ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』

samishii kame

文字の大きさ
60 / 142

第60話 鬼嫁扱いのカオスについて

しおりを挟む
日中にもかかわらず、太陽が低い位置に見える。
吐く息が白く、空気が乾燥していた。
入り組んだ町並みには子供達が走りまわり、冒険者達が溢れている。
城壁に囲まれた小さな都市ではあるが、白翼が推し進めている『重商主義政策』により、城塞都市は繁栄を極めていた。

現在、白翼のギルドマスターが殺されてしまった事が大きなニュースになっていた。
紺翼のギルドマスターである飛燕に暗殺されてしまったのだ。
現在、飛燕は地下迷宮に潜伏中で、白翼にて討伐隊を編成するにあたりB級以上の冒険者が集められていた。
基準をクリアしている美人賢者達は、私を含めた4人チームで討伐隊へ参加をするためにギルド白翼へ出向いている。
勇者と強斥候は迷宮へ潜るための準備に行くと言ってどこかに出掛けていった。
そして私はというと、城塞都市にある『遊郭』へ向かっていた。

大陸には3大強国と呼ばれる帝国、教国、S王国がある。
教国は奴隷制度の廃止を世界へ働きかけており、帝国とS王国も同調する動きをしていた。
どの国にも属していない城塞都市には、都市の地下には『強欲の壺』という魔物が出る地下迷宮ともう一つ有名な施設がある。
それが奴隷落ちした女達が、お金で男達へ性的サービスをさせるエリア『遊郭』だ。
—————————この世界には不用な存在である遊郭を破壊するために向かっていたのだ。

空には太陽が昇り、気温が最も高くなる時間帯、北の大地にある城塞都市でも少なからず暑さを感じる。
歓楽街を私の周りにいる男達が遊郭へ向かい楽しそうに歩いている。
その遊郭の男達の流れの中に、勇者と強斥候の姿を発見した。
確か、迷宮へ潜る準備に出かけていたはず。
まさか、勇者が私と同じ志を持っていたとは驚きました。
世界を平和に導く使命に目覚めたのかしら。
勇者と強斥候も私の存在に気が付いたようだ。
心なしか2人は体を震わせ始め、瞳がウロウロとし、発汗量が急激に増えているように見える。
おいおいおい。私と出会って、どうして挙動不審になっているのかしら。
つまりそれは、私とは全く異なる志をもって『遊郭』に来たということか。
やれやれです。
世界の記憶『アーカイブ』に『よこしま』というJOBを書き加えるべきか、本気で検討する時期に来ているのかもしれない。
突然、勇者と強斥候が意味不明な言葉を口走りはじめた。


「これは浮気じゃないんだ。だから見逃してくれ。」
「そうなんす。欲求不満の処理を、機械的に行いに来ただけなんす。だから僕達は無実なんす。」


池に餌を落とし鯉が集まってくる時のように、周囲を歩いていた男達は足を止め、一斉に人だかりが出来始めてくる。
周りから聞こえてくるヒソヒソ話しの声が『彼女に浮気がばれた』みたいな内容になっていた。
それも、私の方が加害者のようにいわれている。


《浮気がバレたみたいだぜ。》
《まさか、遊郭の入り口で待ち伏せしていたのかよ。》
《これは酷い。あいつらに同情するぜ。》


勇者と強斥候は、ゆっくりと後退している。
2人の方が同情され、うんこの彼女扱いをされている私の方が嫌な女扱いをされているのかしら。
周囲の誤解はいったん置いておいて、ここは勇者と強斥候への説教を優先させてもらいましょう。


「勇者。それに強斥候。確か迷宮へ行く準備をしてくると言い、外に行ったと記憶しておりますが、私の覚え違いでしょうか。」
「誤解なんだ。見逃してくれ!」
美人賢者アメリアには、ここへ来たことは内緒にしてほしいっす。」


《すげぇ恐妻家だな。》
《鬼嫁かよ!》


勇者と強斥候が真っ青な顔をして命乞いをしているこの状況を見ている人だかりから、私が『嫁扱い』をされているヒソヒソ声が聞こえてきた。
もうそれは謎過ぎるカオスだろ。
半歩詰め寄ると、2人は尻もちをつき、真剣に怯え始めた。


「命だけは助けてくれ!」
「これは、純然たる生理行動なんす!」
「命は助けてあげますし、遊郭に来たことは美人賢者に言わないでおきましょう。その代わりに、お願い事を一つ頼まれてもらえないでしょうか。」


2人が地面に尻もちを付きながら、更に後退していく。
殺そうとしていないし、純然たる生理行動という意味も分からない。
勇者と強斥候は、死の淵から生還し救われたような表情をさせていたが、同時にとてつもなく嫌な顔をし、震えながら苦々しい声を絞り出してきた。


「絶対にろくなお願いじゃないよな!」
「ここは背に腹はかえられないっす。凄く聞きたくないですが、伺います。」
「ご協力いただき有難う御座います。これから『遊郭』を焼け野原に変えようと思いますので、2人には死傷者が出ないように動いてください。」
「ちょっと待てよ。焼け野原にするってどういう事なんだ!」
「物事は穏便に事を運ぶべきっす。何でも暴力で物事を解決するその考えは改めてください。」


私はいつでも穏便だ。
そう。暴力とは、私にとって穏便な手段なのだ。
うんこ達とは議論するつもりなど一切ない。
それでは、世界に不用な施設である遊郭を破壊させてもらいます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

領民の幸福度がガチャポイント!? 借金まみれの辺境を立て直す【領地ガチャ】が最強すぎた!内政でUR「温泉郷」と「聖獣」を引き当てて…

namisan
ファンタジー
「役立たず」と中央から追放された没落貴族の俺、アルト・フォン・クライナー。継いだのは、借金まみれで作物も育たない見捨てられた辺境領地だけだった。 絶望する俺に発現したスキルは【領地ガチャ】。それは、領民の「幸福度」をポイントとして消費し、領地発展に必要なものを引き当てる唯一無二の能力だった。 「領民を幸せにすれば、領地も豊かになる!」 俺は領民と共に汗を流し、壊れた水路を直し、地道に幸福度を稼ぐ。 『N:ジャガイモの種』『R:土木技術書』 地味だが確実な「当たり」で、ほのぼのと領地を再建していく。 だが、ある日。溜め込んだ幸福度で引いたガチャが、俺の運命を激変させる。 『UR(ウルトラレア):万病に効く【奇跡の温泉郷】』 この「当たり」が、中央の腐敗した貴族たちの欲望を刺激した。 借金のカタに領地を狙う大商会の令嬢。 温泉利権を奪うため、父の命で派遣されてきた元婚約者の侯爵令嬢。 「領民の幸福(ガチャポイント)を脅かす者は、誰であっても許さない」 これは、ただ平穏に暮らしたかっただけの俺が、ガチャで得た力(と証拠とゴーレムと聖獣)を駆使し、ほのぼの領地を守り抜き、いつの間にか最強の領主として成り上がっていく物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...