のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ

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国・・・3

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 キングとセイナに僅かながらの緊張が走る。

 そんな緊張を吹き飛ばすように、二人が身を潜める民家の向かい側にある小さな二階建ての家から、バタンっと、物が倒れる音がする。

 その瞬間、コボルト達が一斉に向かい側の家へと向かい出す。

 キングが直ぐに窓の端から、向かいの家を確認する。
 十匹程のコボルトが民家を取り囲むように集まり、そのうちの二匹が民家の扉を無理矢理開こうと"ガチャガチャ"と、ドアノブを動かしている。

「面倒だな、奴らを倒すのは問題ないが、見張り役のコボルトが別に居るはずだしな」と、キングが小さく呟く。

「見張り役ですか?」

「そうだ、コボルトはそこまで強くないが、俺達ゴブリン同様に知識があるからな」

「なら、見張り役を見つけられれば何とかなりますか?」

「まぁ、見張り役に部下を向かわせて仕留める事は簡単だろうが、コボルトの見張り役は身を隠す事に特化してるからな」

「それは問題ありません、なら直ぐに調べます。スキル"サーチ"」

 セイナは即座にサーチを発動するとキングにその位置を伝える。
 二匹程、村から離れた位置のコボルトをサーチでセイナが発見する。

「村の上にある丘から二匹のコボルトを確認しました。この二匹が見張り役だと思います」

「でかした! ゴブリン召喚ッ!」

 即座にキングが六体の上位ゴブリンを呼び出すと、丘の上に向かうように指示を出す。
 それと同時に向かい側の家に集まったコボルト達が棍棒などで扉を叩き破壊し始める。

 民家の中からは、恐怖に耐え続け、限界を迎えたのであろう、幼い子供の泣き声が響だす。
 それを聞き下卑た笑みをコボルト達が浮かべる。

 その声を聞いたセイナの表情が突如として変化する。

「子供の泣き声を楽しんでるの、あのゴミクズが!」

 キングが異変に気づき慌てて止めようとするも、凄まじい脚力で踏み出したセイナはキングの腕をすり抜け、扉を蹴り破る。

 ──ドガンッ!

 泣き声が響く真夜中の村に響く破壊音にコボルト達がセイナの方に集まり出す。

 そんな光景に頭を悩ませながら、姿を現すキング。

「セイナ、もう少しやり方があるだろう?」

「……キングさん、それは有り得ません。泣いている子供を楽しそうに見る輩を始末するのにやり方は関係ないのですよ。潰します!」

「お前、そんな性格だったのか、はぁ──しゃあねぇな、たく!」

 外に出たセイナは迷うこと無く、数匹のコボルトに向かって駆け出し、両腕に水晶の刃を纏い切り掛る。

 両腕その物を巨大な刃へと変化させたセイナに怯むコボルト。
 凄まじい勢いで次々にコボルト達が切り裂かれていく。

 その様子をその目に刻む様にしっかり見つめる見張り役のコボルト達、セイナの余りに激しい戦いにその場のコボルト皆が視線を向けていた。

 茂みを静かに掻き分けながら、ゴブリン達が近づいていたが、それに気づく者はいなかった。

 ゆっくりと忍び寄るゴブリン達、両者の距離が近づく、ゴブリン側は確実に仕留める為に、逃げ道を無くすように広がっていく。

  突如、風が吹き、草木をザワザワと揺らした一瞬、ゴブリン達が動き出す。

 三体のが槍と盾を装備したゴブリンが3方向から姿を現す。
 盾を前に向け、駆け出すゴブリンの姿に慌てたコボルトは三体のゴブリンを回避するように逃げ出そうとする。

 三体が囲む中に存在する僅かな隙間、しかし、その隙間の向こうから、姿を隠していたゴブリン達が弓を射る。

 一瞬で勝敗は決した。

 そして、見張りの始末に向かったゴブリン達から、雄叫びのような声をあげる。

 見張り役のコボルト達が始末された合図だ。

 全てを把握するセイナとキングも次々に村を襲っていたコボルトを始末していく。

 セイナが残り二匹のコボルトを始末しようとした瞬間、キングがそれを止める。

 片方のコボルトは止めたタイミングが僅かに遅れ、絶滅するも、生き残った一匹は慌てて逃げていく。

「何故止めたのですか!」と力強くキングに声をあげるセイナ。

「早まるな、今から追うぞ!」

「え、なら始末したらよかったんじゃ?」

「鉱山の入口は複数あるんだ、どれが繋がってるかも探すのは苦労するし時間も掛かる」

 走りながら、キングはそう語り、逃げるコボルトを見失わない程度の距離を保ちながら、追跡を続ける。

 コボルトが逃げた先は複数の出入口が存在する鉱山であり、必死に一番上の入口に向かう姿を確認する。

 入口から中に入られると厄介だと言わんばかりに、キングは大きめな石を軽々と握ると逃げるコボルトの頭部目掛けて投げ放つ。

 ソフトボール程の石がキングの怪力で投げつけられたのだ、大砲の弾と変わらない威力をぶつけられたコボルトは生きてはいない。

 二人は鉱山の入口に移動する。

「セイナ、さっきの"サーチ"を発動してくれ、内部がどうなってるか知りたいからな」

「わかったわ」

 サーチが発動され、セイナが内部を説明する。

  入口すぐ側の扉の先には五匹のコボルト、更に先に十匹のコボルトが動いており、他に二人の人間が居るとセイナは語る。

 入口隣の扉は、本来は作業員が夜間休まずに作業をする為の交代制の仮眠室だろう。

 それよりもキングが不思議に感じたのは、二人も人間が居る事実であった。

 コボルトは人質や人攫いはしない。
 理由は、人間を捕食対象としないからだ、そんな場所に二人も人間がいるのだから、怪しくないわけがない。

「セイナ、万が一にも攫われてきた可能性がある、人間は生きたままだ、いいな?」

「分かってますよ」と、言いながら、セイナは入口すぐ側の扉に腕を伸ばす。

 一瞬で無数の棘型の水晶が姿を現すと、扉を貫き、室内にいたコボルト達に突き刺さり、絶命させた。

「行きましょうか。キングさん」 

 セイナは笑いながらそう言う、そこから二人は次々にコボルトを撃破する。

 奥へと進み、人間二人が確認出来た部屋へと辿り着く。

 そこには、初老の男と少女が縛られた状態で乱雑に寝かされていた。

「マジに人攫いかよ?」とキングが呟く。

 セイナは二人の服や身につけている金品を確認すると口を開く。

「この人達、多分王族だと思う」

 セイナが指さした少女の首飾りには、ベルクの王族のマークが刻まれており、それを扱えるのは、王族のみだからだ。

 キングは頭を面倒くさそうに動かす。

「国絡みの人攫いかよ」

 キングとセイナは、私に連絡をして、詳細を伝えて来たわ。

 答えは、助けなさいにしたわ。

 ただ、優しさで助けた訳じゃないわ。
 感謝とかもいらないし、むしろ、私達が人攫いだと疑われたなら、争う口実になるし、見捨てて死なれるのはなんか違う気がする。

 結果的に、王族を救う形になったけど、ベルクを狙っている事に変わりはないのだから。
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