますと、そこは閑散としたカチュアの寝室。
侍女も誰もいない殺風景な部屋で目を覚ましたカチュアは、
「夢……だったの……」
体を起こしてブランケットを握り締めた手に、涙がつぎつぎと降り注ぐ。
「カチュア……どうした?」
しばらくしてカチュアの部屋にブライアンがやってきて、
「夢かと思って!」
「夢なんかじゃない」
再びブライアンがカチュアを抱きしめた。
「来るのが遅くなって済まなかった」
落ち着いたカチュアの隣に座り、カチュアの手を握りながら、ブライアンが遅くなったことを詫びた。
「来てくれただけで」
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「あいつが駆け落ちしたと聞いて、本当はすぐにでも帰国したかったのだが」
するべきことを片付けて急いで帰国したブライアンは、邸で一人ぼっちで震えているカチュアを見て後悔した。
「ありがとう、ブライアン」
カチュアは涙を浮かべたまま、久しぶりに笑った。
そしてブライアンは、そっと昔のようにカチュアの額にキスをした。
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