【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
1,094 / 1,443
後日譚

後日譚282.箱入り女帝は今できる事に集中した

しおりを挟む
 神聖エンジェリア帝国の首都にある巨大な城の一室で、紺色の髪の上に豪華な冠を載せた少女が玉座に座っていた。冠には大小さまざまな宝石が埋め込まれているが、それに負けず劣らずな椅子に座っている彼女の名はオクタビア・デ・エンジェリア。神聖エンジェリア帝国の女帝であり、シズトの婚約者でもある彼女は、昨日ファマリアで行われたパレードに参加した後は転移陣を使ってすぐさま城へ戻っていた。
 パレードの様子を直接見た者は未だファマリアから戻ってきていないが、手紙は各陣営に送られていたのだろう。
 彼女がこうして謁見の間にある玉座に座っている今も爵位の上下も派閥も関係なくご機嫌伺いに顔を出す貴族が大勢やってくる。中には貴族ではないが、その財力で貧乏貴族よりも影響力を持っている商人も顔を出していた。
 パレードに参加し、シズトの婚約者である事を大勢の者たちに向けてアピールする事が出来たからこのくらいは予想していたが、次にやってきた人物を見て、一瞬オクタビアは目を見開いた。

「他の方々がお見えになる事は想定しておりましたが、貴方様ご自身が直接お越しになるとは……此度はどの様なご用件でしょうか、アルマティ公爵」

 オクタビアの目前で臣下の礼を取っているのはアレハンドロ・デ・アルマティ。エンジェリア帝国の公爵家の当主だ。
 オクタビアとは歳が親子ほど離れているが、外見は若々しく、勇者の血を色濃く受け継いでいる身体的特徴を持っていた。
 黒髪黒目で若く見られがちな顔立ちをしているアルマティ公爵は「ご想像の通りかと思いますよ」と自嘲気味に呟いた。

「今後は手を取り合って帝国の繁栄に向けて歩んでいけたらと思います」
「…………貴方からそう言ってもらえると嬉しいわ。課題は山積みで、他の国々よりも出遅れているから助力をお願いするわ」
「仰せのままに」

 深々と頭を下げた人物を無表情で見下ろしていたオクタビアは、彼が出て行った後、ぽつりと呟いた。

「本心かしら?」
「内心どう思っているかは分かりませんが、公式の場で宣言したという事はそれ相応の覚悟を持ってはいると思いますよ」

 オクタビアの呟きに反応したのは彼女の近くに控えていた専属侍女のセレスティナだ。女帝派に所属し、忙しなく活動していた彼女は最近の公爵派のきな臭い動きも全て把握していた。
 シズトが買い集める事がなくなった事もあり、金属の相場が下がるはずだったが、国内だけで見ると高いままだった。その原因は東側の情勢が安定しない事もあったが、公爵派が買い集めていたからだった。

「剣を取らずに諦めたのは意外ね」
「今回のオクタビア様の扱いを見て、大人しく女帝派に入った方が良いと判断したんでしょうね」
「それならいいんだけど…………なおさら、シズト様に選んでもらえるように努力しなければいけないわね」
「そうですね。しっかりといろいろと学んでいただければと思います。必要であれば仕事は他の者に振りますから、ファマリアで過ごしてもらっても構いません」
「それをするのは公爵派の動きをしばらく見てからにするわ。それよりも、貴族関係の事が落ち着いたのなら国民の方に意識を向けたいのだけれど、状況はどうなっているのかしら? 何か進展は?」
「特にありませんね。どうしても他の種族への差別意識が抜けないようです。交流の機会は意図的に作っているのですが……」
「そう簡単にはいかない、か」
「人族以外の者たちに対する扱いに関して不満を募らせている者も民衆の中にはそこそこの数いるようです。ただ、公爵派が帝位争いをするつもりがないのであれば、神輿となる物が他にほとんどいない状況となるので内乱に発展する可能性も少なくなっています」
「教会の方は?」
「以前変わりなく……邪神がこの世から去った後、多くの者が姿を消したため弱体化の一途を辿っているそうです」
「そう。じゃあ、本当に気を付けるべきは国民だけ、という所なのね」

 どうすればいいのか。それを考えるのはオクタビアの仕事ではない。彼女についている博愛の物を中心とした文官たちが大規模な生徒の見直しなどをしている最中だ。
 今のオクタビアができる事と言えば、重要な人物との謁見くらいだ。あとは変装をして街の散策をして困りごとがないか確認したリ、シズトの所へ戻って関係を強固な物とするくらいだ。
 だが、シズトに関する事はここ数日はできないだろうという事は分かっていた。誕生日を記念した大会の観戦だけではなく、二人目を授かるために積極的な配偶者がいるからだ。家庭内の事はドラゴニア王女であり、シズトの正妻でもあるレヴィアから確認をしていたので間違いないだろう。

「邪魔するわけにもいかない、か……」

 オクタビアは現時点では自分が愛を受け止める立場ではない事を残念に思いながらも自分のすべき事をしなければ、と軽く食事をとった後、再び謁見の間に戻る。
 普段であれば一日に一件あるかないかくらいの謁見希望者は、日が暮れるまで対応しなければいけない程、たくさんやってきていたのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...