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後日譚
後日譚415.事なかれ主義者は復習すべき事がたくさんある
ミスティア大陸で行われた『新年会』が終わった。
スピーチはなんとかする事はできた。ランチェッタさんからは合格点は貰えなかったけど、全校集会とかですら前に立って話す事がなかったんだから仕方ないと思う。
「次も頑張りなさい」
「次はしばらくないといいなぁ」
「何を言ってるのですわ? 明日もするのですわ」
「というか、明日が本番みたいなものよ。今回はシズトに対して頭が上がらない国ばかりだったから各国のトップに近い者たちは何も言ってこなかったし、あからさまな態度は出して来なかったけど、明日は転移門を設置していない所の方が多いのよ?」
「『天気祈願』をしてあげてる国ばかりなんだけど……」
「それがなくなったとしても致命的じゃないでしょ、今のところは」
明日参加するのはシグニール大陸で行われる『新年会』だ。
今まではエルフたちの国で行っていたけれど、今回は各地と繋がる転移門がまとめて設置されているガレオールで行われる。
主催がガレオールだから、よりしっかりとやって欲しいと思っているのかもしれない。
……帰ったらもう一度スピーチの原稿に目を通そう。
そんな事を想いながら馬車に揺られながら世界樹イルミンスールの根元にまで戻った。
馬車から降りるとこの地のドライアドたちの様子を一塊になって見ていたドライアドたちが僕の周りに集まってきた。今回も途中でいつの間にかいなくなって探索に出ていた褐色肌のドライアドたちが増えていたけれど、それ以外の子たちはちゃんとお澄ましで大人しくしててくれた。
「ごほうびほしいなー」
「レモンも~」
「どんなご褒美が貰えるのかなぁ」
「楽しみだねぇ」
「いや、そもそも参加させる予定なんてなかったんだからね? 参加させたこと自体がご褒美だよ」
「「「え~~~」」」
「え~、じゃありません。ほらほら、さっさと帰るよ」
「新年会の様子はどうだった?」
「どうだったって、お前もいただろーが」
「踊りと挨拶に集中してたから周りを見る事なんてできないよ」
聖徳太子じゃないんだから他の人たちが喋っている声をすべて聞き分ける事なんてできないし、なんて事をラオさんに言っても伝わらないので余計な事を言わずにハンバーグを切り分けた。溢れる肉汁と混ざり合うソース。デミグラスソースってどうやって作るのかな、なんて事を考えながら咀嚼しているとお嫁さんたちがそれぞれ話し始めた。
「今まで距離的に話す機会が少なかった国々と交流している事が多かったのですわ。思惑はそれぞれあるみたいですけれど、似た目標の所はまた別日に話をしようってところまで詰めている様でしたわね」
「嫁や婿探しをしている人もいたわね。わたくしの所にもガレオールで相手を探している人がいないか聞かれたわ」
「クレストラ大陸の新年会でもその話出てたよね。私にはそういう話は来なかったのはやはりまだ統治者として評価されてないのかな」
「それは分からないけど、単純にガレオールが他の大陸との中継地点になっているから、っていうだけな気がするわ。レヴィの所にも話は来なかったでしょ?」
「来なかったですわ! 『読心』の加護を授かっているから警戒されていたという可能性もあるのですわ~」
「ディアーヌさんやセシリアさんはどう思った?」
「私たちに聞かれても困るわ。侍女に話しかけるような酔狂な人物はそんないないわよ」
「既に私たちはシズト様の妻ですから、なおさらですね」
「それでも様子は見たり聞いたりしてたんでしょ?」
「まあ、そうだけど……。ランチェッタ様についてたからランチェッタ様と同じような話しかできないわ」
「私もそうですね。レヴィア様が何か粗相をしないか気を張っていたので」
「経験は少ないですけれど、教育はしっかり受けてるから粗相なんてしないのですわ!」
それぞれの国が何を考えて動いているのかはタカノリさんやレヴィさんにまとめてもらって今後の動きを考えればいいか。
各国で結婚の話が進めばこっちに回ってくる話も減ると思うし、なにより僕が何か口を出すような事でもない。
ホムラとユキの口周りに着いたソースを手近に準備されていた布で拭いながらラオさんたちの方に視線を向けて「ラオさんたちは何を話してたの?」と尋ねるとルウさんが最初に口を開いた。
「魔物についての話が多かったわ」
「あとはシズトの事だな」
「ん、同じ。後は紅茶の事」
「パメラは賭け事の話をしたデスよ!」
「お酒の話をしたじゃん」
「向こうの国々はある程度私たちの趣味嗜好を調べ上げているようです、マスター」
「ノエルや私たちには魔道具の話をしてきたわよ、ご主人様」
既に食堂から出て行ったノエルには後で話を聞いてみる事にして、静かに食事をしているジューンさんとモニカに視線を向けたら似たような事を話したとの事で特に付け加える事はないそうだ。
「僕がすぐにでも知っておいた方が良い事とかは特にない?」
「そうですね、特にありません」
「だからぁ、シズトちゃんは明日の事に専念して大丈夫ですよぉ」
「今日の当番は延期になったってノエルには既に伝えてあるのですわ。だからノエルの所に逃げようとしても駄目なのですわ~」
「練習すべき事がたくさんあるんだから諦めなさい」
「…………はい」
スピーチはなんとかする事はできた。ランチェッタさんからは合格点は貰えなかったけど、全校集会とかですら前に立って話す事がなかったんだから仕方ないと思う。
「次も頑張りなさい」
「次はしばらくないといいなぁ」
「何を言ってるのですわ? 明日もするのですわ」
「というか、明日が本番みたいなものよ。今回はシズトに対して頭が上がらない国ばかりだったから各国のトップに近い者たちは何も言ってこなかったし、あからさまな態度は出して来なかったけど、明日は転移門を設置していない所の方が多いのよ?」
「『天気祈願』をしてあげてる国ばかりなんだけど……」
「それがなくなったとしても致命的じゃないでしょ、今のところは」
明日参加するのはシグニール大陸で行われる『新年会』だ。
今まではエルフたちの国で行っていたけれど、今回は各地と繋がる転移門がまとめて設置されているガレオールで行われる。
主催がガレオールだから、よりしっかりとやって欲しいと思っているのかもしれない。
……帰ったらもう一度スピーチの原稿に目を通そう。
そんな事を想いながら馬車に揺られながら世界樹イルミンスールの根元にまで戻った。
馬車から降りるとこの地のドライアドたちの様子を一塊になって見ていたドライアドたちが僕の周りに集まってきた。今回も途中でいつの間にかいなくなって探索に出ていた褐色肌のドライアドたちが増えていたけれど、それ以外の子たちはちゃんとお澄ましで大人しくしててくれた。
「ごほうびほしいなー」
「レモンも~」
「どんなご褒美が貰えるのかなぁ」
「楽しみだねぇ」
「いや、そもそも参加させる予定なんてなかったんだからね? 参加させたこと自体がご褒美だよ」
「「「え~~~」」」
「え~、じゃありません。ほらほら、さっさと帰るよ」
「新年会の様子はどうだった?」
「どうだったって、お前もいただろーが」
「踊りと挨拶に集中してたから周りを見る事なんてできないよ」
聖徳太子じゃないんだから他の人たちが喋っている声をすべて聞き分ける事なんてできないし、なんて事をラオさんに言っても伝わらないので余計な事を言わずにハンバーグを切り分けた。溢れる肉汁と混ざり合うソース。デミグラスソースってどうやって作るのかな、なんて事を考えながら咀嚼しているとお嫁さんたちがそれぞれ話し始めた。
「今まで距離的に話す機会が少なかった国々と交流している事が多かったのですわ。思惑はそれぞれあるみたいですけれど、似た目標の所はまた別日に話をしようってところまで詰めている様でしたわね」
「嫁や婿探しをしている人もいたわね。わたくしの所にもガレオールで相手を探している人がいないか聞かれたわ」
「クレストラ大陸の新年会でもその話出てたよね。私にはそういう話は来なかったのはやはりまだ統治者として評価されてないのかな」
「それは分からないけど、単純にガレオールが他の大陸との中継地点になっているから、っていうだけな気がするわ。レヴィの所にも話は来なかったでしょ?」
「来なかったですわ! 『読心』の加護を授かっているから警戒されていたという可能性もあるのですわ~」
「ディアーヌさんやセシリアさんはどう思った?」
「私たちに聞かれても困るわ。侍女に話しかけるような酔狂な人物はそんないないわよ」
「既に私たちはシズト様の妻ですから、なおさらですね」
「それでも様子は見たり聞いたりしてたんでしょ?」
「まあ、そうだけど……。ランチェッタ様についてたからランチェッタ様と同じような話しかできないわ」
「私もそうですね。レヴィア様が何か粗相をしないか気を張っていたので」
「経験は少ないですけれど、教育はしっかり受けてるから粗相なんてしないのですわ!」
それぞれの国が何を考えて動いているのかはタカノリさんやレヴィさんにまとめてもらって今後の動きを考えればいいか。
各国で結婚の話が進めばこっちに回ってくる話も減ると思うし、なにより僕が何か口を出すような事でもない。
ホムラとユキの口周りに着いたソースを手近に準備されていた布で拭いながらラオさんたちの方に視線を向けて「ラオさんたちは何を話してたの?」と尋ねるとルウさんが最初に口を開いた。
「魔物についての話が多かったわ」
「あとはシズトの事だな」
「ん、同じ。後は紅茶の事」
「パメラは賭け事の話をしたデスよ!」
「お酒の話をしたじゃん」
「向こうの国々はある程度私たちの趣味嗜好を調べ上げているようです、マスター」
「ノエルや私たちには魔道具の話をしてきたわよ、ご主人様」
既に食堂から出て行ったノエルには後で話を聞いてみる事にして、静かに食事をしているジューンさんとモニカに視線を向けたら似たような事を話したとの事で特に付け加える事はないそうだ。
「僕がすぐにでも知っておいた方が良い事とかは特にない?」
「そうですね、特にありません」
「だからぁ、シズトちゃんは明日の事に専念して大丈夫ですよぉ」
「今日の当番は延期になったってノエルには既に伝えてあるのですわ。だからノエルの所に逃げようとしても駄目なのですわ~」
「練習すべき事がたくさんあるんだから諦めなさい」
「…………はい」
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