黒猫

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黒猫

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君の中からひだまりのにおいが消えた。


あたたかな布の中で時々小さな声を上げる君の頬に、僕は顔を寄せる。
いつものやわらかな手のひらで僕の毛並みを撫でて、そしてまた君は目を閉じる。

何かが変わった気がしたけれど、何も変わらない気もする。


お腹がいっぱいになった僕は、いつもの窓辺で毛づくろいをしていた。
君は今日も静かだ。


雨だ。

毛が湿るからかったるい。

自分の身体を念入りに舐める。

起き出した君は少しぼんやりしていて、何かをつぶやいて、僕を撫でる。

君の手は少し湿っていて、僕に触れたそこをまた舐めた。



茶色い箱を差し出された僕はそこに入る。

笑いながら君は僕を抱き、その腕で荷物を詰めた。

新しい匂いといつもの君の匂い。

茶色い箱は、次々と増えて、僕の遊び場となった。


うとうと。
がさがさ。
うとうと。
がたごと。

あくびをすると、君は笑った。



ガランとした部屋に僕と君。そしてさえぎるもののないサンサンとした日差し。


「もう、大丈夫だよ」


そっと僕をいつものやさしい手で撫でた。
にゃんと僕は一声鳴く。


ただ君はしあわせそうに目を細めた。
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