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第8章 二つの世界樹を世話しながら生きていこう
107.事なかれ主義者は一人で寝たかった
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ガタゴトと揺られながら、ドラゴニア王国第一王女であるレヴィさんと一緒に不毛の大地を進む。向かう先は都市国家ユグドラシル。そこに生えている世界樹ユグドラシルに加護を使う事が目的だ。
やっぱり、エルフが世界樹ファマリー周辺を不法占拠していた事により戦争状態に入っていたようだ。
ただ、僕に知られるとどう反応するか分からないからと、大規模なアンデッド討伐を名目として軍隊を動かしていたらしい。
「戦争状態でしたけど、特にこちらからは攻め込んでないのですわ! ちょっとこっちに入ってこようとするエルフたちを追い払っていただけなのですわ。占拠してたエルフたちも、彼らの意思で国に戻ってもらったのですわ!」
戦争が身近な事じゃなかったから、戦争をしていたと言われても正直あまりピンとこない。
でも、自国の領土を占拠されたらそりゃ何かしらの対応をしなきゃいけない事は分かるし、そのためにたくさんの兵士が動員されたのも理解できる。ただ――。
「誰も死んでないといいんだけど」
「………」
レヴィさんが困った様子で何も言わない。
分かってる。こっちに入って来ないように防衛戦をしたって事は、誰かしら傷ついて、運悪く死んじゃった人も少なからずいるだろう。
正面に座っていたレヴィさんが席を立ち、僕のすぐ隣に腰かけた。柔らかな手の平をそっと僕の太ももに置いて撫でてくる。
「何度でも言いますわ。それは、シズトのせいではないのですわ。確かに、世界樹ファマリーを育てた事によってユグドラシルが動いたのですわ。それでも、シズトに助けを求めるのではなく、攫って利用しようと考えたエルフのせいなのですわ。シズトは神託に従って行動しただけなのですわ。むしろ、神様のお告げを無視したら何が起こるか分からないのですわ! 大災害がドランを襲ったかもしれないですし、飢饉や疫病が発生していたかもしれないのですわ!」
「あ、やっぱり神様ってそういう事するんだ」
「そういう事があった、という文献がほんの少しだけ残っているのですわ。ただ、そういう文献が残せない程の大災害がたくさん起きていたかもしれない、という事も考えられているのですわ」
こわー。神様ってこわー!
あんなちっちゃな見た目してて、なんか幼児の相手をしてる気分になるけど、しっかり対応しないとマジでやばいんじゃね?
「そんな怖がらなくてもいいのですわ。神様も警告はしてくれるのですわ。それを無視したら悲惨な事になるかもしれないですけれど、シズトは無視なんてしないって知ってるのですわ」
レヴィさんの左手が僕の太ももから上に上がってきて、後頭部を優しく撫でる。
恥ずかしい気持ちでいっぱいになって、席を立ち、正面の椅子に座る。
レヴィさんはそんな僕を見て、くすくすと笑っていた。
夕方前には野営の準備をする事になった。
世界樹ファマリーを出たのがお昼ごろだったからあまり進む事ができなかったけど、夜になるとアンデッド系の魔物が活発になるから危ない、との事だった。
レヴィさんに止められ、馬車の中で大人しく待っていると、近衛兵の一人が扉を開けてくれた。
レヴィさんが先に降りて、その後を僕が降りる。
毎回思うけど、これ逆じゃないかなぁ。
レヴィさんはそんな事を思う僕を気にした様子もなく、腕を絡めてくる。
「ちょっと何してんの!?」
「シズトがボケーッてしてるから、私が天幕まで案内してあげるのですわ!」
「一人で歩けるから! 腕離してもらえます!?」
ちょっと胸がムニュッて当たってる気がして、全神経が右腕に集中してる気がする。
そんな僕たちを、周囲の近衛兵は温かい目で見てくる。その視線はほとんどが楽しそうに笑うレヴィさんに向けられていた。
「ここが今日、泊まる天幕なのですわ!」
「でか!」
「さあ、中にさっさと入るのですわ!」
「広っ!」
普段使ってる天幕の何倍あるんですかね!?
机と柔らかそうな大きなベッドが置かれているその天幕の中にはセシリアさんが待っていた。
「……あれ、何でここにセシリアさんがいるの?」
「レヴィア様の侍女ですから当然です」
「……ここって僕が泊まる場所だよね?」
「言ってなかったですわ? 私もいっしょにこの天幕に泊まるのですわ!」
「ベッドの数が明らかに足りないんですけど?」
「十分大きいと思うのですけど……流石に屋敷で使っているサイズのベッドは持ってこれなかったのですわ」
「いや、大きさじゃなくて数がですね?」
「二人で一緒に寝るから一つで問題ないと思うのですわ」
「いや、一緒に寝る事が問題なんですけど!? レヴィさん王女様でしょ? 同じ天幕でも問題だと思うんだけど、同じベッドで寝たらやばくない!?」
「問題ないのですわ! 今更悪評の一つや二つ増えたところで、気にしないのですわー」
「シズト様。警護の面で考えても、お二方が一緒の天幕で過ごしていただく必要があるのです。王女であるレヴィア様だけでなく、世界樹を育てる加護を持つシズト様も命に代えてお守りする必要がございますが、ここは不毛の大地、魔物たちの領域です。魔道具で簡単に倒せるようになったとはいえ、不測の事態が起きないとは言い切れません。そんな時に守るべき方々が別の場所で過ごされていたら、二カ所を同時に守る必要が出てきてしまいます。戦力が分散されてしまっては守り切れない可能性もあります」
「……そっか。それなら、仕方ないよね。でも、ベッドはもう一つあっても問題ないんじゃないの?」
「コレハウッカリ。持ってくるのを忘れてしまいました」
「絶対わざとだよね!?」
セシリアさんがペシッと自分の頭を叩いてとぼけていて、レヴィさんは「それなら仕方ないのですわ~」なんて、言ってるけど口元は笑っていた。
もう二人は放っておいて、ベッドを【加工】で作ればいいや、と思ったけど、マットレスがどうにもならなかった。
アイテムバッグに入れといたはずの布団セットもアイテムバッグにない。
誰かが使ってるのかなぁ。多めに入れておいたはずなんだけど、おかしい……。
「コレハウッカリ。要らないと思って置いてきてしまいました」
アイテムバッグの空間を共有してたのが裏目に出た……帰ったら絶対自分専用のアイテムバッグ作ってやる!
やっぱり、エルフが世界樹ファマリー周辺を不法占拠していた事により戦争状態に入っていたようだ。
ただ、僕に知られるとどう反応するか分からないからと、大規模なアンデッド討伐を名目として軍隊を動かしていたらしい。
「戦争状態でしたけど、特にこちらからは攻め込んでないのですわ! ちょっとこっちに入ってこようとするエルフたちを追い払っていただけなのですわ。占拠してたエルフたちも、彼らの意思で国に戻ってもらったのですわ!」
戦争が身近な事じゃなかったから、戦争をしていたと言われても正直あまりピンとこない。
でも、自国の領土を占拠されたらそりゃ何かしらの対応をしなきゃいけない事は分かるし、そのためにたくさんの兵士が動員されたのも理解できる。ただ――。
「誰も死んでないといいんだけど」
「………」
レヴィさんが困った様子で何も言わない。
分かってる。こっちに入って来ないように防衛戦をしたって事は、誰かしら傷ついて、運悪く死んじゃった人も少なからずいるだろう。
正面に座っていたレヴィさんが席を立ち、僕のすぐ隣に腰かけた。柔らかな手の平をそっと僕の太ももに置いて撫でてくる。
「何度でも言いますわ。それは、シズトのせいではないのですわ。確かに、世界樹ファマリーを育てた事によってユグドラシルが動いたのですわ。それでも、シズトに助けを求めるのではなく、攫って利用しようと考えたエルフのせいなのですわ。シズトは神託に従って行動しただけなのですわ。むしろ、神様のお告げを無視したら何が起こるか分からないのですわ! 大災害がドランを襲ったかもしれないですし、飢饉や疫病が発生していたかもしれないのですわ!」
「あ、やっぱり神様ってそういう事するんだ」
「そういう事があった、という文献がほんの少しだけ残っているのですわ。ただ、そういう文献が残せない程の大災害がたくさん起きていたかもしれない、という事も考えられているのですわ」
こわー。神様ってこわー!
あんなちっちゃな見た目してて、なんか幼児の相手をしてる気分になるけど、しっかり対応しないとマジでやばいんじゃね?
「そんな怖がらなくてもいいのですわ。神様も警告はしてくれるのですわ。それを無視したら悲惨な事になるかもしれないですけれど、シズトは無視なんてしないって知ってるのですわ」
レヴィさんの左手が僕の太ももから上に上がってきて、後頭部を優しく撫でる。
恥ずかしい気持ちでいっぱいになって、席を立ち、正面の椅子に座る。
レヴィさんはそんな僕を見て、くすくすと笑っていた。
夕方前には野営の準備をする事になった。
世界樹ファマリーを出たのがお昼ごろだったからあまり進む事ができなかったけど、夜になるとアンデッド系の魔物が活発になるから危ない、との事だった。
レヴィさんに止められ、馬車の中で大人しく待っていると、近衛兵の一人が扉を開けてくれた。
レヴィさんが先に降りて、その後を僕が降りる。
毎回思うけど、これ逆じゃないかなぁ。
レヴィさんはそんな事を思う僕を気にした様子もなく、腕を絡めてくる。
「ちょっと何してんの!?」
「シズトがボケーッてしてるから、私が天幕まで案内してあげるのですわ!」
「一人で歩けるから! 腕離してもらえます!?」
ちょっと胸がムニュッて当たってる気がして、全神経が右腕に集中してる気がする。
そんな僕たちを、周囲の近衛兵は温かい目で見てくる。その視線はほとんどが楽しそうに笑うレヴィさんに向けられていた。
「ここが今日、泊まる天幕なのですわ!」
「でか!」
「さあ、中にさっさと入るのですわ!」
「広っ!」
普段使ってる天幕の何倍あるんですかね!?
机と柔らかそうな大きなベッドが置かれているその天幕の中にはセシリアさんが待っていた。
「……あれ、何でここにセシリアさんがいるの?」
「レヴィア様の侍女ですから当然です」
「……ここって僕が泊まる場所だよね?」
「言ってなかったですわ? 私もいっしょにこの天幕に泊まるのですわ!」
「ベッドの数が明らかに足りないんですけど?」
「十分大きいと思うのですけど……流石に屋敷で使っているサイズのベッドは持ってこれなかったのですわ」
「いや、大きさじゃなくて数がですね?」
「二人で一緒に寝るから一つで問題ないと思うのですわ」
「いや、一緒に寝る事が問題なんですけど!? レヴィさん王女様でしょ? 同じ天幕でも問題だと思うんだけど、同じベッドで寝たらやばくない!?」
「問題ないのですわ! 今更悪評の一つや二つ増えたところで、気にしないのですわー」
「シズト様。警護の面で考えても、お二方が一緒の天幕で過ごしていただく必要があるのです。王女であるレヴィア様だけでなく、世界樹を育てる加護を持つシズト様も命に代えてお守りする必要がございますが、ここは不毛の大地、魔物たちの領域です。魔道具で簡単に倒せるようになったとはいえ、不測の事態が起きないとは言い切れません。そんな時に守るべき方々が別の場所で過ごされていたら、二カ所を同時に守る必要が出てきてしまいます。戦力が分散されてしまっては守り切れない可能性もあります」
「……そっか。それなら、仕方ないよね。でも、ベッドはもう一つあっても問題ないんじゃないの?」
「コレハウッカリ。持ってくるのを忘れてしまいました」
「絶対わざとだよね!?」
セシリアさんがペシッと自分の頭を叩いてとぼけていて、レヴィさんは「それなら仕方ないのですわ~」なんて、言ってるけど口元は笑っていた。
もう二人は放っておいて、ベッドを【加工】で作ればいいや、と思ったけど、マットレスがどうにもならなかった。
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