【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚414.ドワーフの女王は協力を求める

 酒と鍛冶が何よりも大事でそれ以外はおろそかになりがち――それがドワーフという種族の世間一般的なイメージであり、実際ほとんどのドワーフの男性はそうである。
 だが、王ともなると他の事にも目を向ける必要がある。
 ミスティア大陸唯一のドワーフの国であるルンベルクでは、大昔にはドワーフから見ると変わり者を選定して王の補佐にすればいいんじゃないかという話も出ていたと記録に残されている。
 だが、そういう者が現れなかった時や、血筋をどう受け継いでいくのかが問題になるため、女性が統治者として君臨するようになった。ドワーフの女性は男性と比べると他の事にも目が向くからである。
 そういった経緯で今代の女王として選ばれたリヒトベルガ・ツー・ルンベルクはその小さな体にドレスを纏い、『新年会』にやってきていた。ドレスには小さな宝石が装飾品として使われており、ふんわりと広がっているスカートは魔道具の明かりを受けてキラキラと輝いている。
 夫であり自称『ミスティア大陸一の鍛冶職人』であるフォルマンと一度踊った後は、彼は早々にお酒の方に行ってしまったので一人行動中だった。

「シズト様と改めてお話しする機会はなさそうだし、タカノリ様も今はお忙しい、と。予定通り他国の誰かと話をしたいところだけど……」

 ルンベルクの目下の問題を解決するためにも様々な国に協力してもらう必要がある。
 わざわざ『新年会』で話す必要はないのかもしれないが、国際会議で議題としてあげるほどの事でもないだろうと考えたリヒトベルガはトコトコと歩く。向かった先にいたのはソフィア・ウィズダムとイシス・ド・スペクロア。どちらも女王だが親子ほど歳の差がある。
 ソフィアはまだ即位して数年しか経っていない若き女王だが、既に夫も子どももいる大人の女性である。
 イシスは長きに渡ってスペクロアの玉座に君臨している老婆だ。背筋がまっすぐに伸びていて、動きも機敏なので実年齢より若く見られがちではあるが、リヒトベルガよりも年上だ。
 先程から何か二人で話をしている様だったが、二人ともリヒトベルガを邪険にする事もなく迎え入れた

「何の話をされていたんですか?」
「子育てについてイシス様に相談に乗ってもらっていたんです。……リヒトベルガ様も三人のお子さんがいらっしゃいますね?」
「そうですね。ただ、あまり参考にならないかもしれません。全員男なので……」

 女の子であれば人族の子にも参考になるような事があるかもしれない。だが、ルンベルクの王家では男児が生まれる事が多く、リヒトベルガが産んだ子どもも全員男だった。何の参考にもならないだろう。

「お世継ぎで困る事はなさそうですね。私の子たちと言ったら……と、この場で話すような内容ではないわね。別の話にしましょうか。わざわざ私たちの方に来たという事は何か話したい事があったんでしょう?」
「お気遣いありがとうございます」
「別に、まどろっこしいのが嫌いなだけですよ。それで?」
「国際会議で相談する程の事ではないけれど、ご助力を求めたい事があるんです。隣国の事なのでソフィア様にはもう予想はできているかもしれませんが、人気のないダンジョンについてです。珍しい鉱石や武具が手に入るダンジョンは国が管理していますし、稼ぎやすい所は冒険者がよく探索をしているんですが、それ以外のダンジョンは放置されている事が多いです」
「魔物が氾濫しませんか?」
「ちょくちょく溢れてますよ。ただ、人気がないダンジョンの周りには誰も棲みつかないので被害がそこまで出ていないだけです」
「それでもダンジョンから溢れた魔物がそのままこっちに来る事もあれば、強力な魔物たちから逃げた魔物の影響で縄張りが変わるなどはありますけどね」

 軍は動かしているがルンベルクにはダンジョンが無数にある。ある程度は間引きはしているがそれも限界はあった。それを理解しているし、ダンジョンに入らないと手に入らないような魔物の素材が手に入る事もあるので隣国は必要に応じて迷惑料を求めるだけでそれ以上の事は求めていなかった。

「今までは他国の方が我が国の首都に来てもらうのにも苦労していましたが、今は転移門があります。それを活用して今まで探索されていなかった人気のないダンジョンを探索してもらえないかと考えています」
「……なるほど。大樹海の調査の副産物で転移門で各国の移動も解禁されていますし、軍隊もお互いの国の通行許可さえ出れば通過して良い事になっていますもんね。私たちにとってもダンジョンの研究ができるいい機会、という事ですか」
「そういう事です。私たちでは対応しきれないダンジョンを回ってもらうのでそこで手に入る物は全て回収してもらっても構いません」

 リヒトベルガが答えると真剣な表情でイシスが考え始めた。スペクロアは『学問の国』と呼ばれるくらい研究が盛んな国である。研究対象はあらゆるもので、その中には当然ダンジョンや魔物も含まれている。大樹海の調査を継続する必要はあるのでそこまで多くの人員は避けないが、転移門を使用する条件が理由で他国を警戒する必要性も下がってきているので、今まで防衛に割いていた分も派遣しようと思えばできるはずだ。

「……それはダンジョンコアもでしょうか?」
「はい。そちらの判断でダンジョンコアを回収し、ダンジョンを潰してもらっても構いません」
「ちょっと待ってください。ダンジョンコアも、となるのならウィズダム魔法王国も協力させていただきたいです」
「元からそのつもりでお声がけしましたから大丈夫ですよ。ただ、山奥にあると思われるダンジョンも無数にあるので行って帰ってくるのも大変でしょうし、なにより長年放置されてきたダンジョンなのでどこまで危険度が上がっているか分かりかねますが……」
「そこは自己責任の範疇ですね。我がスペクロアもご協力させていただきます。細かい所は別の場所で話し合うとして……ローナイトなどにも声をかけて見ても構いませんか?」
「はい。大丈夫ですよ」

 騎士道の国ローナイトの武力を借りる事ができるのであればより多くの放置されたダンジョンを潰す事もできるかもしれない。リヒトベルガが断る理由はなかった。
 想定通り事が進み気が緩みそうになるリヒトベルガだったが、今いるのは各国の王侯貴族が参加する『新年会』である。懸念事項が一つ減った程度で隙を晒すわけにはいかない、と気を引き締め、その後も二人の女王と雑談に興じるのだった。
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