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第16話 『SYUPPO』『FUU』
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既に気温は50度を軽く超えている。
太陽の陽射しが強く、砂漠からめらめらと昇ってくる陽炎が景色を歪めていた。
現在、端をかすめて移動している砂漠の中心部は、日中になると100度近くになり、その地下には異界に繋がる迷宮がある。
帝国の筆頭貴族である三条家からの依頼により、帝国最南端に位置する辺境都市に出現しているという機械兵を討伐するため、3人の女騎士達と共に砂漠の端をショートカットしていた。
私が乗っている馬型の機械人形の隣を、全身を黒マントにつつんだ姿をしている死霊王が、砂塵の上を滑るように並走している。
15話の最下層で鍛冶職人をしていたあいつだ。
あれからストーキング行為を続けてきているのであるが、私を含めて誰かに危害を加えてくる様子はない。
災害級を超える骸骨であるが、人畜無害のつまらない奴だ。
その死霊王が、今更ながらに不思議そうな声で抱えていた疑問を聞いてきた。
「三華月様が乗っているその馬型の機械人形ですが、その個体は人族の遥か上位種であると推察します。何故、三華月様に上位個体が従っているのでしょうか。」
古代人が築いたという帝都の衛星管理を行っている機械人形達が、意思を持っているか定かではない。
だが、私がまたがっている機械人形には明確な意思があり、死霊王から指摘されたとおり人族よりも遥かに上位な存在である。
その質問の答えについては全く興味がないことなので、知ろうとしたこともない。
「機械人形が私に従っている理由ですか。」
「はい。後学のために教えて下さい。」
「知りません。」
「えっ。知らないのですか?」
「そんな理由。どうでもよくないですか。」
「まぁ、そうですよね。」
ストーカーは異常なほどの執着心があり、徐々にその対象へ対する支配欲の歯止めが利かなくなるというが、死霊王からはその兆候は見られない。
鬼可愛い聖女から放置対象の扱いをされて、至福の喜びでも感じているのかしら。
そんなことを考えても仕方ないか。
現在、目の前では『女騎士vs黒色ワーム』の戦闘が行われていた。
通常、魔物は迷宮内にしか出現しない。
太陽や月の加護がある世界では生きることが出来ないからだ。
地上であるにもかかわらず、魔物が出現する帝国領最大のこの砂漠については、この砂漠そのものが迷宮なような存在であると考えられていた。
3人の帝国女騎士が戦闘している黒色ワームは将来的にはA級相当にまで進化するレア種であるが、現状ではB級相当の個体だ。
黒色ワームが地の利を活かして戦闘を有利に進めており、その様子を見ていた死霊王が女騎士達に加勢した方がよいのではないかと意見をしてきた。
「三華月様。女騎士の皆さんが苦戦をしていますが、助けなくてもいいのでしょうか。」
「彼女達からは手出し無用と言われています。なので、このまま静観するつもりです。」
女騎士が敗北し死亡してしまうと、同族殺しをしたものと見なされ、信仰心に影響がでる。
見殺しにすることは出来ないが、なぜ助けないかと言えば、女騎士達が黒色ワームを退ける事に成功するからだ。
大楯を持つ女騎士が黒色ワームの攻撃を遮断し、後方の女騎士が弓で仕留めようとしているものの、砂塵が邪魔して上手く機能していない。
戦況は不利に見えるが、実際には貫通効果系のスキルを獲得している3人の中で最も線の細い体格をした女騎士が、着実にダメージを蓄積させている。
少しずつではあるが、戦況が好転していた。
そして黒色ワームは撤退を開始した。
死霊王も、3人の戦いぶりに感心をしている。
「帝国の騎士は少数精鋭と聞いておりましたが、なかなかやるものですね。」
女騎士達であるが、勝利したものの少なからず怪我を負っており、特に楯役の女騎士のダメージが大きいようだ。
その様子を見ていた聖女が私の横を走り抜けていく。
帝国第5位の聖女藍倫だ。
15歳の女子で、私より頭一つぶん背が低く、若干ふくよかな体型をしている。
髪を後ろで三つ編みにし、美人ではないが笑顔が可愛い。
高位の聖女が着る純白のローブには、大きな十字架のデザインが施されている。
「皆様、お怪我はありませんか。治癒回復をして差し上げますので、どうぞこちらへ来て下さい。」
三条家が依頼して、私の世話係りとして手配してきた聖女であり、A級相当の回復系スキルを自在に使いこなす鬼才である。
私の見立てでは、教会の未来を担っている逸材中の逸材だ。
藍倫が女軽騎士達を回復している姿を見た死霊王が深く感心していた。
「聖女とは傷ついた者を癒す者。まさに藍倫様こそが本物の聖女様な感じですね。」
回復するスキルを使用する者こそが、本物の聖女だと言っているように聞こえるが、裏を返せば、私が偽物の聖女とも受け取れる。
遠まわしに私をディスっているのかしら。
◇
砂漠をショートカットし、帝国を出て5日後の夕方に目的地である辺境都市に到着した。
雲一つない空は藍色に変わり始め、日没を迎えようとしている。
熱い風が吹き、空に浮かぶ満月が、街を明るく照らしていた。
商店が立ち並ぶ大通りには多くの人が行き交い、活気ある声が聞こえてくる。
飲食店から酒のにおいが漏れてきており、宵の口を迎えていた。
この帝国南部に位置する辺境都市は元々小さな村であったが、10年前に帝国の傘下に入ると、他国から侵攻を受ける心配が無くなり、隣国から人が流入し現在進行形で急激に発展をしていた。
私が三条家から受けた依頼は2つある。
一つが機械兵の討伐だ。
辺境の都市の東に広がる森には、防御力の高いB級に相当する機械兵が出没していたものの、人に危害を加えるような被害が出ていないこともありこれまでは放置されていた。
ここ数日前から、その機械兵が森を出てくるようになり、近いうちに被害が出るものという占いが出たため、女騎士とともにやってきたのだ。
辺境都市に到着すると兵舎へ向かった女軽騎士達とは別れて、藍倫に連れられて繁華街の中心にある大きな建物の酒場に入っていた。
白い天井が高く大きなプロペラファンがゆっくり回り、お客さんの賑わっている店内の空気を循環させている。
20席あるテーブルが埋まっており、空いていたカウンター席に誘導された。
派手な十字架が刻まれている聖衣を着ている聖女がホール内を歩くと、いつものように視線が集中する。
ちゃかす声が聞えるが、それ以上の事を仕掛けてくる者がいない。
この都市の治安が良いものとよく分かる。
15歳である藍倫は、慣れた様子でカウンター席に座ると、よく通る声でお酒を注文した。
「親父。一番キツイ酒をくれ。」
帝国ではお酒は二十歳からとされているが、守られていないのが現実だ。
とはいうものの、聖女がそれをしては駄目だろう。
藍倫からの注文を聞いて驚く様子のないマスターが、続けて私へ注文を聞いてきたので、藍倫が頼んだお酒をキャンセルしておいた。
「お酒は二十歳からと帝国では定められているはずです。今しがた、こちらの聖女が頼んだお酒についてはキャンセル願います。適当なジュースでもだして下さい。」
「チッ!」
隣の席に座っている藍倫から、気持ちもいい舌打ちが聞こえてくる。
視線を送ると片肘をカウンターに付き、目をピクピクさせていた。
ぽっちゃり体型をしているし、堕落した生活を送っているのだろう。
その藍倫が隠し持っていた煙草を口にくわえると、年季の入った刑事のように渋い表情をしながら『SYUPPO』っと、火をつけた。
「藍倫。煙草も二十歳からですよ。」
私の声が聞こえていないのか、『FUU』と口から煙を気持ちよさそうに吐いている。
何故か全身を黒マントで覆い隠しているアンデッド王がせき込み見始めていた。
不良聖女と、健康な骸骨に挟まれているこの状況は一体どういうことなのかしら。
対応に困っている私の隣に座る藍倫が、再び『SUPAA』と気持ち良さそうに煙を吐きながら、だらけた声を出している。
「FUUUU。落ち着くわぁ。」
「藍倫。15才の女の子は、煙草を吸ってはいけませんよ。」
「三華月様。酒も駄目、そして煙草も駄目って、マジでやっていられないんですけど!」
帝都5位の聖女ということもあり、教会に藍倫に注意出来る者が少ないのかしら。
藍倫はテーブルに置かれていた灰皿に煙草を置くと、辺境都市周辺の地形が記載された地図を広げ始めてきた。
帝国から受けた依頼というのは『森に潜む機械兵の調査・討伐』であるが、もう一つ私は、三条家から機械兵が出現してくる森の中にある屋敷に住んでいるという葭ヶ谷亜里亜を保護する依頼を受けていた。
何故か藍倫は、カウンターテーブルに広げた地図の端にある、辺境都市の拡大図面を指さしている。
「とりあえず、機械兵の調査は女騎士達に任せることにしましょう。」
「任せて何をするのですか。」
「はい。うち達は朝の市場に行って、食べ歩きでもしませんか。」
「藍倫。食べ歩きは、仕事を先に済ましてからでお願いします。」
「三華月様。食べ歩きをしながら情報収集をするのです。これは遊びではないんです!」
「いや。遊びですよね。」
「だから、機械兵についての情報収集をすると言っているじゃないですか!」
「却下です。食べ歩きをするのは後日にして、私達も森へ行きましょう。」
「…。真面目かよ。」
言葉を吐き捨ててきた藍倫が再び煙草をくわえて火を付けたので、今度は煙草の火を指で挟んで消してみせた。
スキル『自己再生』を獲得しているので、少しくらいの火傷なら問題ない。
藍倫は目を見開き、額に青スジを浮かべながら、カウンター席に両手を叩きつけてきた。
体中から怒りのエネルギーを感じる。
「何をするんですか。酒も駄目、食べ歩きは後まわし、そして煙草も駄目って。マジでキレますよ!」
「煙草を吸っていると、身長が伸びなくなります。やめておきなさい。」
「だいたい煙草・お酒は二十歳からというのは帝国の規則であって、聖女には関係ないじゃないですか。それに、おっぱいは三華月様より私の方が発育していますし、ほっといて下さいよ!」
「それは、ただ太っているだけでしょう。」
この後、噛みついてきた不良聖女に対して、鉄拳制裁で応戦すると、以後は快く私の言う事を聞いてくれた。
「ず、び、ば、ぜ、ん、で、じ、だ。」
太陽の陽射しが強く、砂漠からめらめらと昇ってくる陽炎が景色を歪めていた。
現在、端をかすめて移動している砂漠の中心部は、日中になると100度近くになり、その地下には異界に繋がる迷宮がある。
帝国の筆頭貴族である三条家からの依頼により、帝国最南端に位置する辺境都市に出現しているという機械兵を討伐するため、3人の女騎士達と共に砂漠の端をショートカットしていた。
私が乗っている馬型の機械人形の隣を、全身を黒マントにつつんだ姿をしている死霊王が、砂塵の上を滑るように並走している。
15話の最下層で鍛冶職人をしていたあいつだ。
あれからストーキング行為を続けてきているのであるが、私を含めて誰かに危害を加えてくる様子はない。
災害級を超える骸骨であるが、人畜無害のつまらない奴だ。
その死霊王が、今更ながらに不思議そうな声で抱えていた疑問を聞いてきた。
「三華月様が乗っているその馬型の機械人形ですが、その個体は人族の遥か上位種であると推察します。何故、三華月様に上位個体が従っているのでしょうか。」
古代人が築いたという帝都の衛星管理を行っている機械人形達が、意思を持っているか定かではない。
だが、私がまたがっている機械人形には明確な意思があり、死霊王から指摘されたとおり人族よりも遥かに上位な存在である。
その質問の答えについては全く興味がないことなので、知ろうとしたこともない。
「機械人形が私に従っている理由ですか。」
「はい。後学のために教えて下さい。」
「知りません。」
「えっ。知らないのですか?」
「そんな理由。どうでもよくないですか。」
「まぁ、そうですよね。」
ストーカーは異常なほどの執着心があり、徐々にその対象へ対する支配欲の歯止めが利かなくなるというが、死霊王からはその兆候は見られない。
鬼可愛い聖女から放置対象の扱いをされて、至福の喜びでも感じているのかしら。
そんなことを考えても仕方ないか。
現在、目の前では『女騎士vs黒色ワーム』の戦闘が行われていた。
通常、魔物は迷宮内にしか出現しない。
太陽や月の加護がある世界では生きることが出来ないからだ。
地上であるにもかかわらず、魔物が出現する帝国領最大のこの砂漠については、この砂漠そのものが迷宮なような存在であると考えられていた。
3人の帝国女騎士が戦闘している黒色ワームは将来的にはA級相当にまで進化するレア種であるが、現状ではB級相当の個体だ。
黒色ワームが地の利を活かして戦闘を有利に進めており、その様子を見ていた死霊王が女騎士達に加勢した方がよいのではないかと意見をしてきた。
「三華月様。女騎士の皆さんが苦戦をしていますが、助けなくてもいいのでしょうか。」
「彼女達からは手出し無用と言われています。なので、このまま静観するつもりです。」
女騎士が敗北し死亡してしまうと、同族殺しをしたものと見なされ、信仰心に影響がでる。
見殺しにすることは出来ないが、なぜ助けないかと言えば、女騎士達が黒色ワームを退ける事に成功するからだ。
大楯を持つ女騎士が黒色ワームの攻撃を遮断し、後方の女騎士が弓で仕留めようとしているものの、砂塵が邪魔して上手く機能していない。
戦況は不利に見えるが、実際には貫通効果系のスキルを獲得している3人の中で最も線の細い体格をした女騎士が、着実にダメージを蓄積させている。
少しずつではあるが、戦況が好転していた。
そして黒色ワームは撤退を開始した。
死霊王も、3人の戦いぶりに感心をしている。
「帝国の騎士は少数精鋭と聞いておりましたが、なかなかやるものですね。」
女騎士達であるが、勝利したものの少なからず怪我を負っており、特に楯役の女騎士のダメージが大きいようだ。
その様子を見ていた聖女が私の横を走り抜けていく。
帝国第5位の聖女藍倫だ。
15歳の女子で、私より頭一つぶん背が低く、若干ふくよかな体型をしている。
髪を後ろで三つ編みにし、美人ではないが笑顔が可愛い。
高位の聖女が着る純白のローブには、大きな十字架のデザインが施されている。
「皆様、お怪我はありませんか。治癒回復をして差し上げますので、どうぞこちらへ来て下さい。」
三条家が依頼して、私の世話係りとして手配してきた聖女であり、A級相当の回復系スキルを自在に使いこなす鬼才である。
私の見立てでは、教会の未来を担っている逸材中の逸材だ。
藍倫が女軽騎士達を回復している姿を見た死霊王が深く感心していた。
「聖女とは傷ついた者を癒す者。まさに藍倫様こそが本物の聖女様な感じですね。」
回復するスキルを使用する者こそが、本物の聖女だと言っているように聞こえるが、裏を返せば、私が偽物の聖女とも受け取れる。
遠まわしに私をディスっているのかしら。
◇
砂漠をショートカットし、帝国を出て5日後の夕方に目的地である辺境都市に到着した。
雲一つない空は藍色に変わり始め、日没を迎えようとしている。
熱い風が吹き、空に浮かぶ満月が、街を明るく照らしていた。
商店が立ち並ぶ大通りには多くの人が行き交い、活気ある声が聞こえてくる。
飲食店から酒のにおいが漏れてきており、宵の口を迎えていた。
この帝国南部に位置する辺境都市は元々小さな村であったが、10年前に帝国の傘下に入ると、他国から侵攻を受ける心配が無くなり、隣国から人が流入し現在進行形で急激に発展をしていた。
私が三条家から受けた依頼は2つある。
一つが機械兵の討伐だ。
辺境の都市の東に広がる森には、防御力の高いB級に相当する機械兵が出没していたものの、人に危害を加えるような被害が出ていないこともありこれまでは放置されていた。
ここ数日前から、その機械兵が森を出てくるようになり、近いうちに被害が出るものという占いが出たため、女騎士とともにやってきたのだ。
辺境都市に到着すると兵舎へ向かった女軽騎士達とは別れて、藍倫に連れられて繁華街の中心にある大きな建物の酒場に入っていた。
白い天井が高く大きなプロペラファンがゆっくり回り、お客さんの賑わっている店内の空気を循環させている。
20席あるテーブルが埋まっており、空いていたカウンター席に誘導された。
派手な十字架が刻まれている聖衣を着ている聖女がホール内を歩くと、いつものように視線が集中する。
ちゃかす声が聞えるが、それ以上の事を仕掛けてくる者がいない。
この都市の治安が良いものとよく分かる。
15歳である藍倫は、慣れた様子でカウンター席に座ると、よく通る声でお酒を注文した。
「親父。一番キツイ酒をくれ。」
帝国ではお酒は二十歳からとされているが、守られていないのが現実だ。
とはいうものの、聖女がそれをしては駄目だろう。
藍倫からの注文を聞いて驚く様子のないマスターが、続けて私へ注文を聞いてきたので、藍倫が頼んだお酒をキャンセルしておいた。
「お酒は二十歳からと帝国では定められているはずです。今しがた、こちらの聖女が頼んだお酒についてはキャンセル願います。適当なジュースでもだして下さい。」
「チッ!」
隣の席に座っている藍倫から、気持ちもいい舌打ちが聞こえてくる。
視線を送ると片肘をカウンターに付き、目をピクピクさせていた。
ぽっちゃり体型をしているし、堕落した生活を送っているのだろう。
その藍倫が隠し持っていた煙草を口にくわえると、年季の入った刑事のように渋い表情をしながら『SYUPPO』っと、火をつけた。
「藍倫。煙草も二十歳からですよ。」
私の声が聞こえていないのか、『FUU』と口から煙を気持ちよさそうに吐いている。
何故か全身を黒マントで覆い隠しているアンデッド王がせき込み見始めていた。
不良聖女と、健康な骸骨に挟まれているこの状況は一体どういうことなのかしら。
対応に困っている私の隣に座る藍倫が、再び『SUPAA』と気持ち良さそうに煙を吐きながら、だらけた声を出している。
「FUUUU。落ち着くわぁ。」
「藍倫。15才の女の子は、煙草を吸ってはいけませんよ。」
「三華月様。酒も駄目、そして煙草も駄目って、マジでやっていられないんですけど!」
帝都5位の聖女ということもあり、教会に藍倫に注意出来る者が少ないのかしら。
藍倫はテーブルに置かれていた灰皿に煙草を置くと、辺境都市周辺の地形が記載された地図を広げ始めてきた。
帝国から受けた依頼というのは『森に潜む機械兵の調査・討伐』であるが、もう一つ私は、三条家から機械兵が出現してくる森の中にある屋敷に住んでいるという葭ヶ谷亜里亜を保護する依頼を受けていた。
何故か藍倫は、カウンターテーブルに広げた地図の端にある、辺境都市の拡大図面を指さしている。
「とりあえず、機械兵の調査は女騎士達に任せることにしましょう。」
「任せて何をするのですか。」
「はい。うち達は朝の市場に行って、食べ歩きでもしませんか。」
「藍倫。食べ歩きは、仕事を先に済ましてからでお願いします。」
「三華月様。食べ歩きをしながら情報収集をするのです。これは遊びではないんです!」
「いや。遊びですよね。」
「だから、機械兵についての情報収集をすると言っているじゃないですか!」
「却下です。食べ歩きをするのは後日にして、私達も森へ行きましょう。」
「…。真面目かよ。」
言葉を吐き捨ててきた藍倫が再び煙草をくわえて火を付けたので、今度は煙草の火を指で挟んで消してみせた。
スキル『自己再生』を獲得しているので、少しくらいの火傷なら問題ない。
藍倫は目を見開き、額に青スジを浮かべながら、カウンター席に両手を叩きつけてきた。
体中から怒りのエネルギーを感じる。
「何をするんですか。酒も駄目、食べ歩きは後まわし、そして煙草も駄目って。マジでキレますよ!」
「煙草を吸っていると、身長が伸びなくなります。やめておきなさい。」
「だいたい煙草・お酒は二十歳からというのは帝国の規則であって、聖女には関係ないじゃないですか。それに、おっぱいは三華月様より私の方が発育していますし、ほっといて下さいよ!」
「それは、ただ太っているだけでしょう。」
この後、噛みついてきた不良聖女に対して、鉄拳制裁で応戦すると、以後は快く私の言う事を聞いてくれた。
「ず、び、ば、ぜ、ん、で、じ、だ。」
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