【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
399 / 1,443
第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

268.事なかれ主義者は一応聞いてみる事にした

しおりを挟む
 屋敷の外にある転移陣を使って転移をすると、馬車は街の外にいるようだ。
 諸外国、特にニホン連合などに向けたパフォーマンス的にもう一度街に入り直すらしい。
 馬車の周囲は畑が広がっていたが、どの畑も枯れているか、出来が悪いかのどちらかのようだ。
 その様子を車窓から見ていると、ひょこっと一輪の青いバラが視界に割り込んできた。
 ドライアドの青バラちゃんの頭から生えているバラが元気よく咲いている。
 連れてくるつもりはなかったんだけど、世界樹トネリコの世話をしに行くと伝えたら興味を示してついてきちゃったようだ。
 青バラちゃんが心配そうな表情で窓の外の景色を見ていたんだけど、僕を見上げてきた。

「みんな元気ないね、人間さん」
「そうだねぇ。世界樹の影響って結構大きいんだね」
「んー、そうだけどそうじゃないかも?」
「どういう事?」
「世界樹から漏れ出る魔力とかで確かに植物は育ちやすいの。でも、それだけなんだよ? 世界樹がお休みしてても、たくさん収穫できないだけで、普通の植物が枯れちゃうほどの影響はないと思うの」
「ふーん……じゃあ、畑が大惨事なのはまた別の理由があるの?」
「そうだと思う。でも、それが何か分からないの」

 ドライアドが分からなかったらきっと誰も分からないんじゃないかなぁ。
 もう一度窓の外に視線を向けると、畑の世話をしていたエルフとおそらくその奴隷たちが作業を止めて、僕たちの馬車に向けて平伏している様子が見えた。
 遠くの畑に目を向けても、同じような光景ばかりだった。
 さっさと街に入った方がよさそうだ。
 護衛の面々は馬車から既に降りていた。
 僕は馬車の中でこのまま待機なので、座席に腰かけると、ジューンさんでもレヴィさんでもなく、小柄な少女が僕の隣に腰かけ、そのまま僕の方に倒れ込んできた。

「久しぶりのお兄ちゃんだ~。膝枕して!」
「いいよ、って言う前に既にしてるじゃん」
「別にいいでしょ~、減るもんじゃないしー。それにお兄ちゃんなら『いいよ』って言ってくれると思ってたしー」

 まあ、そうだけどさ。
 僕の太ももの上に頭を載せて、すりすりと擦りつけているのはホムンクルスのクー。
 先程まで寝ていたのか、空のように薄い青色の髪は寝癖であちこち跳ねている。
 それを押さえ込むように頭を撫でていると、夕日に染まった空のような橙色の目が気持ちよさそうに細められ……そのまま寝た。

「寝る子は育つって言うけど、ホムンクルスも育つのかなぁ」
「どうなんでしょうねぇ」
「分からないのですわ。ただ、相手の攻撃などに合わせて姿形を自在に変える魔法生物もいたそうですし、その様に作られていれば可能かもしれないですわね」
「……そのように作ってないので育つ事はないっすね」

 僕の正面に座ったレヴィさんとジューンさんは優し気な眼差しをクーに向けていた。
 そのタイミングで、セシリアさんが車内に戻ってきた。一度馬車から下りて護衛としてついて来ていた近衛兵や周囲を警護していたエルフたちと話をしていたんだけど、話が終わったようだ。

「馬車はこのまま世界樹の根元に行くのではなく、街の大通りをぐるっと一周するようです」
「パフォーマンスですね、分かります」
「ご理解いただけてなによりです」
「他にも、トネリコの窮状を見せる意図もあるようですわね」

 首飾りにしていた『加護無しの指輪』を指で弄びつつ、レヴィさんが呟いた。
 そんな事しなくても、ファマ様を広めるためにお世話するんだけどなぁ。
 馬車がゆっくりと動き出す。
 ユグドラシルの特注品であるこの馬車に色々細工したから揺れもほとんどない。
 クーは起きる事なくすやすや眠っているし、青バラちゃんは窓の外をじっと見ている。頭の上に咲いている青いバラが風に吹かれて揺れていた。



 街の中はエルフ以外も大勢いて、『生育』の加護を一目見ようと集まってきているようだ。
 日本人のような見た目の人もそこそこいるのは、ニホン連合が近いからだろう。
 街の中の街路樹や、花壇の花は枯れかけている様子だ。
 ただ、話では世界樹に頼らずに生活していた周辺のエルフの村や里ではそういう事が起きておらず、なんとかそういう所やニホン連合、ガレオール等の他国から食料を買い集めているらしい。
 ただ、今まで世界樹の素材を売る際に結構強気な事をしていたらしく、商人たちには足元を見られているんだとか。
 流れていく景色を見ている間に色々集めてきた情報を説明してくれたセシリアさんが、僕に視線を向けてきた。

「『トネリコに神罰が下っているのではないか』という者もいるそうです」
「ファマ様が神罰~?」
「はい。何かお聞きになってますか?」
「いやー、特に何も聞いてないよ? 強いて言うなら、海鮮系の貢物をたくさんしてほしい、って言われたくらいかなぁ」

 毎日買い出しして捧げるのはちょっと大変だから、ガレオールの奴隷たちに買いに行ってもらおうかな、って検討中だけど。

「エルフたちについては?」
「ジューンさんと婚約する時にも聞いたけど、エルフには興味がないって……そのくらい?」

 僕とエルフの誰かとの間に子どもができても、ファマ様は加護を授けるつもりはないって言ってたけどそのくらいだ。……暗殺されると怖いので、僕が死んだ場合は以前の縁があるから、どうしようもなくなったら加護を与えるかも、と言っていたのは内緒だ。

「だから、今回の事に関してはファマ様は関係ないよ。別の何かがあるんじゃないかなぁ」
「承知しました。では、その旨を後程、皆に共有しておきます」

 ……万が一があるかもしれないから、ちょっとお祈りする時に聞いてみようかな。
 最近、神力を蓄えるために接触を控えているみたいだし、答えてくれえるか分かんないけど。
 そんな事を思いながら、馬車に揺られて目的地まで連れて行かれるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...