1 / 21
全てを奪った者たちへ【連載中】
前編
しおりを挟む
王子の婚約者だったアメリア。
「お前には相応しい嫁ぎ先だろう!」
「…………」
彼女はたった今、婚約者だった王子に婚約破棄を突きつけられただけではなく、嫁ぎ先まで決められた。
婚約破棄に関してはアメリアも薄々気付いていた。
それは王子のエルノスが、学園で「真実の愛」に目覚め、学園内で真実のお相手リリー男爵令嬢といつも一緒にいるのを知っていたからだ。
ちなみに婚約破棄の理由は、アメリアがそのリリーを虐めたから。もちろんアメリアはリリーを虐めてなどはいないが、王子のエルノスにとっては「アメリアが嫉妬に来るってリリーを虐めた」ということになっている。
そしてこうなったエルノスには何を言っても無駄なことは、十年以上エルノスの婚約者だったアメリアはよく解っている。
エルノスは視野狭窄で、人の話を聞くのが苦手。勉強などは平均よりも出来るのだが、対人が得意ではない。それはエルノスが幼い頃から解っていたので、アメリアはエルノスが苦手な部分を補えるよう教育されてきて、エルノスを支えられると教師陣からは太鼓判を押されていた。
ただ支えることはできるが、エルノスとアメリアの相性が悪かった。
相性なのでどうすることもできず。そのうちエルノスは自分と相性が合うリリーと出会った。
そして婚約破棄。
アメリアも婚約破棄までは予想していが、その後「新たな結婚相手を探してやった。ありがたく思え」などと言われるとは思っておらず、そして嫁ぎ先を言い渡され絶句した。
アメリアの嫁ぎ先は何度も国境を越えてくる蛮族の長だった。
パーティー会場から追い出されたアメリアは、実家に帰ったが、家族とも折り合いが悪く、
「王子が嫁げと命じたのだから、従うべきだ」
「国のために嫁ぎなさい」
両親からも見放され、過酷な旅を続け国境を越えた先の蛮族と呼ばれる、騎馬民族の国に。
「俺に愛されたいなどと思うなよ」
「…………」
蛮族の長に嫁いだアメリアは、既視感を覚えた。この台詞は前の婚約者エルノスに言われた記憶があった。
そして蛮族の長シエトは、エルノス同様に嫁いできたアメリアではなく、別の女性を寵愛していた。
ただ別の女性を寵愛……に関しては、アメリアが後からやってきた立場。なにより彼らの国は王は複数の女性を妻に迎えることができるので、不仲な国にいきなり押し付けられた、シエト好みではないアメリアは、まったく相手にされなかった。
「大変でしょう」
そんなアメリアを助けてくれたのは、シエトの異母姉マージェ。
準備期間もなしに、単身異国に送り込まれたアメリア。少しは異国の風習などを知っていたが、嫁げるほどの知識はなかった。
慣れない生活の違いに苦労しているところを、マージェが手助けしてくれた。
「なぜ手助けしてくださるのですか?」
マージェにどうして助けてくれるのか?と尋ねると、マージェの母親も嫁いだが父親にはあまり愛されず、また産まれてきたのが跡取りにはなれない娘だったので、更に足が遠のき、母親は寂しい最期を迎えた。
その有様を間近で見ていたマージェは、
「母と重なって見えたんだ」
母親孝行できなかったので、それをさせて欲しいと頼まれた。
アメリアはマージェの助けを借りながら、異国での生活基盤を整える。シエトはアメリアのことなど、すっかり忘れていた。
そんなある日、シエトの部下が手柄を上げ、褒美を与えることになり、その部下がアメリアを希望したので、
「精々媚びを売って暮らせよ」
シエトはあっさりとアメリアを下げ渡した。
「媚びを売るのは、どちらかしら」
アメリアはシエトに聞こえないように呟き、下賜先へと向かった。そして故国から持ってきた毒薬を部下の男の酒に忍ばせる。
眠ったように死ねると言われていた毒は、評判通りの仕事をしてくれ、男を静かに葬りさった。
こうして未亡人となったアメリアは、兼ねてより計画していた作戦を実行に移す。それはマージェを王にすること。
すでにマージェとは話がついている。マージェの即位はアメリアが誘ったことだが、マージェも最初から乗り気だった。
ここに居ても、将来がどうなるかは解らない。
「一か八かの勝負に賭けてみよう」
「大丈夫、わたしが必ず勝たせるから」
「お前には相応しい嫁ぎ先だろう!」
「…………」
彼女はたった今、婚約者だった王子に婚約破棄を突きつけられただけではなく、嫁ぎ先まで決められた。
婚約破棄に関してはアメリアも薄々気付いていた。
それは王子のエルノスが、学園で「真実の愛」に目覚め、学園内で真実のお相手リリー男爵令嬢といつも一緒にいるのを知っていたからだ。
ちなみに婚約破棄の理由は、アメリアがそのリリーを虐めたから。もちろんアメリアはリリーを虐めてなどはいないが、王子のエルノスにとっては「アメリアが嫉妬に来るってリリーを虐めた」ということになっている。
そしてこうなったエルノスには何を言っても無駄なことは、十年以上エルノスの婚約者だったアメリアはよく解っている。
エルノスは視野狭窄で、人の話を聞くのが苦手。勉強などは平均よりも出来るのだが、対人が得意ではない。それはエルノスが幼い頃から解っていたので、アメリアはエルノスが苦手な部分を補えるよう教育されてきて、エルノスを支えられると教師陣からは太鼓判を押されていた。
ただ支えることはできるが、エルノスとアメリアの相性が悪かった。
相性なのでどうすることもできず。そのうちエルノスは自分と相性が合うリリーと出会った。
そして婚約破棄。
アメリアも婚約破棄までは予想していが、その後「新たな結婚相手を探してやった。ありがたく思え」などと言われるとは思っておらず、そして嫁ぎ先を言い渡され絶句した。
アメリアの嫁ぎ先は何度も国境を越えてくる蛮族の長だった。
パーティー会場から追い出されたアメリアは、実家に帰ったが、家族とも折り合いが悪く、
「王子が嫁げと命じたのだから、従うべきだ」
「国のために嫁ぎなさい」
両親からも見放され、過酷な旅を続け国境を越えた先の蛮族と呼ばれる、騎馬民族の国に。
「俺に愛されたいなどと思うなよ」
「…………」
蛮族の長に嫁いだアメリアは、既視感を覚えた。この台詞は前の婚約者エルノスに言われた記憶があった。
そして蛮族の長シエトは、エルノス同様に嫁いできたアメリアではなく、別の女性を寵愛していた。
ただ別の女性を寵愛……に関しては、アメリアが後からやってきた立場。なにより彼らの国は王は複数の女性を妻に迎えることができるので、不仲な国にいきなり押し付けられた、シエト好みではないアメリアは、まったく相手にされなかった。
「大変でしょう」
そんなアメリアを助けてくれたのは、シエトの異母姉マージェ。
準備期間もなしに、単身異国に送り込まれたアメリア。少しは異国の風習などを知っていたが、嫁げるほどの知識はなかった。
慣れない生活の違いに苦労しているところを、マージェが手助けしてくれた。
「なぜ手助けしてくださるのですか?」
マージェにどうして助けてくれるのか?と尋ねると、マージェの母親も嫁いだが父親にはあまり愛されず、また産まれてきたのが跡取りにはなれない娘だったので、更に足が遠のき、母親は寂しい最期を迎えた。
その有様を間近で見ていたマージェは、
「母と重なって見えたんだ」
母親孝行できなかったので、それをさせて欲しいと頼まれた。
アメリアはマージェの助けを借りながら、異国での生活基盤を整える。シエトはアメリアのことなど、すっかり忘れていた。
そんなある日、シエトの部下が手柄を上げ、褒美を与えることになり、その部下がアメリアを希望したので、
「精々媚びを売って暮らせよ」
シエトはあっさりとアメリアを下げ渡した。
「媚びを売るのは、どちらかしら」
アメリアはシエトに聞こえないように呟き、下賜先へと向かった。そして故国から持ってきた毒薬を部下の男の酒に忍ばせる。
眠ったように死ねると言われていた毒は、評判通りの仕事をしてくれ、男を静かに葬りさった。
こうして未亡人となったアメリアは、兼ねてより計画していた作戦を実行に移す。それはマージェを王にすること。
すでにマージェとは話がついている。マージェの即位はアメリアが誘ったことだが、マージェも最初から乗り気だった。
ここに居ても、将来がどうなるかは解らない。
「一か八かの勝負に賭けてみよう」
「大丈夫、わたしが必ず勝たせるから」
168
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる