ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』

samishii kame

文字の大きさ
58 / 142

第58話 たまねぎ

しおりを挟む
礼拝堂内には神聖な空気が流れている。
使い魔達が掃除してくれているおかげで室内には汚れや埃がなく、隅々までクリアに見えていた。
4人掛けの長椅子が2列に並び、80名が座れる席がある。
正面には造りこまれた十字架があり、側面に嵌め込まれているステンドガラスから明かりが入ってきていた。

木製の祭壇横の台座には、適正JOBを見定めることができる大きなクリスタルが鎮座しており、四十九を鑑定したところ『女忍者』と表示された。
星運の『覚醒』の効果によりS級スキル『影使い』が目覚めていたことより、適正JOBは斥候系であると予測していたが、その通りの結果だ。
入れ替わりに眼鏡女子である月姫がクリスタルの前に進み、適正JOBを鑑定してくれているイケメン親父へ頭を下げていた。


「司祭様。よろしくお願いします。」
「承知しました。月姫さん、こちらのクリスタル石へ手を乗せて下さい。」


眼鏡女子である月姫の容姿から適正JOBを素直に予測するならば、学級委員長であるとか、学者あたりがしっくりくる。
黒龍討伐後、満員状態の酒場を1人で切り盛りしていたことを考えると、カリスマ店員なんかも有りなのかもしれない。
黒龍討伐のため、ダンジョン最下層まで信じられないような危ない道を何事もなくクリアした実績を考慮すると、特殊工作員の線もある。
見た目とは裏腹に、たぐい稀なレベルで器用な女子なのではなかろうか。
月姫は顔を真っ赤にしながらクリスタルの上に手のひらを乗せると、その結果を見たイケメン神父が苦々しい表情を浮かべた。


「月姫さんの適正JOBが『無色透明』であると出ました。」


『無色透明』は、全ステータス値が平均的で突き出た能力がなく、何事においても未熟であり最弱のJOBと言われているが、能力値を上げていけば多領域に才能を発揮し、全領域のスキルが獲得できる。
一般的にはハズレとされているものの、獲得条件は極めて難しく、最強無双となる可能性を秘めているJOBだ。
結果を聞いた月姫が残念そうな表情を浮かべて深くため息をついた。


「空気みたいと言うか、存在感の無い私らしいJOBですね。」
「月姫。諦めるな。こちらには、何でも出来る、超反逆者、いる。」


月姫と四十九の視線がこちらの方へ移ってきた。
その超反逆者という表現方法は、やめてもらいたい。
見たまんま、普通にウルトラ可愛い聖女と言えばいいではないですか。
私に期待しているようたが、何をさせようとしているのかしら。
嫌な予感がする。
既に私が対応する事を前提に、四十九が注文を出してきた。


「無色透明。JOBの名、可愛さ、ゼロ。改名、希望。」


四十九がグイっと詰め寄ってきた。
眼鏡女子も、何故が期待している表情だ。
世界の記憶『アーカイブ』を使用すればJOBの名前を変える事が可能ではあるが、聖女という者は利己的な行為を決してしないのが世間の鉄則。
でもまぁ、私はそれを平気でやってしまう聖女なのだけどな。
世界の記憶『アーカイブ』を改ざんする行為は面倒くさいが、四十九からの要望を無視する方が、更に面倒な事になる気がする。


「承知しました。『無色透明』のJOB名を、相応しい名前へ変更させてもらいます。」
「おおお。さすが、神。天才。」
「三華月様は本当に可愛さも実力も神です!」


四十九は抑揚のない歓声を上げながら拍手をしている。
超反逆者から神になってしまった。
だが可愛さだけでいえば神レベルということは否定出来ないが、おちょくってきているように思える。
でもまぁ、いいでしょう。


「それでは、私は世界の記憶『アーカイブ』を展開します。」


宣言と共に、目の前に無限とも思えるほどの羅列された文字の立体フォログラム映像が浮かび上がってきた。
まずは、この文字の中からJOB名『無色透明』の項目を引っ張り出します。
世界の記憶『アーカイブ』は私にしか見えていないため、四十九と月姫は、私が行っている作業については全く理解出来ていない。
『無色透明』の説明に、『あらゆる武器と防具の装備が可能で、近接攻撃から遠隔攻撃にいたるまで全てをこなせる最強のJOB』という内容と記録されている。
無限の可能性を秘めている月姫にぴったりなJOBだ。


「無色透明のJOBの名前を『たまねぎ』に変更する事にします。」
「え?」
「たまねぎ?」


展開されている『アーカイブ』を、サラサラさらさらと書き換えると、地上世界から『無色透明』のJOBは消え、『たまねぎ』という名前に生まれ変わっていた。
さすが、私だ。
安定の自画自賛である。
私の宣言を聞いていた四十九と月姫であるが、反応が薄いというか、微妙な表情を浮かべていた。


「古代文明の記録によると、『オニオンシリーズ』という圧倒的な性能を有している装備品が存在するそうです。それを装備すると、チート級の強さを手に入れる事ができるというJOB名にちなんで、可愛い名前に変えてみました。」
「三華月様。芸術センス、皆無、失念。ワタシ、反省。」
「私は、少しだけ可愛い名前だと思います。大丈夫ですよ。」


少しだけなのなのかよ…。
そして大丈夫って、残念感が満載ではないか。





空が青色から藍色へ変わり始めていた。
太陽が沈みかけ、星が輝き始めている。
機械人形が引く馬車は、草原地帯に延びる一本道を進んでいた。
背後にある廃墟の姿はもう見えない。
四十九を魔界へ帰すために、イケメン親父の神官がいる地下礼拝堂から出て、城塞都市エインヘルヤルへ向かい始めていた。
手綱を持つ私の横に四十九が座り、四十九を背後から月姫が抱き着きながら座っている。


「まったくやれやれです。地下礼拝堂へ立ち寄りましたが、意味の無いものに終わってしまいましたね。」


喜んでもらえるかと思って行ったJOB名の変更も、不発に終わってしまった。
無駄骨を折るとはまさにこのことだ。
返事がない隣に座っている2人の少女を見ると、何故か睨みつけられていた。
嫌な予感がする。
案の定、2人から猛抗議が始まった。


「立ち寄った意味。凄く、ある。」
「はい。素敵な出会いがありました。」
「そうですか。それは良かったですね。」
「アタシと月姫。旦那のため、城塞都市で一攫千金、当てる。」
「私と四十九と司祭様の3人で、あの教会の建物を再建して、街づくりをしようと思っています。」
城塞都市エインヘルヤルへは四十九を魔界に帰すために向かっていたはずですよ。」
「肯定。親が心配。」
「私も四十九の両親に挨拶をしたいと思っています。」
「魔界に行くのなら、旦那のために一攫千金を当てる必要は無いではないですか。」
「月姫と一生、旦那、支える。」
「はい。四十九の両親に無事である事を伝えたら、私達は地上世界へ戻ってくるつもりです。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

領民の幸福度がガチャポイント!? 借金まみれの辺境を立て直す【領地ガチャ】が最強すぎた!内政でUR「温泉郷」と「聖獣」を引き当てて…

namisan
ファンタジー
「役立たず」と中央から追放された没落貴族の俺、アルト・フォン・クライナー。継いだのは、借金まみれで作物も育たない見捨てられた辺境領地だけだった。 絶望する俺に発現したスキルは【領地ガチャ】。それは、領民の「幸福度」をポイントとして消費し、領地発展に必要なものを引き当てる唯一無二の能力だった。 「領民を幸せにすれば、領地も豊かになる!」 俺は領民と共に汗を流し、壊れた水路を直し、地道に幸福度を稼ぐ。 『N:ジャガイモの種』『R:土木技術書』 地味だが確実な「当たり」で、ほのぼのと領地を再建していく。 だが、ある日。溜め込んだ幸福度で引いたガチャが、俺の運命を激変させる。 『UR(ウルトラレア):万病に効く【奇跡の温泉郷】』 この「当たり」が、中央の腐敗した貴族たちの欲望を刺激した。 借金のカタに領地を狙う大商会の令嬢。 温泉利権を奪うため、父の命で派遣されてきた元婚約者の侯爵令嬢。 「領民の幸福(ガチャポイント)を脅かす者は、誰であっても許さない」 これは、ただ平穏に暮らしたかっただけの俺が、ガチャで得た力(と証拠とゴーレムと聖獣)を駆使し、ほのぼの領地を守り抜き、いつの間にか最強の領主として成り上がっていく物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...