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第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう
221.事なかれ主義者は持ち上げられない
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兎人族の村訪問二日目。
土をたくさんプレゼントされたので、堆肥を作る箱をせっせと作って、もらった土を雑草と一緒にとりあえず突っ込んでおいた。
一仕事やり終えた達成感を味わっていると、兎人族たちの長が眉を下げて頬をかきながら苦笑した。
「これじゃあお礼にならないわね。何か私たちにできる事はないかしら?」
「それじゃあ神様の像と、できれば祠を建てる許可が欲しいです。僕に加護を与えてくれた神様たちなんですけど」
「申し訳ないけど、建物を建てる事ができるほど土地は余ってないのよ。それに、せっかく建てても盗賊たちが来たら無事じゃすまないだろうね……。像を置いてってもらうのも構わないけど、家の中の物まで取られちゃうから、どこかに行ってしまう可能性が高いわよ?」
「盗賊ってそんな頻繁に来るものなんですか?」
「そうね……普段はそこまでじゃないんだけど不作続きでどこも厳しくって盗賊になる人が多いみたいだよ。ただでさえ狩猟民族や遊牧民族が収穫時期になると力づくで奪いに来るのに、たまったもんじゃないよ……」
村長さんの耳がしょんぼりと垂れ下がって「このままだと誰かを売らなきゃいけなくなるね」とため息をついた。
盗賊はイレギュラーな事だけど、狩猟民族や遊牧民族たちは毎年の事のようだ。数年前までは村でも力自慢の者たちがたくさんいたからそこまで被害は大きくなかったけど、今は村長さんと数名しか戦える者がいないんだとか。
強さが重要だと事前に聞いていた獣人の国で、女性が村長をしていたのはびっくりしたけど、村長さんは普通に強い人だったみたい。
僕と同じぐらいの背丈の村長さんは、体の至る所に無数の傷跡が見受けられた。てっきり虐げられているもんだと思ったけど、鍛錬の時についた傷がほとんどなんだとか。
「シズト様、像や祠はいかがなさいますか?」
「んー、壊されるのが分かり切ってるならわざわざ祠を建てる必要はないよね。像だけにしようか」
「聞いてなかったのかい? その像も盗まれちまうよ」
「そうだね……村長さん、ちょっと手伝ってもらってもいい?」
「私にできる事であれば手伝うけど、何をすればいいのさ」
きょとんと首を傾げる村長さん。耳も一緒に揺れ動く。
静まれ僕の右腕! 触ったらセクハラだぞ!!
「ジュリウス、像を作るからアダマンタイトだして」
「かしこまりました」
「アダマンタイトって……あのアダマンタイトかい? そんな物だしてどうするのさ」
どうするもこうするもないっすよ。
金色に輝くインゴットに触れ、【加工】を使うと瞬時に液体のようにぐにゃりと揺らいで一塊の球体になった。
一先ず等身大の像を作ってみよう。
背丈はこのくらいで、服はワンピースのような感じで、端正な顔立ちの幼女エント様だ
「ほんとにアダマンタイトかい? そんなぐにょぐにょ自由に形を変えられるわけがないんけどねぇ」
「加工の神プロス様の加護のおかげです」
「ふーん……」
「この像を持ち上げてみてもらえますか?」
「別にいいけど、随分と幼い神様なんだね、プロス様は」
「あ、こちらはエント様です。付与の神様で、加護のおかげで便利な魔道具を作る事ができてるんです」
「そうかい……まあ、いつまでも疑っていても仕方ないし、サクッと持ち上げて終わりにしようかね」
村長さんはエント様の正面に立つと、エント様の腰の部分を持って持ち上げようとした。
だが、プルプルとうさ耳と尻尾……じゃなくて村長の体が震えるだけで持ち上がらない。
しばらく持ち上げようとしていた村長さんは、一度手を離して深呼吸をすると、再度像の腰の部分を両手で持ち、「うおりゃああああああああ!」という掛け声と共にグイッと頭上高く持ち上げた。
しばらくプルプルと持ち上げ続けていた村長さんだったが、ドスンとその場に落とすように置いてため息をついた。
「いやぁ、素材が何にしても、見た目以上の重さだね。何か仕掛けがあるとかそういうオチじゃないんだろう?」
「そうですね、そういう金属なだけです」
それにしても困ったぞ。
恐らく持ち上げたのは身体強化を使ったからだと思うんだけど、それをしたら普通に持ち上がってたし。
何か防犯機能をつけたいところだけど……。
村長さんがドスンと置いた金色の像を、村の子どもたちが興味深そうに触っている。
触ったら電気が流れるとかは止めといた方がよさそうだ。
「まあ、私たちは困らないし、像を置くだけなら好きにすればいいさ。置くならここら辺にしといてくれよ」
そう言うと村長さんは自宅兼宿屋に戻っていった。
それを見送ってから腕を組んで考える。
攻撃的な物は万が一の事故が怖いから却下。
あくまで像自身に発動する魔法の方が好ましい。
魔法を発動させるための魔力は像に触れた物から自動的に奪うタイプにしてしまえば、魔石の値段を気にする必要はないか。
「……さらに重くするか」
それだけだと不安だけど物は試しに、という事でファマ様とプロス様の像を追加で作り、三つの像の足元をアダマンタイトでくっつけて一体化する。それから【付与】で『重量化』の魔法を刻んでおいた。
あとはどういう神様なのかを像の土台に軽く刻んでおしまい。
「盗まれないといいんだけどなぁ」
「盗む事ができるとしたらドラゴンぐらいの力を持つ者や特殊な力を持つ者くらいだと思います」
「大げさすぎない?」
ジュリウスが安心させようとしてくれて冗談を言ってきた。
ジュリウスが冗談を言うなんて珍しい事もあるもんだなぁ。
…………冗談だよね?
土をたくさんプレゼントされたので、堆肥を作る箱をせっせと作って、もらった土を雑草と一緒にとりあえず突っ込んでおいた。
一仕事やり終えた達成感を味わっていると、兎人族たちの長が眉を下げて頬をかきながら苦笑した。
「これじゃあお礼にならないわね。何か私たちにできる事はないかしら?」
「それじゃあ神様の像と、できれば祠を建てる許可が欲しいです。僕に加護を与えてくれた神様たちなんですけど」
「申し訳ないけど、建物を建てる事ができるほど土地は余ってないのよ。それに、せっかく建てても盗賊たちが来たら無事じゃすまないだろうね……。像を置いてってもらうのも構わないけど、家の中の物まで取られちゃうから、どこかに行ってしまう可能性が高いわよ?」
「盗賊ってそんな頻繁に来るものなんですか?」
「そうね……普段はそこまでじゃないんだけど不作続きでどこも厳しくって盗賊になる人が多いみたいだよ。ただでさえ狩猟民族や遊牧民族が収穫時期になると力づくで奪いに来るのに、たまったもんじゃないよ……」
村長さんの耳がしょんぼりと垂れ下がって「このままだと誰かを売らなきゃいけなくなるね」とため息をついた。
盗賊はイレギュラーな事だけど、狩猟民族や遊牧民族たちは毎年の事のようだ。数年前までは村でも力自慢の者たちがたくさんいたからそこまで被害は大きくなかったけど、今は村長さんと数名しか戦える者がいないんだとか。
強さが重要だと事前に聞いていた獣人の国で、女性が村長をしていたのはびっくりしたけど、村長さんは普通に強い人だったみたい。
僕と同じぐらいの背丈の村長さんは、体の至る所に無数の傷跡が見受けられた。てっきり虐げられているもんだと思ったけど、鍛錬の時についた傷がほとんどなんだとか。
「シズト様、像や祠はいかがなさいますか?」
「んー、壊されるのが分かり切ってるならわざわざ祠を建てる必要はないよね。像だけにしようか」
「聞いてなかったのかい? その像も盗まれちまうよ」
「そうだね……村長さん、ちょっと手伝ってもらってもいい?」
「私にできる事であれば手伝うけど、何をすればいいのさ」
きょとんと首を傾げる村長さん。耳も一緒に揺れ動く。
静まれ僕の右腕! 触ったらセクハラだぞ!!
「ジュリウス、像を作るからアダマンタイトだして」
「かしこまりました」
「アダマンタイトって……あのアダマンタイトかい? そんな物だしてどうするのさ」
どうするもこうするもないっすよ。
金色に輝くインゴットに触れ、【加工】を使うと瞬時に液体のようにぐにゃりと揺らいで一塊の球体になった。
一先ず等身大の像を作ってみよう。
背丈はこのくらいで、服はワンピースのような感じで、端正な顔立ちの幼女エント様だ
「ほんとにアダマンタイトかい? そんなぐにょぐにょ自由に形を変えられるわけがないんけどねぇ」
「加工の神プロス様の加護のおかげです」
「ふーん……」
「この像を持ち上げてみてもらえますか?」
「別にいいけど、随分と幼い神様なんだね、プロス様は」
「あ、こちらはエント様です。付与の神様で、加護のおかげで便利な魔道具を作る事ができてるんです」
「そうかい……まあ、いつまでも疑っていても仕方ないし、サクッと持ち上げて終わりにしようかね」
村長さんはエント様の正面に立つと、エント様の腰の部分を持って持ち上げようとした。
だが、プルプルとうさ耳と尻尾……じゃなくて村長の体が震えるだけで持ち上がらない。
しばらく持ち上げようとしていた村長さんは、一度手を離して深呼吸をすると、再度像の腰の部分を両手で持ち、「うおりゃああああああああ!」という掛け声と共にグイッと頭上高く持ち上げた。
しばらくプルプルと持ち上げ続けていた村長さんだったが、ドスンとその場に落とすように置いてため息をついた。
「いやぁ、素材が何にしても、見た目以上の重さだね。何か仕掛けがあるとかそういうオチじゃないんだろう?」
「そうですね、そういう金属なだけです」
それにしても困ったぞ。
恐らく持ち上げたのは身体強化を使ったからだと思うんだけど、それをしたら普通に持ち上がってたし。
何か防犯機能をつけたいところだけど……。
村長さんがドスンと置いた金色の像を、村の子どもたちが興味深そうに触っている。
触ったら電気が流れるとかは止めといた方がよさそうだ。
「まあ、私たちは困らないし、像を置くだけなら好きにすればいいさ。置くならここら辺にしといてくれよ」
そう言うと村長さんは自宅兼宿屋に戻っていった。
それを見送ってから腕を組んで考える。
攻撃的な物は万が一の事故が怖いから却下。
あくまで像自身に発動する魔法の方が好ましい。
魔法を発動させるための魔力は像に触れた物から自動的に奪うタイプにしてしまえば、魔石の値段を気にする必要はないか。
「……さらに重くするか」
それだけだと不安だけど物は試しに、という事でファマ様とプロス様の像を追加で作り、三つの像の足元をアダマンタイトでくっつけて一体化する。それから【付与】で『重量化』の魔法を刻んでおいた。
あとはどういう神様なのかを像の土台に軽く刻んでおしまい。
「盗まれないといいんだけどなぁ」
「盗む事ができるとしたらドラゴンぐらいの力を持つ者や特殊な力を持つ者くらいだと思います」
「大げさすぎない?」
ジュリウスが安心させようとしてくれて冗談を言ってきた。
ジュリウスが冗談を言うなんて珍しい事もあるもんだなぁ。
…………冗談だよね?
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