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第108話 伝説シリーズのペンギン
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分厚い雲が太陽光を阻み、海は夜のように暗い世界が広がっている。
細い雨が降り、生暖かい風が吹き、波が荒れてきていた。
風から推進力を得て海上を進む旗艦ポラリスの甲板では、ペンギンが右手に持った指揮棒を振るい、マストの帆を器用に操る姿がある。
船頭の向こうには、木目模様をした流星型の船が遥か向こうへ見えていた。
その距離は5km程度。
ペンギンが200m級の旗艦ポラリスに実装されている主砲の砲撃許可を求めてきた。
「三華月様。このまま軍船が地上世界に行ってしまいますと、天空神が復活するおそれがあります。前にも申し上げたとおり、イムセティにトドメを刺した私達へ報復してくるかもしれません。効果があるとは思えませんが、軍船への主砲の砲撃許可をお願いします。」
「軍船の中には漂流者達が閉じ込められています。砲撃許可は出来ません。ここは何よりも漂流者さん達の人命を優先して下さい。」
私の第一優先事項は、同族の命を護ること。
信仰心を犠牲にしてまで、助かりたいとは思っていない。
天空神が復活し復讐をしてきたとしても、その対応についての優先度は低い。
現状況下では、軍船がクラーケン達からの攻撃をすり抜け、包囲網を突破出来るかが私にとって重要なのだ。
とりあえず今は、状況を静観させてもらいます。
ペンギンが、ポラリスの船底に設置しているソナーからの情報を報告してきた。
「三華月様。海底から1000体以上のクラーケン達が上がってきております。」
「1000個体のクラーケンって、そんな数が海底に棲んでいたのですか。」
「それでは、軍船の拡大映像をスクリーンに映し出させてもらいます。」
ペンギンが短い手を上げると、旗艦ポラリスの甲板に立体フォログラム映像が浮かび上がってきた。
木目模様のダマスカス鋼で出来た軍船の船尾が映り、黒い波を斬り裂き発生する航跡波をつくりながら進んでいく姿が見える。
現在は昼間の時間帯。
人類史上、最も可愛い聖女といえども、月の加護がないこの状況下では1000個体のドラゴン級を相手にすることは出来ない。
私には見守るしか選択肢がない。
「三華月様。約10秒後にクラーケン達が軍船へ接触します。」
拡大映像画面に映し出されている軍船は、淡々と静かな暗い海を走っている。
クラーケン達が接近していることに気が付いているのかしら。
見た感じ、何だか緊張感が感じられない。
足元にいるペンギンが、接触するまでのカウントダウンを開始した。
「5、4、3、2、1…。海面へ上がってきます。」
軍船を囲い込むように海中から、突然勢いよく柱のような物が突き出てきた。
その足がとてつもなく大きく、そして高く、多い。
海面から突き出ている高さは100mを超えている。
数は1000本以上か。
まるで壁が出来たようだ。
当然、軍船の姿は視認できない。
海が荒々しく暴れ、津波が押し寄せてくる姿が見える。
「ペンギンさん。軍船の状況は分かりますか。」
「申し訳ありません。伝説の航海士と呼ばれているペンギンではありますが、さすがに軍船の状態の確認はできません。」
伝説の航海士とは未開の海域を発見したペンギンのことなのだろうか。
切羽詰まるこの状況で、どうでもいい情報を挟んでくるのはやめてもらいたい。
ここからは視認できないが、海面を叩き付けるような音が聞こえ始めてきた。
その音に大気が揺れる。
クラーケン達が100mの高さから、足を鞭のようにしならせ降り降ろしているのだろう。
軍船は隙間なく全包囲を囲い込まれ、逃げ場は無い。
情け容赦のないフルボッコ状態になっているものと想定される。
前からは20m以上の高さがある津波が押し寄せてきている。
「三華月様。あの津波を食らっては、伝説の波乗りペンギンである私と言えども、ダメージを負いかねません。何とか対処願えないでしょうか。
「承知しました。津波については私の方で対処致しましょう。運命の矢で、津波を破壊させて頂きます。」
伝説の波乗りペンギンとは、サーフィンが鬼上手いペンギンのことを指すのだろうか。
と言いますか、伝説シリーズはまだこれからも続いていくのかよ。
ツッコミを入れたいところではあるが、今は津波への対策の方が優先されるところだ。
矢にジャイロー回転をかけると、貫通力と破壊力が上がる。
分厚い波を部分的に破壊することは難しいことではない。
―――――――――私は、運命の弓をスナイパーモードで召喚し、運命の矢をリロードします。
暗い世界の中に、白銀に輝く3mを超える運命の弓が現れた。
背筋を伸ばし、両足にバランスよく体重を乗せながら、ギリギリと弓を引き絞っていく。
今までいろいろなものを撃ち抜いてきたが、高波を破壊するのは初めてかもしれない。
しなやかに曲がっていく弓が限界点に達した。
それでは、粉砕させて頂きます。
―――――――SHOOT
雨を斬り裂きながら走る音速の矢が、糸を引くように水しぶきの線を描いていく。
矢が走る後を追尾するように海がえぐりとれて、津波を突き抜けた。
押し寄せてきている高波に、芸術的ともいえる丸い穴がパックリと空いている。
それでは運命の弓をリロードし、連射させてもらいます。
2撃目、3撃目と連続で撃ち込んでいくと、ポラリスへ迫ってきていた高波の一部が破壊されていた。
無事に津波の直撃は回避できたものの、静かだった海は荒れ始め、ポラリスは大きく揺れている。
立体フォログラム映像へ視線を送ると、クラーケン達の攻撃をすり抜けている軍船が、何ごともなく悠々と海を進んでいる映像が写っていた。
あの攻撃を擦り抜けたのか。
ペンギンが独り言のように考察をしている声が聞こえてくる。
「あのクラーケン達からの隙間ない攻撃から回避するとは。海から無限の浮力を生み出すスキル『フロート』の効果を応用し、物理攻撃を回避したようです。」
「全ての物理攻撃を回避できるのでしょうか。」
「たいしたことではないでしょう。所詮、通常の物理攻撃を回避できるだけのことですから。」
おいおいおい。あれで、たいしたことはないのかよ。
何にしても、この勢いでクラーケン達の包囲網を無事に突破してくれるなら問題なしだ。
この先、天空神が復活するかもしれないという事態について、今から想定しておいた方がいいかもしれないか。
その時である。
余裕をもって指揮棒を振るいポラリスを操舵していたペンギンが、突然体を震わせ、こちらに視線を送ってきた。
その顔は恐怖に満ち、目の焦点がぼやけている。
「三華月様。海中から巨大な何かが上がってきます。」
「その何かとは、巨大なクラーケンのことですか。」
「いえ。その超大型の個体はクラーケンではないものと思われます。」
「そいつは、クラーケン以上の危険な存在ななのでしょうか。」
「はい。おそらくですが、神話の魔獣。ヨムンガルドであると思われます。」
「ヨムンガルドだと!」
「巨大な山脈みたいな奴で、全長400km程度はあるようです。」
ヨムンガルドとは神話にでてくる蛇のこと。
全長400kmと言われても、どれくらいのものなのかよく分からない。
それって、規格外すぎるだろ。
(※東京から大阪間までの直線距離が約400kmです。)
細い雨が降り、生暖かい風が吹き、波が荒れてきていた。
風から推進力を得て海上を進む旗艦ポラリスの甲板では、ペンギンが右手に持った指揮棒を振るい、マストの帆を器用に操る姿がある。
船頭の向こうには、木目模様をした流星型の船が遥か向こうへ見えていた。
その距離は5km程度。
ペンギンが200m級の旗艦ポラリスに実装されている主砲の砲撃許可を求めてきた。
「三華月様。このまま軍船が地上世界に行ってしまいますと、天空神が復活するおそれがあります。前にも申し上げたとおり、イムセティにトドメを刺した私達へ報復してくるかもしれません。効果があるとは思えませんが、軍船への主砲の砲撃許可をお願いします。」
「軍船の中には漂流者達が閉じ込められています。砲撃許可は出来ません。ここは何よりも漂流者さん達の人命を優先して下さい。」
私の第一優先事項は、同族の命を護ること。
信仰心を犠牲にしてまで、助かりたいとは思っていない。
天空神が復活し復讐をしてきたとしても、その対応についての優先度は低い。
現状況下では、軍船がクラーケン達からの攻撃をすり抜け、包囲網を突破出来るかが私にとって重要なのだ。
とりあえず今は、状況を静観させてもらいます。
ペンギンが、ポラリスの船底に設置しているソナーからの情報を報告してきた。
「三華月様。海底から1000体以上のクラーケン達が上がってきております。」
「1000個体のクラーケンって、そんな数が海底に棲んでいたのですか。」
「それでは、軍船の拡大映像をスクリーンに映し出させてもらいます。」
ペンギンが短い手を上げると、旗艦ポラリスの甲板に立体フォログラム映像が浮かび上がってきた。
木目模様のダマスカス鋼で出来た軍船の船尾が映り、黒い波を斬り裂き発生する航跡波をつくりながら進んでいく姿が見える。
現在は昼間の時間帯。
人類史上、最も可愛い聖女といえども、月の加護がないこの状況下では1000個体のドラゴン級を相手にすることは出来ない。
私には見守るしか選択肢がない。
「三華月様。約10秒後にクラーケン達が軍船へ接触します。」
拡大映像画面に映し出されている軍船は、淡々と静かな暗い海を走っている。
クラーケン達が接近していることに気が付いているのかしら。
見た感じ、何だか緊張感が感じられない。
足元にいるペンギンが、接触するまでのカウントダウンを開始した。
「5、4、3、2、1…。海面へ上がってきます。」
軍船を囲い込むように海中から、突然勢いよく柱のような物が突き出てきた。
その足がとてつもなく大きく、そして高く、多い。
海面から突き出ている高さは100mを超えている。
数は1000本以上か。
まるで壁が出来たようだ。
当然、軍船の姿は視認できない。
海が荒々しく暴れ、津波が押し寄せてくる姿が見える。
「ペンギンさん。軍船の状況は分かりますか。」
「申し訳ありません。伝説の航海士と呼ばれているペンギンではありますが、さすがに軍船の状態の確認はできません。」
伝説の航海士とは未開の海域を発見したペンギンのことなのだろうか。
切羽詰まるこの状況で、どうでもいい情報を挟んでくるのはやめてもらいたい。
ここからは視認できないが、海面を叩き付けるような音が聞こえ始めてきた。
その音に大気が揺れる。
クラーケン達が100mの高さから、足を鞭のようにしならせ降り降ろしているのだろう。
軍船は隙間なく全包囲を囲い込まれ、逃げ場は無い。
情け容赦のないフルボッコ状態になっているものと想定される。
前からは20m以上の高さがある津波が押し寄せてきている。
「三華月様。あの津波を食らっては、伝説の波乗りペンギンである私と言えども、ダメージを負いかねません。何とか対処願えないでしょうか。
「承知しました。津波については私の方で対処致しましょう。運命の矢で、津波を破壊させて頂きます。」
伝説の波乗りペンギンとは、サーフィンが鬼上手いペンギンのことを指すのだろうか。
と言いますか、伝説シリーズはまだこれからも続いていくのかよ。
ツッコミを入れたいところではあるが、今は津波への対策の方が優先されるところだ。
矢にジャイロー回転をかけると、貫通力と破壊力が上がる。
分厚い波を部分的に破壊することは難しいことではない。
―――――――――私は、運命の弓をスナイパーモードで召喚し、運命の矢をリロードします。
暗い世界の中に、白銀に輝く3mを超える運命の弓が現れた。
背筋を伸ばし、両足にバランスよく体重を乗せながら、ギリギリと弓を引き絞っていく。
今までいろいろなものを撃ち抜いてきたが、高波を破壊するのは初めてかもしれない。
しなやかに曲がっていく弓が限界点に達した。
それでは、粉砕させて頂きます。
―――――――SHOOT
雨を斬り裂きながら走る音速の矢が、糸を引くように水しぶきの線を描いていく。
矢が走る後を追尾するように海がえぐりとれて、津波を突き抜けた。
押し寄せてきている高波に、芸術的ともいえる丸い穴がパックリと空いている。
それでは運命の弓をリロードし、連射させてもらいます。
2撃目、3撃目と連続で撃ち込んでいくと、ポラリスへ迫ってきていた高波の一部が破壊されていた。
無事に津波の直撃は回避できたものの、静かだった海は荒れ始め、ポラリスは大きく揺れている。
立体フォログラム映像へ視線を送ると、クラーケン達の攻撃をすり抜けている軍船が、何ごともなく悠々と海を進んでいる映像が写っていた。
あの攻撃を擦り抜けたのか。
ペンギンが独り言のように考察をしている声が聞こえてくる。
「あのクラーケン達からの隙間ない攻撃から回避するとは。海から無限の浮力を生み出すスキル『フロート』の効果を応用し、物理攻撃を回避したようです。」
「全ての物理攻撃を回避できるのでしょうか。」
「たいしたことではないでしょう。所詮、通常の物理攻撃を回避できるだけのことですから。」
おいおいおい。あれで、たいしたことはないのかよ。
何にしても、この勢いでクラーケン達の包囲網を無事に突破してくれるなら問題なしだ。
この先、天空神が復活するかもしれないという事態について、今から想定しておいた方がいいかもしれないか。
その時である。
余裕をもって指揮棒を振るいポラリスを操舵していたペンギンが、突然体を震わせ、こちらに視線を送ってきた。
その顔は恐怖に満ち、目の焦点がぼやけている。
「三華月様。海中から巨大な何かが上がってきます。」
「その何かとは、巨大なクラーケンのことですか。」
「いえ。その超大型の個体はクラーケンではないものと思われます。」
「そいつは、クラーケン以上の危険な存在ななのでしょうか。」
「はい。おそらくですが、神話の魔獣。ヨムンガルドであると思われます。」
「ヨムンガルドだと!」
「巨大な山脈みたいな奴で、全長400km程度はあるようです。」
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