のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ

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暴れなさい・・・3

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 クイーンが苦悩の表情を浮かべる最中、ラクネ、ホーネットは、中型空船と、小型空船に向かっていく。

 大型空船と違い、装甲が薄いのだろう……ラクネの拳に意図も容易く粉砕される。
 粉砕された中型、小型の空船からは砕けた魔石が次々に空に舞い魔力を含んだ欠片が破裂して空を煌びやかに染めていく。

 その状況に焦ったのだろう、突如として、超巨大空船が浮上を開始する。

 超巨大空船の司令室からエリナ・フィル・サザンが声を荒らげていた。

「なんなんだ、なんなんだアイツら! このままじゃ──」

 一瞬、下を向き目を強く瞑る、その後、すぐに覚悟を決めた様に顔をあげる。

「最大魔力を……そう、最大魔力をケストアの奴らに見せつけよ!」

 その言葉に、操舵室にざわめきが起こる。

「姫殿下、最大でありますか? そんな事をすれば、ケストアの国民にも被害が、そうなれば」

「そうなれば? そうなれば、どうだと言うんだ!」

「姫殿下、国民に被害が出たならば、救援を理由に我々はこの場にいるのです」

「だから何よ! このまま攻撃をされ続ければ、本船も危険なんだぞ!」

 親指を噛み締める様に苛立ちを露にするエリナ・フィル・サザンの姿がそこにあった。

 普段自信しかない姿を知る兵士達からすれば、エリナ・フィル・サザンの姿にそれ以上、何も口を出す事は無かった。

「了解しました。魔石に魔力を集中用意ッ!」

 魔石に魔導士達が魔力を注ぎ始める。

「魔力注入完了──」

「姫殿下、魔力注入が完了しました。直ぐにでも、魔導砲の発射が可能になりました」

「──よし、魔導砲発射用意ッ! 標的はケストア首都【イザ】!」

「目標、ケストア首都【イザ】──」

 超巨大空船、正面の装甲板が上下に開き、魔導砲が船内から露になる。

「すべて、この一撃で終わらせよ!」と、エリナ・フィル・サザンの声が響く。

 その瞬間、魔導砲の正面に人影が現れる。  

 人影の正体は勿論、私だ。

「あらあら、素敵な玩具だわ──でも、こんな物は野暮だわ」

 そんな私の言葉は姫様には聞こえていないのだろう、魔力が魔導砲に凄まじい勢いで圧縮されていく。

 私ごと、吹き飛ばすつもりなのだろう──

「本当に無粋だわ、本当は私の玩具にしたかったのだけど、本当に残念だわ」

 魔力が籠った魔導砲をニヤリと笑みを浮かべ、掌に魔力を即座に収縮させ、砲身に向けて軽く撃ち放つ。
 魔導砲内部に圧縮されていた膨大な魔力に圧縮された魔力がぶつけられ、内部で即座に誘爆する。

 魔導砲の砲台が破裂すると、超巨大空船の先端が同時に吹き飛び、木片が舞い上がる。

 一瞬、何が起きたか分からなかったのだろう、エリナ・フィル・サザンは操舵室から即座に飛び出していく。
 向かった先は甲板であった。

同時に甲板に足をつけた私と向き合い座間に視線が重なる。

「貴様は何者か! 名を名乗れ!」

「私はパンドラよ。初めまして、姫様」

「ほう、知っていて、その態度か……ふざけるなよッ!」

 エリナ・フィル・サザンは、即座に腰に手を伸ばし、剣を抜く。

 切っ先を向けるエリナ・フィル・サザンの危機迫った表情に私は可愛さすら感じられた。

「可愛いわね、貴女が死んだら、私の家族にしてあげるわ」

「ふざけた事を抜かすなッ!」

 剣を握りしめて、切り掛る。
 その表情を見て、更にニヤニヤする私に苛立ちの表情を露にする。

「ニヤニヤするなッ!」
「いいわね、本当に貴女は面白いわッ!」

 全力で剣を振るう姫殿下の姿に私は質問を口にする。

「貴女は本気で私に勝つ気なのかしら?」

「当たり前だ! はぁ、はぁ、私はサザル公国の血を引く存在、貴様とは違う、選ばれた存在なのだから!」

 その言葉に私は指を軽くパチンッと鳴らす。
 その瞬間、周囲に初老の男性の声と、複数の若者達の声が響く。

「うむ、あのじゃじゃ馬娘も、やっと役に立ってくれる訳だ。あのバカ娘ならば、魔導砲を発射するだろうからな」

 そんな男性の言葉に笑いながら、女の声が響く。

「御父様も本当に悪い人ですわね。あの子、今回の命令を喜んでいたのに」

 それに対して、数人の若い男がクスクスと笑うのが分かる。

「今回の一件は最初から、父上とあの馬鹿な将軍が考えた事だってのによ」

「違いないな、まぁ、戦争になったとしても、あの馬鹿な妹に全部責任取って貰うしな」

「あはは、違いねぇな」

「まぁ、あんな妹の首一つで、大陸全てが手に入るなら、安いモノだろ」

「そうね、小国なんかは、潰せば済むし、目障りなケストアを潰せば全て上手くいくわね」

 そんな会話が響き渡る。

 悲しみと情けなさからだろうか、剣を構えたエリナ・フィル・サザンの目から、涙が流れる。

「貴女なら分かるはずよ──声の主達が誰なのか」

「えぇ、わかるわよ……」

 声の主達は、サザル公国、サザンの一族であり、エリナ・フィル・サザンの父と兄弟達の声だと理解したのだろう。

 一気に項垂れる姿に、私は哀れみすら感じる。

 エリナ・フィル・サザンは混乱しながらも、再度、剣を構える。

「──私は、私はどんな扱いをされようが、サザル公国のサザン家なのだから!」

 全力で振り下ろす剣、私は静かにエリナ・フィル・サザンの影から刃を伸ばす。

 影から突如、現れた刃が心臓に突き刺さる。

「ガハッ──ゲホ……私は、私は……」

 そう口にするエリナ・フィル・サザンを優しく抱き抱える。

「貴女はよく頑張ってたわ。私は貴女を大切にしてあげるから、安心しなさい」

 私が彼女に親しみを感じていた理由、それは前もって、大陸中の大小関係なく虫を放ち、王族や国の内情を調べていたからだ。

「私も親には恵まれなかったわ、でも、家族に救われてるわ──」

  私の腕の中で涙を流しながら、死を迎えた彼女を私は自身の影に包み込んだ。


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