【短編集】婚約破棄【ざまぁ】

彼岸花

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全てを奪った者たちへ【連載中】

前編

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王子の婚約者アメリア。

「お前には相応しい嫁ぎ先だろう!」
「…………」

彼女はたった今、婚約者だった王子に婚約破棄を突きつけられただけではなく、嫁ぎ先まで決められた。

婚約破棄に関してはアメリアも薄々気付いていた。
それは王子のエルノスが、学園で「真実の愛」に目覚め、学園内で真実のお相手リリー男爵令嬢といつも一緒にいるのを知っていたからだ。

ちなみに婚約破棄の理由は、アメリアがそのリリーを虐めたから。もちろんアメリアはリリーを虐めてなどはいないが、王子のエルノスにとっては「アメリアが嫉妬に来るってリリーを虐めた」ということになっている。
そしてこうなったエルノスには何を言っても無駄なことは、十年以上エルノスの婚約者だったアメリアはよく解っている。

エルノスは視野狭窄で、人の話を聞くのが苦手。勉強などは平均よりも出来るのだが、対人が得意ではない。それはエルノスが幼い頃から解っていたので、アメリアはエルノスが苦手な部分を補えるよう教育されてきて、エルノスを支えられると教師陣からは太鼓判を押されていた。

ただ支えることはできるが、エルノスとアメリアの相性が悪かった。

相性なのでどうすることもできず。そのうちエルノスは自分と相性が合うリリーと出会った。
そして婚約破棄。
アメリアも婚約破棄までは予想していが、その後「新たな結婚相手を探してやった。ありがたく思え」などと言われるとは思っておらず、そして嫁ぎ先を言い渡され絶句した。

アメリアの嫁ぎ先は何度も国境を越えてくる蛮族の長だった。

パーティー会場から追い出されたアメリアは、実家に帰ったが、家族とも折り合いが悪く、

「王子が嫁げと命じたのだから、従うべきだ」
「国のために嫁ぎなさい」

両親からも見放され、過酷な旅を続け国境を越えた先の蛮族と呼ばれる、騎馬民族の国に。

「俺に愛されたいなどと思うなよ」
「…………」

蛮族の長に嫁いだアメリアは、既視感を覚えた。この台詞は前の婚約者エルノスに言われた記憶があった。
そして蛮族の長シエトは、エルノス同様に嫁いできたアメリアではなく、別の女性を寵愛していた。
ただ別の女性を寵愛……に関しては、アメリアが後からやってきた立場。なにより彼らの国は王は複数の女性を妻に迎えることができるので、不仲な国にいきなり押し付けられた、シエト好みではないアメリアは、まったく相手にされなかった。

「大変でしょう」

そんなアメリアを助けてくれたのは、シエトの異母姉マージェ。
準備期間もなしに、単身異国に送り込まれたアメリア。少しは異国の風習などを知っていたが、嫁げるほどの知識はなかった。
慣れない生活の違いに苦労しているところを、マージェが手助けしてくれた。

「なぜ手助けしてくださるのですか?」

マージェにどうして助けてくれるのか?と尋ねると、マージェの母親も嫁いだが父親にはあまり愛されず、また産まれてきたのが跡取りにはなれない娘だったので、更に足が遠のき、母親は寂しい最期を迎えた。
その有様を間近で見ていたマージェは、

「母と重なって見えたんだ」

母親孝行できなかったので、それをさせて欲しいと頼まれた。
アメリアはマージェの助けを借りながら、異国での生活基盤を整える。シエトはアメリアのことなど、すっかり忘れていた。

そんなある日、シエトの部下が手柄を上げ、褒美を与えることになり、その部下がアメリアを希望したので、

「精々媚びを売って暮らせよ」

シエトはあっさりとアメリアを下げ渡した。

「媚びを売るのは、どちらかしら」

アメリアはシエトに聞こえないように呟き、下賜先へと向かった。そして故国から持ってきた毒薬を部下の男の酒に忍ばせる。
眠ったように死ねると言われていた毒は、評判通りの仕事をしてくれ、男を静かに葬りさった。

こうして未亡人となったアメリアは、兼ねてより計画していた作戦を実行に移す。それはマージェを王にすること。

すでにマージェとは話がついている。マージェの即位はアメリアが誘ったことだが、マージェも最初から乗り気だった。
ここに居ても、将来がどうなるかは解らない。

「一か八かの勝負に賭けてみよう」
「大丈夫、わたしが必ず勝たせるから」

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