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後日譚
後日譚528.元引きこもり王女も注意したい時はある
日が昇る数時間前から侍女とドライアドに見守られながらせっせと草むしりをし続けたレヴィアは、そのままドレスに着替えるのはセシリアが許さなかったので、朝日が昇る少し前の時間に浴室へと向かった。
脱衣所には先客がいた。先程まで体を清めていたようだ。
「おはようございます、レヴィア様、セシリア様」
「おはようなのですわ」
「おはようございます」
「お二人とも外で何をされてたんですか?」
「ストレス発散ですわ」
「その見張りです」
「…………そうなんですね」
ストレスの原因を察してそれ以上聞かなかった女性の名はオクタビア・デ・エンジェリア。十八歳になり、正式にシズトと結婚した女性だ。
まだどこか幼さの残る顔立ちと人族の女性の平均よりも低い身長から実年齢よりも幼く見えるが、女性らしい体つきをしている。
今日もエンジェリアの王城へと赴き、仕事をこなすためかドレスが用意されているがまだそれを着ていなかった。
それに気が付いたセシリアが「お手伝いしましょうか?」と問いかけたが、彼女は首を振った。
「大丈夫です。魔法を使えば一人で着替える事が出来ますから。それよりも、レヴィア様について行ってあげてください」
服をすぐに脱いで一糸纏わぬ姿となったレヴィアが「先に行ってるのですわ」と浴室の方へと向かう。
「レヴィア様、お待ちください! ここで足を滑らせたら誰も庇う人はいないんですよ!」
「パメラじゃないんだから滑らないのですわ!」
文句をブツブツ言いながらも、セシリアの言いつけを守って浴室へとつながる扉の前で立ち止まったレヴィア。
しばらくすると、メイド服を脱いだセシリアが、タオルを体に巻きながらやってきた。
「わざわざタオルを巻く必要はあるのですわ?」
「シズト様がいらっしゃったら目のやり場に困ってしまうじゃないですか」
「使用中になってるから来る事はないと思うのですわ」
話をしながら扉を開けて浴室へと足を踏み入れる二人。魔道具のおかげでいつでも気軽に入浴する事が出来る状態になっている浴室には誰もいなかった。これがドラゴニアの王宮であれば湯浴みの準備や手伝いをするために多くの侍女が待ち構えているのだが、レヴィアは気にした様子もなく歩を進め、ふろ用の椅子に腰かけると自分の体を洗い始める。
セシリアもまた、まずは自分の体を洗うのだった。
湯浴みを済ませ、朝食も全員で食べ終わった後、シズトとモニカを連れて移動するレヴィア。セシリアは侍女として参加するのでメイド服を着用しているが、モニカは今日も前回とは異なるドレスを着ていた。
「とても似合っているのですわ」
「そうでしょうか……」
「綺麗だよ。自信もって!」
シズトから直接褒められたモニカは少しはにかむ。
その様子を見て「私のドレス姿についてはなにもないのですわ」と呟くと、慌てた様子でシズトが「もちろん綺麗だよ!」と褒めた。
「もう少し相手を褒める語彙を増やした方が良いかもしれませんね。今後社交界に付き添うのなら猶更」
「お嫁さん以外はあんまり褒める機会ってなくない? 勘違いとかされても困るし」
「知っているけど使わないのと、知らないから使えないのは全く違います」
「子どもたちと一緒にお勉強するのですわ?」
「…………それもありかも?」
「冗談ですわ。一人で勉強してほしいのですわ」
「でも子どもたちと一緒の時間を過ごせて、尚且つ習った言葉で子どもたちをほめちぎる事ができるんだよ?」
若干親ばかになりつつあるという事を忘れていたレヴィアは、結局自分が発案した事を引っ込めることもできなかったので保留する事にした。
転移陣で世界樹フソーの根元に直接転移したレヴィアたちは、世界樹の周りを囲っている森を歩く時間はないのでショートカット用に設置された転移陣を使い、待機させていた馬車に乗り込むと会場へと向かった。
会場周辺は人目シズトの子どもを見ようと首輪をつけた者たちが沿道に並んでいた。
彼女たちに対してレヴィアとモニカは、子どもたちと一緒に窓越しに手を振り、シズトはそんな四人の様子をニコニコしながら見ている。
「シズト様も手を振っていいんですよ?」
「今日の主役は育生と千与だから」
昨日も一昨日も同じ顔で同じ事を言ったシズトは子どもたちの様子を見ているだけで楽しいようでニコニコしている。ただ、会場についてしまうと表情が曇った。分かりやすい男である。
会場には既に大勢の子どもたちが集まっていた。それを遠くから見守る保護者もいれば、近くで見張るものもいる。
今回のパーティーの主役のため特別扱いされているレヴィアとモニカ以外はあまり褒められた事ではないが、余計な事をしでかしたら即国際問題に発展する状況なので誰も注意していない。
「今日が最終日なのですわ。気を引き締めて取り組むのですわ」
「わ、わかったんだな」
「言葉遣いは気を付けるのですわ。ファマ様の真似はパーティー中は封印なのですわ」
「はい」
育生が素直に返事をしたところで満足したレヴィアは、そっとモニカの方を見た。
彼女もまた、娘に言い聞かせ終わったところの様だった。
準備ができた、という合図を外に控えている従者に送ると、扉が外から開かれる。
レヴィアは育生を連れて、最初に降りる。その後に続いてモニカと千与が降りて、最後にセシリアと共にシズトが降りた。
別行動となるシズトがすごく心配そうな表情で何度も振り返るのをレヴィアたちは後で注意しよう、と思うのだった。
脱衣所には先客がいた。先程まで体を清めていたようだ。
「おはようございます、レヴィア様、セシリア様」
「おはようなのですわ」
「おはようございます」
「お二人とも外で何をされてたんですか?」
「ストレス発散ですわ」
「その見張りです」
「…………そうなんですね」
ストレスの原因を察してそれ以上聞かなかった女性の名はオクタビア・デ・エンジェリア。十八歳になり、正式にシズトと結婚した女性だ。
まだどこか幼さの残る顔立ちと人族の女性の平均よりも低い身長から実年齢よりも幼く見えるが、女性らしい体つきをしている。
今日もエンジェリアの王城へと赴き、仕事をこなすためかドレスが用意されているがまだそれを着ていなかった。
それに気が付いたセシリアが「お手伝いしましょうか?」と問いかけたが、彼女は首を振った。
「大丈夫です。魔法を使えば一人で着替える事が出来ますから。それよりも、レヴィア様について行ってあげてください」
服をすぐに脱いで一糸纏わぬ姿となったレヴィアが「先に行ってるのですわ」と浴室の方へと向かう。
「レヴィア様、お待ちください! ここで足を滑らせたら誰も庇う人はいないんですよ!」
「パメラじゃないんだから滑らないのですわ!」
文句をブツブツ言いながらも、セシリアの言いつけを守って浴室へとつながる扉の前で立ち止まったレヴィア。
しばらくすると、メイド服を脱いだセシリアが、タオルを体に巻きながらやってきた。
「わざわざタオルを巻く必要はあるのですわ?」
「シズト様がいらっしゃったら目のやり場に困ってしまうじゃないですか」
「使用中になってるから来る事はないと思うのですわ」
話をしながら扉を開けて浴室へと足を踏み入れる二人。魔道具のおかげでいつでも気軽に入浴する事が出来る状態になっている浴室には誰もいなかった。これがドラゴニアの王宮であれば湯浴みの準備や手伝いをするために多くの侍女が待ち構えているのだが、レヴィアは気にした様子もなく歩を進め、ふろ用の椅子に腰かけると自分の体を洗い始める。
セシリアもまた、まずは自分の体を洗うのだった。
湯浴みを済ませ、朝食も全員で食べ終わった後、シズトとモニカを連れて移動するレヴィア。セシリアは侍女として参加するのでメイド服を着用しているが、モニカは今日も前回とは異なるドレスを着ていた。
「とても似合っているのですわ」
「そうでしょうか……」
「綺麗だよ。自信もって!」
シズトから直接褒められたモニカは少しはにかむ。
その様子を見て「私のドレス姿についてはなにもないのですわ」と呟くと、慌てた様子でシズトが「もちろん綺麗だよ!」と褒めた。
「もう少し相手を褒める語彙を増やした方が良いかもしれませんね。今後社交界に付き添うのなら猶更」
「お嫁さん以外はあんまり褒める機会ってなくない? 勘違いとかされても困るし」
「知っているけど使わないのと、知らないから使えないのは全く違います」
「子どもたちと一緒にお勉強するのですわ?」
「…………それもありかも?」
「冗談ですわ。一人で勉強してほしいのですわ」
「でも子どもたちと一緒の時間を過ごせて、尚且つ習った言葉で子どもたちをほめちぎる事ができるんだよ?」
若干親ばかになりつつあるという事を忘れていたレヴィアは、結局自分が発案した事を引っ込めることもできなかったので保留する事にした。
転移陣で世界樹フソーの根元に直接転移したレヴィアたちは、世界樹の周りを囲っている森を歩く時間はないのでショートカット用に設置された転移陣を使い、待機させていた馬車に乗り込むと会場へと向かった。
会場周辺は人目シズトの子どもを見ようと首輪をつけた者たちが沿道に並んでいた。
彼女たちに対してレヴィアとモニカは、子どもたちと一緒に窓越しに手を振り、シズトはそんな四人の様子をニコニコしながら見ている。
「シズト様も手を振っていいんですよ?」
「今日の主役は育生と千与だから」
昨日も一昨日も同じ顔で同じ事を言ったシズトは子どもたちの様子を見ているだけで楽しいようでニコニコしている。ただ、会場についてしまうと表情が曇った。分かりやすい男である。
会場には既に大勢の子どもたちが集まっていた。それを遠くから見守る保護者もいれば、近くで見張るものもいる。
今回のパーティーの主役のため特別扱いされているレヴィアとモニカ以外はあまり褒められた事ではないが、余計な事をしでかしたら即国際問題に発展する状況なので誰も注意していない。
「今日が最終日なのですわ。気を引き締めて取り組むのですわ」
「わ、わかったんだな」
「言葉遣いは気を付けるのですわ。ファマ様の真似はパーティー中は封印なのですわ」
「はい」
育生が素直に返事をしたところで満足したレヴィアは、そっとモニカの方を見た。
彼女もまた、娘に言い聞かせ終わったところの様だった。
準備ができた、という合図を外に控えている従者に送ると、扉が外から開かれる。
レヴィアは育生を連れて、最初に降りる。その後に続いてモニカと千与が降りて、最後にセシリアと共にシズトが降りた。
別行動となるシズトがすごく心配そうな表情で何度も振り返るのをレヴィアたちは後で注意しよう、と思うのだった。
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