無敵のツルペタ剣聖

samishii kame

文字の大きさ
11 / 46

第11話 新たな力を得るにはまだフラグが足りない

しおりを挟む
ゴブリンの討伐と、ASとの決闘を終えて、ミランダのナビゲーションに従い一人で要塞都市イオリスを目指して、草原を流れる川沿いを歩いていた。
AS達とは千年戦争では敵対関係にあり共に行動する事は出来ないため、別れて単独行動をとっているのである。

初めて見る川は波に太陽光が反射してキラキラ輝いており、流れる音は涼しく聞こえとてもリラックス出来る。
太陽が少し下がってきているという事は、まもなく夜となり、空には星が光り、月が輝く時間がやってくるのか。
うん、夜空を堪能してから要塞都市へ入ろうかしら。
球体に体を丸めて転がりながら並走しているミランダが、先程行った戦闘について検証を促してきた。

「安杏里、女侍と0種族の男と戦って、自分に足りないものが何であるか分かったか?」
「今の質問の仕方は、『駄目な上司』がやる典型的なパターンですよ。」

「ど、どういう事だ?」
「その上司は部下に『分かりません。』と言わしたいのですよね。もしくは『分かりました。』と返したら『何が分かったのか言ってみろ。』と部下に喋らせて『全然違う。やっぱり分かってないな。』と悪態をついて威張りたいだけでしょ?」

「そんなつもりでは無いのだが……」
「うわぁ、無自覚って最悪だわ。ハズレ上司の思考そのまんまですね。そんなクソ上司はマジで死んでもらえないでしょうか。」

「………」

さて、ミランダの質問についてであるが、頭脳明晰である私は既に戦闘経緯について検証済みだったりする。
ゴブリン戦、AS戦、屑礼戦のいずれにも予測不能な事態が起きてしまった。
私の攻撃スタイルは、高火力による攻撃で敵を粉砕していく。
19種族に次ぐ火力であると言われる1種族が集団魔法をかけてきても敗北する事は無い。
もちろん1種族とは戦った事は無いので実際のところの力関係はどれくらいのものなのか不明であるが、何たって私は自他共に認める美少女だから最強で敗北する事などあり得ないだろう。
遥か格下であるASは、真っ向勝負で私の一閃に刀を合わせてみせた。
私には遠く及ばないにしても可能性というものを感じましたよ。
そして――――――

「0種族の屑礼と戦って実感した事を言いますと、トリッキーなSKILLである『ディレイ』により、私はクソ虫ごときに敗北感を味合わされてしまったのですが、この法則は最強美少女が挫折した後に次の形態へ進み新たな力を得るフラグがたったものと思っています。」
「うむ、なるほど。斜め45度を突いてきたな。新たな力を得るにはまだフラグが足りないんじゃないか。私が言いたいのは、力の弱い種族達は創意工夫をしながら戦ってくる。自分に有利な状況を作り出したり、相手の虚を付く事で戦力差を縮めてくるという事だ。」

「恋愛と一緒で戦いにも駆け引きが重要という事ですね?」
「恋愛と一緒とはどういう事だ?」

「ミランダには無縁な話しでしょうが、恋愛とは気になる相手を振り向かせるためには、押したり引いたりする駆け引きが存在します。付き合ってからでも、惚れるのと、惚れさせるのではパワーバランスが変わってくるのでそのあたりを計算して進めていく事が大事なのです。」
「………」



要塞都市イオリアから5km程度離れた河原の草原に仰向けになり夜空を眺めていた。
月の灯りが川を流れる波を照らし、キラキラと反射をしている。
星が煌めく中、時折流れ星も走っていた。
夜間については『太陽の加護』による無限とも思えるほどの爆発的なエネルギーを生み出す事が出来ないが、それなりの加護を受けていると実感できる。
PASSIVESKILL『不死鳥』も問題なく稼働し続けているようですし、夜間においての戦闘も問題なさそうだ。
それにしてもであるが――――

要塞都市イオリアの上空に浮かんでいる『浮遊都市アトランタ』が鬱陶しく見えて仕方がないな。」

30日後、浮遊都市アトランタで千年戦争の最終ラウンドが開始される。
つまり、私は30日以内に浮遊都市へ昇らなければならないのだ。
夜空を見ながら独り言を呟いていると、どこからともかくミランダが耳元に現れていた。

「安杏里、浮遊都市に上がるには、要塞都市イオリアからエレベーターを使用しなければならないぞ。」
「もちろん認識していますよ。ですが、要塞都市イオリアの周りにいくつも配置されている古代兵器をどうしたものかと思っておりまして………」

浮遊都市に行くには、空を飛び直接入る手段と、要塞都市からエレベーターを使用し昇る2つの方法がある。
その要塞都市の周囲には、外敵を駆逐するために射程3kmある機関砲が複数配置されており、0種族の敵である私はその外敵に該当する。

「私なら機関砲の砲撃を撃ち落とし、古代兵器を破壊して要塞都市に侵入する事は難しくありませんが、その選択は出来るだけ避けたいと思っています。」

正面突破をしようとすると、複数の砲台から時速1200kmの砲撃を連射されてしまうわけだが、その前に全砲台を長距離斬撃による『紫電一閃』で破壊すれば問題はない。
だが要塞都市を守る古代兵器が破壊されると、16種族からの大規模侵攻を受けてしまい、要塞都市に暮らす者達が生命の危険に脅かされてしまうのである。
ミランダも要塞都市を守る機関砲を破壊する行為についは否定的なようであるが、その後にふざけた言葉を口にした。

「現在、直径10km四方に広がっている要塞都市にはと、1000万以上の者が生活をしている。その者達の安全を確保するためには、機関砲は破壊するべきではないだろうな。9種族に要塞都市侵入を助けてもらうよにお願いしてみたらどうだ?」
「そうですね、それが出来るならお願いしたいですね。」

『隠密の加護』を持つ9種族の助けがあれば、要塞都市の周囲に張り巡らせれている結界に気が付かれる事なく侵入する事が可能だろう。
と言いますか、それが出来るのならもうやっていますけど!

「うむ、それではリクエストに応えて9種族の者を呼んでやろう。」
「………」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...