無敵のツルペタ剣聖

samishii kame

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第21話 (屑礼の目線)これって、どういう状況?

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少し時が遡ります。

――――屑礼くずれの目線――――

21の種族を創生したと言われている古代人の手によって造られたと言われている要塞都市イオリスには、地上階から地下2階層の3つの層がある。
不足の事態に備え、1000万人の者が1000年以上生活できることを想定して計画されたという地下1階層は、現在スラム街として俺を含めた貧困層である者が100万人くらい暮らしていた。
地上階層と同様に機械人形達が衛生活動を行ってくれているおかげで、常に新鮮な空気が流れ上下水道も整備されており、快適な生活環境になっている。

俺は、生まれてすぐにその地下1階層のスラム街にある教会の前に捨てられていた。
以後、女教皇の加護を持っている教会の司祭シスターに孤児の1人として育てられ、15歳の時にSKILL『ディレイ』に目覚めてしまった。

――――SKILLディレイ――――
・相手の行動をキャンセルさせる。
・連続して使用すると気絶をする。

スキルに目覚めると種族の加護を受けることが通常であるが、俺に加護が降りてくることはなかった。
スキルを持っていながら、現在進行形で最弱とされている0種族のままってことだ。
なぜ加護を受けることが出来ないかは、自分自身が分かっている。
俺は、その種族のための使命感といったものが無い男なのだ。
命をかけて戦うって、尊敬されることなんだろうけど、ふっ、俺という者は他人から全然尊敬していらないし、偉くなりたいとも思わない自己啓発がない男なのだからな。
ガハハハハ。
そんな俺は、何故かASの義父であり11種族筆頭の天剣豪ステルヴィア様に気に入られており、最弱と言われている0種族でありながらエリート達が集う騎士団学校へ通っていた。
俺みたいな雑魚が11種族の役に立つとは思えないが、せっかくだし地上階層にいる優秀な遺伝子を持っている女子達を有難く堪能させてもらうことにするぜ。
堪能といっても、見るだけしか出来ないのだけどな。

千年戦争が始まった日、天剣豪ステルヴィオ様の命令で、ASと要塞都市の北部にある草原地帯をパトロールに出かけたのであるが、そこで天使のように可愛い少女である安杏里と出会ってしまった。
マジで天使であるのだが、ムチムチのロリ巨乳派の俺としては不満がある。
無駄な脂肪というかもう少しお腹まわりとかも含めて贅肉を蓄えて貰えると嬉しい。
着ている服がパッツンパッツンの体型になってくれたならば、理想系の少女が完成してしまう。
そんな女子に踏みつけられながら、『お兄ちゃんはクソ虫なんですね』と罵倒してくれたらマジで最高だ。
ゴスロリ好きの同志からは邪道であると言われるのだろうが、安杏里にはムチムチになって黒メイドの衣装を着てタップンタップンになってもらえれば、それはもう神になってしまうだろう。

災害級と認定されているゴブリン達を簡単に掃討した19種族の剣聖と敵対関係にある俺とASは、草原地帯で別れ、そして要塞都市イオリアに戻った頃には、太陽が沈みかけて東の空は少し藍色に変わり始めていた。
要塞都市へ戻ってまず初めに19種族に接触したことを武闘派集団デュカリアへ報告したのであるが、騒ぎになる事はなかった。
100体以上のゴブリン達を僅か1分弱で殲滅させた話しをした時には、そこにいた者達は驚愕していたものの、それでも騒ぎにならなかった理由は、11種族筆頭の称号である『天剣豪』のステルヴィオ様から、『今は動くな』という号令がかかっていたためである。
まぁ天剣豪ステルヴィオ様からの号令では、従うしかない。
仮に動いたとしても、一対一の決闘を優先する侍の種族にあのちっこい魔人の前では無力なのだろう。
ちなみに天剣豪ステルヴィオ様は、ASの義父でもあり、現在姿を消していた。





11種族への報告が終わると、安杏里に真っ向勝負を挑んでしまい砕かれたASの利き腕を治すため、『女教皇の加護』を持つ2種族の筆頭で地上世界最高の治癒者である女教皇シスターへ会いに、地下1階層へ降りていた。
地下1階層の20m程度ある天井には、古代技術にて造られたスクリーンに地上階の空の映像がそのまま映し出されており、夜空に星が輝いている。
無計画に隙間なく建っている建物の間にある道路はいびつに走っており、地上階と異なり街を照らす灯りはかなり暗く、夜になると特に治安が悪くなる。
古い石造りの建物が並ぶ舗装されている道路には、まだ夜になったばかりの時間帯という事もあり多く者が外に出ていた。
ASを連れて地下都市の街を歩いていると、顔見知り達がひっきりなしに声をかけてくる。
今も閉店の作業をしていた商店街の親父から、店頭に並んでいた果物を袋に詰め込んで渡されたところだ。

「おっ。屑礼じゃないか。久しぶりだな。そうそう。フォルマルテに会ったらこの果物を渡してくれよ。頼んだぜ。」
「OKだ。渡しておくぜ。」

フォルマルテとは、教会で一緒に育った年齢が7つ上の義兄の事で、イケメンでとにかく出来る男だ。
現在、義兄フォルマルテ黒燐マフィアの構成員になっており、25歳の若さでこの地区を仕切っていた。
その兄貴のおかげで俺もこの界隈では有名人になっていたのだ。
マジで義兄の小判鮫であるポジションの恩恵って計り知れないないものがある。
やめられない、止まらないとはこういう事を言うのだろうな。
早速であるが、ちょうど少し小腹も空いていたし、いただいた果物を有難く頂戴させてもらうぜ。
渡された袋から果物を取り出しガブリとかじりつくと、後ろを歩いていたASが俺の頭を小突いてきた。

「何で勝手に食べているんですか。その果物は、お兄さんのフォルマルテさんに渡すように頼まれたものなので、屑礼先輩が勝手に食べたら駄目じゃないですか。」
「さすが真面目女子だな。どうせフォルマルテには会わないのだから、誰かが処分しないといけないだろ。」

背後を歩くASがギロリと睨んできた。
これは駄目な者を見る目だな。
うん、余裕で平気だぜ。
俺は本当に駄目な男なのだからな。
でも、ASから精神的攻撃や物理的苦痛を与えられてもご馳走にならない。
今度、安杏里に会ったら、駄目な目で俺を見てもらうように頼んでみよう。

雑多な雰囲気がする手入れのされていない歪に四角い建物が隙間なく並ぶ商店街を抜けた向こうに、目的地である教会が見えてきた。
その教会は、密集して建物が並ぶスラム街において、広く敷地がとられており街の雰囲気と一線を画している。
芝生が敷かれた敷地の中央に土の通路が延び、その先に白レンガで三角屋根のエレガントな教会が静かに佇んでいた。
敷地内に、教会とは別にある診療所の建物の灯りが消えている。
女教皇シスターは、教会の敷地内に診療所を建てて治癒活動をしており、要塞都市イオリスにおいて最も尊敬される存在であった。
女教皇は俺の育ての親で、更に2種族筆頭として千年戦争に参加していたが、20種族と同様に中立な立場をとっており、種族間戦争については早々に棄権してしまっていた。
背後を付いてきていたASへ教会の門をくぐりながら声をかけた。

「さすがにこの時間になると、今日の検診は終わっているようだな。よしよし。今からなら待ち時間無しで、すぐに治療してもらえるだろう。俺に付いてきてくれ。」
「ちょっと待って下さい。こんな時間外に女教皇シスター様に治療してもらうのって駄目というか、明日出なおした方がよくないですか?」

「真面目番長かよ。全く問題ない。女教皇シスターは俺の育ての親だし、頼んだら直ぐに診てもらえると思うぜ。それに困っている人からのお願いには断れない性格だしな。」
「うわぁ、最低ですね。先輩って、マジで最低ですよね。」

「すまん。ASから最低と罵倒されても、全く響かないわ。マジで許してくれ。」
「はぁ。そこで謝ってもらわなくても結構です。」

「とにかくだ。女教皇シスターにASを紹介するから、教会に入るぞ。」
「何ですか、その言い方は。紹介するって、私が屑礼先輩の彼女みたいな言い方をしないでもらえないでしょうか。マジで嫌というか、気持ち悪いのですけど。」

俺を見るASの目が、冷ややかと言うか虫けらを見ているような感じがする。
残念だ。これが安杏里ならご褒美なんだけどな。





ASの治療は簡単に終わった。
さすが世界最高の治癒者だ。
完璧な状態に戻ったASは、治療が終わると、女教皇へ丁寧にお礼を言い、夜のうちに地上階へ戻るために教会を出ていった。
俺の方はもう体力の限界だったのだが、どれだけ体を鍛えているんだよ。
まさに体力モンスターだな。
当然俺の方は、教会に部屋で気絶するように寝てしまっていた。

目が覚めると外が騒がしくなっていた。
白いペンキがボロボロにめくれている部屋に天井が視界に入ってくる。
客室用の部屋に置いてあるベッドに仰向けになっていた。
窓から入ってくる太陽光が部屋を明るく照らしており、もう朝飯の時間は過ぎているようだ。
いつもとは違う空気感がする。
外の様子が騒がしいからだ。
近くで事件でもおきたような雰囲気だ。
状況を確認するために、まだ重たい体をベッドが起こし窓から外を見ると、治療のために教会へ歩いてきていた者達が、青空がうつる天井スクリーンを見上げ大きな口を開き唖然としていた。
釣られるようにその視線の先を追いかけていくと、20mほどの高さがある天井スクリーンに映る青空に、7種族と19種族の戦闘が始まる告知が流れていた。
CHARIOT vs SUN
―――――――――READY GO

一気に半分眠っていた脳細胞が活性化し、急速に意識がクリアーになっていく。
要塞都市の周囲には、敵種族を認識し自動砲撃機能がある機関砲が実装されているはずだが、剣聖に破壊され、都市内への侵入を許してしまったのだろうか。
終わった。
剣聖に侵入されてしまっては、俺達に出来ることなど何もない。
その剣聖に、7種族のGM(ギルドマスター)が戦うつもりなのか。
安杏里の幼児体型に騙されやがったな。
お前ごときがマイエンジェルに勝てるわけねぇだろ!

空を見上げながらいろんな感情が激流のように流れていく途中、安杏里の勝利を告げるメッセージが流れてきた。
騒然としていた地下第1層のスラム街全体から、どよめきの声が聞こえてくる。
0種族で同盟関係にある中で、剣聖の相手が出来るとしたら皇帝の加護を持つ4種族だけしかないだろう。
何気なく惰性で空を眺めていると8種族と9種族が戦いを始めるメッセージが流れてきた。
POWER vs HERMIT

全身に電流のようなものが走った。
俺を置き去りにして、世界の覇権を争う千年戦争が開始されているのだという現実を実感した。
剣聖の圧倒的な強さを見ると、俺なんかは蟻みたいな存在であるのは分かっている。
雑魚である俺が世界を変える手伝いなんて出来はしない。
だが、いてもたってもいれなかった。
俺は無意識に教会の窓から外に出て、天井を見ながら地上階へ走り始めていた。
スラム街全体から、うねるような声が聞こえてくる。
とにかく11種族の本拠地へ戻らなければいけないと思っていた。
そして0種族と同盟関係にある8種族が9種族に敗北したメッセージが流れてきた。
剣聖に敗北した7種族は仕方ないにしても、俺達同盟種族が弱すぎであると痛感してしまう。
―――――――人で賑わう商店街を通りかかった時だ。男の怒声、そして子供の鳴き声と、震える声で謝る母親の声が聞こえてきた。
路地の向こうで野次馬らしき人だかりが出来ている。

「おい、お前、俺に何してくれてんや。お前のガキのせいで、怪我してもうたやないか!」
「すいません。子供のした事なので。すいません。」

俺の中にあるちっぽけな正義感が、急いでいた俺の足を止めさせた。
野次馬をかき分け状況を確認すると、鬼宿日マフィアの刻印が刻まれている男が、泣き叫ぶ子供を必死に抱きしめて謝っている母親に怒鳴り散らしている。
地下1階層には治安局という公共機関は存在しない。
ここは俺の義兄が属している黒燐マフィアによって安全が保たれているのだ。
当然であるが、黒燐になりかわりスラム街を支配しようと目論むマフィアが存在し、その一つが鬼宿日である。
黒燐と鬼宿日は比較的良好な関係にあると聞くが、末端の構成員がトラブルを起こすことはよくある話しだ。
野次馬の誰かが、鬼宿日の構成員に叫んだ。

「ここはフォルマルテさんの縄張りだぞ。鬼宿日の者を出ていけよ!」
「おお、そうか。そのフォルマルテとやらを呼んでこい!この俺が話しをつけてやる!」

女子供を標的にするって、なんて野郎だ。
許すことが出来ねぇぜ。
義兄フォルマルテなら、こんな雑魚、すぐにぶっ飛ばしてくれるはず。
そうだ。義兄からするとお前なんて雑魚なんだよ!
―――――――その時、背後から誰かが俺の尻に強烈な蹴りを入れてきた。
不意をつかれたこともあるのだろうが、凄まじい一撃に俺の体が吹っ飛ばされ、野次馬の垣根を突き破っていく。
何が起きたのか、俺がどうなっているのか、状況が理解できていなかった。

気が付くと、俺は鬼宿日マフィアの男にタックルをしていたのだ。
俺の方は条件反射的に身を守っていたが、親子を怒鳴り散らしていた鬼宿日の男の方は完全に不意をつかれ、俺のタックルをまともに受けてしまっていた。
地面に仰向けとなり白目をむいている。
俺がやってしまったのか。
もしかして、俺ってヒーロになっちゃった。
いやそうじゃなくて、俺を蹴り飛ばした奴は誰なんだよ。
地面に四つん這いになり、地面に視線を落としながら状況を整理していると、真上から何者かが声をかけてきた。

「君はフォルマルテの弟の屑礼だな。鬼宿日うちの若い衆を気絶させた慰謝料は高くつくぞ。」

目の前には真っ白な靴と真っ白なズボンの裾が見える。
嫌な感覚がし、背筋が寒くなっていく。
四つん這いの姿から恐る恐る声をかけてきた男を見上げると、そこに全身を真っ白なスーツで覆った背の高い紳士姿の男が俺を見下ろしていた。
笑顔ではあるが、その瞳は笑っていない。
この男のことは知っている。
鬼宿日マフィアのボスだ。
威圧感というより、底知れない気持ち悪さを感じる。
先ほどまで俺の見る限りでは鬼宿日のボスの姿は見当たらなかったはず。
一体、どこから現れたんだ!
気が付くと、野次馬達の姿は無くなっており、騒がしかった商店街は静まりかえっていた。
もしかして、俺一人だけ置いてきぼりですか?

心臓の鼓動が速くなり、全身の毛穴が開いていく。
ヤバいぞ。
俺も逃げなくては。
俺は四つん這いの姿をキープしながら、出来るだけ自然な姿で息を潜め後退を始めた。
たぶん俺は逃げられない。
だが、鬼宿日のボスは何も仕掛けてくる様子がない。
絶対絶命のこの俺は一体どうなってしまうんだ。
余計なことを考えても仕方がない。今は集中して、逃げることだけを考えよう。

四つん這いの姿をキープしながら、鬼宿日のボスの足元から10m程度何事もなく後退に成功すると、そこでようやく顔をあげ、ゆっくりと立ち上がった。
鬼宿日のボスは気持ち悪い笑顔を浮かべながら、俺を見ている。
心臓の鼓動は速いままだ。
何を考えていやがるんだ。
―――――――その時、俺の尻を何者かが、『後退するな』みたいな感じで棒のような物で小突いてきた。
全然気が付かなかったが、背後に誰かがいたようだ。
ゆっくりと振り返えると、そこには安杏里が俺の尻を剣の鞘で小突いていた。
正面に鬼宿日マフィアのボスがいて、背後にはロリ天使の安杏里がいる。
これは、一体、どういう状況なのでしょうか?
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