【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

幕間の物語124.そばかすの少女たちは見られている

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 不毛の大地に聳え立つ世界樹ファマリーの根元を中心に広がり続けているファマリアという町は、その住人のほとんどがシズトという異世界転移者の奴隷だった。
 勇者同様、異世界からやってきたシズトも奴隷に対する扱いが特殊で、その町の奴隷たちは奴隷とは思えないほどの待遇で働いていた。しっかりとした衣食住が保障されているのを考えると、駆け出し冒険者よりもはるかにいい生活をしていると言えるだろう。
 シズトの奴隷の一人である、そばかすがトレードマークの少女ヘレンも、その事を十分すぎるほど理解していた。
 それもそのはず、奴隷たち用に建てられて運営されている研修所で読み書き計算を学ぶと共に、普通の奴隷の生活についても改めて説明をされ、ファマリアでの生活が異常なのだと教えられ続けたからだ。
 だが、ヘレンがその研修所で学ぶのも今日が最後だ。

「ヘレンお姉ちゃん、元気でね!」
「あなたたちも元気でね」

 一緒の部屋で生活していた幼い女の子たちに見送られ、ヘレンは荷物を背負って歩き始めた。
 その隣を歩くのは、ヘレンと同様に同部屋の女の子たちに見送られたリオノーラという少女だった。彼女もまた、シズトの奴隷の中でも研修所で優秀な成績を修めている。

「リオも仕事受ける事にしたんだ?」
「当たり前でしょ。少しでもシズト様のために働きたいもの」

 赤色のおさげを片手で弄りながらリオノーラは当たり前の事のように言う。
 だが、ヘレンも同意見だったから「まあ、そうだよね」と呟く。
 同部屋の幼い子たちの事が気にならないと言えば噓になるが、奴隷の教育係より、もっと直接的に主であるシズトに恩返しをしたいと常々考えていたヘレンだった。だが、残念ながらそこまで手先は器用ではなかった。
 ある程度の事はこなせるが、魔道具作りのテストには受からなかったため、シズトが求め続けている魔道具師見習いになる事は叶わなかった。
 だが、そのテスト以降努力し続けた彼女は、そのおかげで新しい仕事を任されるチャンスを掴み取ったのだ。

「……ここが、集合場所よね?」
「そうだと思うよ」

 ヘレンとリオノーラはファマリアの町とシズトが生活している領域の境目の前で立ち尽くす。
 ここより先は仕事をする者以外は入ってはいけないという事に最近なってしまった。
 勝手に入っても特に罰則はないが、ただひたすらドライアドたちに追いかけられるのだ。
 今も、近くにいたドライアドたちがジーーーッと怪しい様子の二人を窺ってひそひそと話をしている。
 ヘレンとリオノーラはその視線に耐えながら待っているのだが、なかなか待ち人は来ない。現れるのはどこからともなくやってくるドライアドたちだけだ。

「おしごとのじかん?」
「さっきやった!」
「じゃあだれ~?」
「やさいどろぼー?」
「かもしれない!」
「はいってこないね」
「こっちみてるね」
「なんだろうねー」
「ふしんしゃときいて!」
「あつまってきたー!」
「……なんかみたことあるきがする」
「ちゃいろのにんげんさん……けっこーいるしなぁ」
「あかいにんげんさんもけっこーいるよ?」
「かごないね」
「わかんないねー」

 ドライアドたちはヘレンとリオノーラを見つめながら話し続けている。
 ただ、その状況も長続きはしなかった。
 ファマリアの町の方からとんがり帽子を被り、すっぽりと体を覆うローブを着た女性が近づいてきたからだ。
 だらだらと歩きながらやってきたのはユキ。シズトと一緒に行動を共にしている女性の一人だ。
 健康的な褐色の肌に、短く切り揃えられた白い髪の彼女は、黄色の瞳で二人を視界に捉えると、二人に声をかける。

「随分と早いねぇ。他の人たちはまだ来ていないようだけど」
「シズト様をお待たせするわけにはいかないじゃない。当然でしょ?」
「ちょっとリオ! ユキ様にその言葉遣いはよくないって!」
「別にどうでもいいさね。私にどう話しかけようが、私の事をどう思っていようが、ご主人様のために働いている限り、ね。ただ、ご主人様に対してそんな態度を取ったら、分かってるんだろうね?」
「……!」

 ユキに睨まれたリオノーラは息をひそめて固まった。
 緊迫した空気が流れる。が、やっぱりそれも長くは続かない。
 そんな空気を気にした様子もなく、一定の距離を保っていたドライアドたちが何かを確認するかのようにトテテテと近づいてきて、ジッとユキを見ると何かに気が付いた様子で話し始めた。

「このにんげんさんしってるー」
「しりあいっぽいー」
「ぽいぽい!」
「もんだいない?」
「ないない!」
「おひるねもどる~」
「ぽかぽか~」

 リオノーラに向けられていたユキの視線がドライアドたちに移る。
 その様子はいつもの気だるげな様子で、ドライアドたちを目で追っていた。
 リオノーラは流れていた汗を拭うと、呼吸を整える。
 そうしている間にもドライアドたちは思い思いの場所に散っていき、その代わりに奴隷たちが集まってきた。女性が多かったが、一部火傷痕が酷かったり、片腕がない男もいた。
 集まってきた彼らは全員静かにユキの様子を窺っている。
 遠くから鐘の音が鳴ると、ユキが奴隷たちに視線を向けた。

「……全員、集まったようだね。定刻になったからあなたたちの新しい職場に案内するよ。離れずについてくる事さね。じゃないと、ドライアドたちに捕まっちまうからねぇ。もし捕まっても、放っていくから精々気をつける事だね」

 ユキは屋敷に世界樹ファマリーに向けて歩き出す。
 奴隷たちはその後ろをついて歩く。その様子を地面に寝転がりながらドライアドたちが見ていた。
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