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雄鶏ヴィゾーヴニル
しおりを挟む『聞いたことない?世界樹の頂上には化物が住んでるって』
「化物?…こいつか?確かに化物だな。あんまりそうゆうの読まなかったんだ。だから、そんな話聞いたことないかな」
『ミドガルドに伝わる神話には本当の事も多いっていうのに…教えてあげるわ。世界樹の頂上に座すのはヴィゾーヴニルよ。私が作ったの』
「…ヴィゾーヴニル。ん?なんか最後…耳を疑うような言葉が聞こえた気がするんだけど?」
『その腐った耳でよく聞きなさい。ヴィゾーヴニルは私が作ったのよ』
「…」
『私が作ったのよ』
「聞こえてるっつぅの!何でこんな化物作って偉そうなんだよっ!!」
ギギャーーーッ!
ドゴーーンッ!
大きな鳴き声をあげ、ヴィゾーヴニルの尾が俺たちのいた場所に振り下ろされる。それほどスピードがない一撃だったので、難なく回避できた。
このヴィゾーヴニルという化物…鶏にそっくりだった。いや、どっちかというとコカトリスに似ている。ただ、強いて言うならば…大きさが全然違う。体長は20メートルはありそうなほどで、前に見たコカトリスがヒヨコに思えるほどヴィゾーヴニルは大きかった。
『あんまし速くはないけど、大きいでしょ?やっぱり大きさってのはロマンよね…』
ロキが頬を赤く染め、遠くを見つめるように視線を送る。
「何で、この状況で恍惚そうな顔すんだよっ!この貧乳美少女!!」
『な…なんですって!?ふぬぬぬ…あんた、私のタブーに触れたわよ!?第一、見たこともないくせに何でそんなことが言えんのよっ!』
ドゴーーンッ!
俺たちはヴィゾーヴニルの攻撃を避けながら口喧嘩を始める。ヴィゾーヴニルの攻撃は一撃一撃が重く強力なのだがワンパターンなのだ。尾を振り回すか、足で踏みつけるか、嘴で突くぐらいしか攻撃パターンがない。なので、口喧嘩の方が白熱してしまい…
「傍目でわかるわっ!お前がロザリーとして俺の腕を取った時にはっきりしたんだよっ!」
『キィ~っ!見てもないくせにぃ…私の胸を馬鹿にするくらいなんだから、あんたもさぞかし立派なもの持ってんでしょうね!?出せっ!ここで出せっ!』
ドゴーーンッ!
「出せるか馬鹿野郎っ!この状況で何言ってんだよっ!」
『やっぱり自分のモノに自信がないんじゃないっ!それなのに私の偉大な胸を馬鹿にするなんて100年早いのよっ!そうだ、あんたのあだ名…カスからシャウエッセンにしてあげるわ。アハハ…そのままヴィゾーヴニルにパリッと食べられちゃいなさいよ!パリッと』
ドゴーーンッ!
「何でお前がシャウエッセン知ってんだよっ!?そんなあだ名、嫌に決まってんだろ!いや、それよりお前のその発言、完全に悪役だからな!?てか、お前が作ったならなんとかしろよっ!」
『悪役上等よっ!あんたが嫌がる事すんのが、ここ最近の楽しみよっ!…てか、なんとかできたらもうしてるわよ。こいつ魔法が効かないのよ。守護用で作った最高傑作よっ!』
ドゴーーンッ!
「じゃ、どうすんだよっ!ずっと避け続けるわけにもいかないだろ!?」
『ん~~、何人たりとも殺せない仕様にしたのはマズかったわね…まぁ、そのお陰で今まで隠し通せたんだけれど…あっ!そっか!腕輪になっただけだからイケるかな?まぁ、やらせてみてダメそうならまた考えようかな…』
ドゴーーンッ!
ロキがブツブツ独り言を言い始めた。
『よしっ!決めたっ!おーーい、シャウエッセ~ンっ!』
ロキがこちらにブンブン手を振っていた。
「シャウエッセン言うなよっ!何だよっ!」
『私が足留めするから、あんたは合図したら全力の一撃をヴィゾーヴニルにブチ込みなさいっ!属性は火で!』
ドゴーーンッ!バーーンッ!!
「わかった!」
俺は一旦ロキの後ろに下がり、右手に魔力を込め始めた。
さすがに全力を込めるのは瞬時にできない。毎日練習してるから、段々早くなってはいるが
『あ~ぁ…最高傑作だったのになぁ…[レイニーズランス]』
ヴィゾーヴニルの上空から無数の槍が降ってきた。
ズドドドドド…
数えきれないほどの槍がヴィゾーヴニルに襲い掛かるが、ヴィゾーヴニルに当たる瞬間、すべての槍が軌道を変えてヴィゾーヴニルの足元に刺さっていく。そして、そのダメージを与えられない槍は振り積もっていき、ヴィゾーヴニルを取り囲んでしまった。
『…もう一押しかな…[マナ・グラビティ]』
メキメキメキ…ミシッ!
名前からして重力の魔法なのだろう。ヴィゾーヴニルと取り囲んでいる槍が押し潰され始めた。
ギギャ~ッ!!
『今よっ!』
俺は踏み込み、ロキの前に出る。右手にはもうほぼ全ての魔力を込めてあった。ヴィゾーヴニルに向かっていると魔力を込めていた右手に違和感があった。
ガシュッ!シャコンッ!
「え!?…なんだこれ…」
右手を見ると、右肘まで銀色のガントレットのようなものに包まれ、赤い光を発していた。そのガントレットは腕輪にあった美しい装飾が施され、甲の部分には丸い宝石のようなものが埋め込まれていて、その宝石部分が光を発していたのだ。一瞬外そうかと思ったが、すでにヴィゾーヴニルが眼前まで迫っていたため、俺は外すのを諦め、そのまま跳び、上からガントレットごとヴィゾーヴニルに拳を突きだした。
パシィッ! パシィッ!
ヴィゾーヴニルの対魔法障壁を突き抜けるような感覚がしたので俺は驚いた。
「まだ魔力放出してないぞっ!?」
そう…まだ魔力を纏わせてるだけで、使用していないのだ。トールの時もそうだったが、俺の魔纏は拳をぶつけた瞬間に魔力放出が起こり、その放出が爆発となって威力が出る。なのに今、ヴィゾーヴニルの障壁にぶつかったにも関わらず、まだ 魔力放出が起きていない。
そして俺の拳はヴィゾーヴニル本体に到達する。
「行けぇぇぇっ!!」
ドゴーーンッ!!ボゥッ!!
「あっちっ!熱っ!?」
殴った衝撃で離脱したつもりでいたのだが、思ったよりも距離を取れなかったのと、何故か威力がトールと戦った時の|2倍以上だったので、俺は自分の魔力爆発に巻き込まれてしまったのだ。ほんの少しだけ残っていた魔力を体に纏わせたのでなんとか脱出できた。
『あんたって…最後まで締まらないわね』
(反論できない…)
「それより、ヴィゾーヴニルは!?」
ロキが俺の後ろを指差し…
『消し炭になったわよ。私の最高傑作がねっ!』
「まだ言ってんのかよ…それより」
俺は自分の右手を見ると、ガントレットは腕輪になっていた。
「お前…最後の見たか?俺の右手…」
『見たわよ。今日の事は忘れなさい…それがあんたのためよ。あんたは世界樹の頂上に来てない、剣なんて知らない、ヴィゾーヴニルと戦ってない、この3つは私とあんただけの秘密よ』
「理由は?…リーシュにもダメなのか?」
『殺されるからよ。その腕輪の原形は他の奴等からしたら、喉から手が出るほどほしい代物なのよ。それ以上は話せないわ。リーシュにも今は伏せた方がいいと思うの。あの子、天然なとこあるから。腕輪は外れないから、私が適当に考えとくわ』
(そんなもんが俺の両手に付いてんのかよ)
「もう、わかったとしか言えないな」
『わかってもらえて結構。さて、封印するわ』
(なんか障壁突破できるし、便利そうなんだけど…やっぱり、封印してもらった方がいいか…)
俺は両手首をロキに差し出した。するとロキは俺の両手を握って…
『…闇の魔導ロキの名において…[ルーン・フィクス]』
キーーン…
ロキが呪文を言いきった瞬間、腕輪の周りに知らない文字の羅列が流れる…そして、それは腕輪に吸い込まれていった。
俺はその封印が終わった後、まだブツブツと言っているロキを眺めた。
(黙ってれば可愛いのに…)
「黙ってれば可愛いのに…」
『!?』
ロキがバッと手を離した。その時、俺は気付いた。心の中で思っていた事が口から出てしまっていた事に…
『あ、あんた何言ってんのよっ!』
「…口が滑った」
『わ、私はロキなのよ!?嫌われ者なの!!リーシュならわかるけど…あ、あれね?嫌味ってやつねっ!』
「嫌味じゃねぇよ。黙ってれば可愛いのは事実だろうが。言われた事あるだろ?顔だけならリーシュと同レベルだと思うぞ?」
『あ、あるわけないじゃないっ!城のやつらは私が何かしないか警戒するし、街の人たちは私の顔見ただけで嫌な顔すんのよ?冗談やめてよっ!』
「それがおかしいんだよなぁ…何であんなに嫌われてんだよ?街の人には別に何かした訳でもないんだろ?」
『何もしてないわよっ!私は城のやつらが気に食わないだけで…そいつらが私の悪口でも流してんじゃないの?』
(何かおかしい。確かに口は悪いが、それだけであんなに嫌われるもんなのか?しかも、顔は超が付くほど可愛いのに…)
「ん~、わからんっ!まぁ、お前は可愛いよ」
また口が滑る…(まるで口説いてるみたいじゃないか…)
『やめてったらっ!』
ロキが顔を赤く染める。
「お前…恥ずかしがってんの?」
いたずら心が出た。
『恥ずかしがってなんかないわよっ!何であんたなんかに恥ずかしがらなきゃいけないのよっ!』
「ローちゃん、俺はあんたって名前じゃないぞ?…クスクス…」
段々笑いが込み上げてきた。
(ヤバイ。ローちゃん、イジるの楽しい…)
『ローちゃんって呼ぶな!リーシュだけなんだからっ!ほらっ、帰るわよ!リーシュが心配するでしょ!…[エアウォーク]』
ロキが空を駆け上がり始める。
「あっ、おい!俺はどうすんだよっ!」
『…はぁ…本当に面倒ね。ほらっ!掴まりなさいよ、ユシルっ!』
ロキが手を伸ばしてくる。
「あ、え?…あぁ」
手を握ったが、今度はこっちが赤くなってしまった。
(だって美少女だもの…)
『あんただってはずかしがってんじゃないの。…フフン♪ユシルぅ…あんた可愛いじゃない』
「…うるさい」
そして俺たちはまた空を駆け、リーシュの待つ家へと家路を急ぐのだった。
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