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第125話 闇商人から◯◯しました
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夜空に星が広がっている時間帯にもかかわらず、気温が40度近くまであった。
湿度も高いせいもあり、動かなくても汗が滴り落ちてくる。
首都の中央通りは深夜にもかかわらず人で溢れかえっており、活気に満ちていた。
繁華街独特の雑居音が聞こえ、お酒のにおいが漂ってくる。
深刻な食料不足に陥っているにもかかわらず、七武列島首都は活気に満ち陽気な空気が蔓延していた原因は、食料不足問題がまもなく解決するという首都全域に噂が広がっていたためだ。
その噂をばら撒いた張本人である少年神官の廉廉が、繁華街にあるオープンカフェテラスにいる私の前で、土竜とハイタッチをした後、こちらへ深く頭を下げてきた。
伐折羅海賊団の亜弐羅を港に停泊していた帝国旗艦ポラリスにいるペンギンの元まで連行し、戻ってきたようだ。
「三華月様。ただいま戻りました。」
「亜弐羅をペンギンさんの元へ送り届けて貰えたのでしょうか。」
「はい。もちろんです。さすがの僕でも、三華月様からの命令に逆らうような行動は、恐ろしくてすることが出来ません。」
性格は底辺であるが、神聖職についている者が私の命令に逆らうような行為はしないだろう。
とは言うものの、『さすがの僕でも』という言葉が引っ掛かる。
食料不足問題が解決するという噂をばら撒いた件については、都市全体に広がっていた不安な気持ち収め、街の犯罪率が減少する効果がでてくることを考慮すると、責めるような行動ではない。
だが、一つ疑問が生まれていた。
何故、少年神官は戻ってきて、土竜から今後の行動について詳しく話しを聞いているのかしら。
亜弐羅を届けたという結果報告を行うために戻ってきたまでは理解できる。
もしかして、私達に付いてくるつもりなのだろうか。
「簾簾。聞いたとおり、私と土竜さんは南の離れ小島と、伐折羅海賊団の基地がある島へ向かいます。あなたは、教会へお戻りなさい。」
「どうしてですか。僕も綺麗系の知的なお姉さんの九毘羅姫と、クールビューティーでツンデレな迷企羅姫に会いたいじゃないですか。これだけは、いくら三華月様からの命令でもきくことは出来ません!」
九毘羅と迷企羅は伐折羅海賊の団員だ。
やれやれだ。つい先ほど、私の命令には逆らえないと言っていたではないか。
もう自分で言った言葉を忘れてしまったのかしら。
そもそも、付いてきたい動機が不純である。
やれやれと思っていると、土竜が頭にかぶっている安全第一と書かれているヘルメットを見せるようにしながら廉廉との会話に割り込んできた。
「三華月様。簾簾君が冒険へ同行することをお許し下さい。」
「私達は冒険に行くわけではありませんよ。」
「三華月様には迷惑をかけません。」
「いや。だから、簾簾が付いてくる必要がないと言っているのです。」
「私にはS級の防御力を誇るこのヘルメットがありまます。廉廉君の安全は私が保証させてもらいます。」
「安全については、承知しました。」
「三華月様。有難うございます。」
「さすが、僕の心の友だ。土竜君。有難う。」
話しが噛み合わない。
少年神官と土竜は、伝説の聖剣を求める冒険へ行くとでも思っているのかしら。
土竜からは、商業ギルドの迷宮主を辞め、悲壮感のようなものが感じられないことに違和感を覚えていた。
そう。逆に気分を上げているように見えるのだ。
実際に目の前では、少年神官とハイタッチを交わし、和気あいあいとしている。
地上世界での生活を無茶苦茶楽しんでいるのかもしれないという疑惑が生まれてきた。
少年神官は、続けて土竜から旅の計画を楽しそうに聞いている。
私に付いてくることが決定してしまったのかしら。
伐折羅海賊団員を捕らえたら、またペンギンの元へ送り届けることになるかもしれないし、少年神官も役にたつかもしれないか。
昼間からオープンカフェで次元回廊の掘削ルート図面を作成していた土竜が頭を下げてきた。
「三華月様。これより伐折羅海賊団の基地まで、次元回廊の掘削を開始します。」
オープンカフェテラスの中央に、突如木製扉が現れた。
周りにいる者達からは、その扉が見えていないようで騒ぎが起きるようなことはない。
開いた扉を土竜に続いて入っていくと、その中は明るい照明に照らされた大きな空間になっていた。
役割がそれぞれ異なる掘削機がたくさん置かれている。
世界の記憶『アーカイブ』に記録されている、古代技術で使用されていたという最新機器という同じ代物だ。
その掘削機を見た少年神官が早速、土竜が手に持っているスコップについてツッコミを入れてきた。
「おいおい土竜君。その手に持っている最強のスコップとやらで、トンネルを掘っていくんじゃ無いのかよ!」
「廉廉君。この最強のスコップでもトンネルは掘れないことは無いけど、凄く時間がかかってしまうんだ。」
「確かに時間がかかりそうだね。」
「この掘削機シリーズは、闇商人から購入したものなんです。」
「土竜君って、何気にすげえじゃないか。」
「私は、三華月様の下僕にして、A級相当の魔物ですから。」
感心している少年神官に対して、土竜は口角を上げながら指でピースサインをつくっている。
そして、昼間から書いていた図面を両手に広げると同時に、掘削機の1台が動き出し、岩盤の破砕を開始した。
掘削機のアームが突き刺さった岩盤に亀裂が入っていくが、その音はそれほどでもない。
騒音を抑える工夫がされているようだ。
作業の開始しされると、少年神官はテーブルの上に置いてあったティーセットにお茶をつくり始めている。
土竜と少年神官は、緊張感がなく何だか凄く楽しそうにしているように見えていた。
湿度も高いせいもあり、動かなくても汗が滴り落ちてくる。
首都の中央通りは深夜にもかかわらず人で溢れかえっており、活気に満ちていた。
繁華街独特の雑居音が聞こえ、お酒のにおいが漂ってくる。
深刻な食料不足に陥っているにもかかわらず、七武列島首都は活気に満ち陽気な空気が蔓延していた原因は、食料不足問題がまもなく解決するという首都全域に噂が広がっていたためだ。
その噂をばら撒いた張本人である少年神官の廉廉が、繁華街にあるオープンカフェテラスにいる私の前で、土竜とハイタッチをした後、こちらへ深く頭を下げてきた。
伐折羅海賊団の亜弐羅を港に停泊していた帝国旗艦ポラリスにいるペンギンの元まで連行し、戻ってきたようだ。
「三華月様。ただいま戻りました。」
「亜弐羅をペンギンさんの元へ送り届けて貰えたのでしょうか。」
「はい。もちろんです。さすがの僕でも、三華月様からの命令に逆らうような行動は、恐ろしくてすることが出来ません。」
性格は底辺であるが、神聖職についている者が私の命令に逆らうような行為はしないだろう。
とは言うものの、『さすがの僕でも』という言葉が引っ掛かる。
食料不足問題が解決するという噂をばら撒いた件については、都市全体に広がっていた不安な気持ち収め、街の犯罪率が減少する効果がでてくることを考慮すると、責めるような行動ではない。
だが、一つ疑問が生まれていた。
何故、少年神官は戻ってきて、土竜から今後の行動について詳しく話しを聞いているのかしら。
亜弐羅を届けたという結果報告を行うために戻ってきたまでは理解できる。
もしかして、私達に付いてくるつもりなのだろうか。
「簾簾。聞いたとおり、私と土竜さんは南の離れ小島と、伐折羅海賊団の基地がある島へ向かいます。あなたは、教会へお戻りなさい。」
「どうしてですか。僕も綺麗系の知的なお姉さんの九毘羅姫と、クールビューティーでツンデレな迷企羅姫に会いたいじゃないですか。これだけは、いくら三華月様からの命令でもきくことは出来ません!」
九毘羅と迷企羅は伐折羅海賊の団員だ。
やれやれだ。つい先ほど、私の命令には逆らえないと言っていたではないか。
もう自分で言った言葉を忘れてしまったのかしら。
そもそも、付いてきたい動機が不純である。
やれやれと思っていると、土竜が頭にかぶっている安全第一と書かれているヘルメットを見せるようにしながら廉廉との会話に割り込んできた。
「三華月様。簾簾君が冒険へ同行することをお許し下さい。」
「私達は冒険に行くわけではありませんよ。」
「三華月様には迷惑をかけません。」
「いや。だから、簾簾が付いてくる必要がないと言っているのです。」
「私にはS級の防御力を誇るこのヘルメットがありまます。廉廉君の安全は私が保証させてもらいます。」
「安全については、承知しました。」
「三華月様。有難うございます。」
「さすが、僕の心の友だ。土竜君。有難う。」
話しが噛み合わない。
少年神官と土竜は、伝説の聖剣を求める冒険へ行くとでも思っているのかしら。
土竜からは、商業ギルドの迷宮主を辞め、悲壮感のようなものが感じられないことに違和感を覚えていた。
そう。逆に気分を上げているように見えるのだ。
実際に目の前では、少年神官とハイタッチを交わし、和気あいあいとしている。
地上世界での生活を無茶苦茶楽しんでいるのかもしれないという疑惑が生まれてきた。
少年神官は、続けて土竜から旅の計画を楽しそうに聞いている。
私に付いてくることが決定してしまったのかしら。
伐折羅海賊団員を捕らえたら、またペンギンの元へ送り届けることになるかもしれないし、少年神官も役にたつかもしれないか。
昼間からオープンカフェで次元回廊の掘削ルート図面を作成していた土竜が頭を下げてきた。
「三華月様。これより伐折羅海賊団の基地まで、次元回廊の掘削を開始します。」
オープンカフェテラスの中央に、突如木製扉が現れた。
周りにいる者達からは、その扉が見えていないようで騒ぎが起きるようなことはない。
開いた扉を土竜に続いて入っていくと、その中は明るい照明に照らされた大きな空間になっていた。
役割がそれぞれ異なる掘削機がたくさん置かれている。
世界の記憶『アーカイブ』に記録されている、古代技術で使用されていたという最新機器という同じ代物だ。
その掘削機を見た少年神官が早速、土竜が手に持っているスコップについてツッコミを入れてきた。
「おいおい土竜君。その手に持っている最強のスコップとやらで、トンネルを掘っていくんじゃ無いのかよ!」
「廉廉君。この最強のスコップでもトンネルは掘れないことは無いけど、凄く時間がかかってしまうんだ。」
「確かに時間がかかりそうだね。」
「この掘削機シリーズは、闇商人から購入したものなんです。」
「土竜君って、何気にすげえじゃないか。」
「私は、三華月様の下僕にして、A級相当の魔物ですから。」
感心している少年神官に対して、土竜は口角を上げながら指でピースサインをつくっている。
そして、昼間から書いていた図面を両手に広げると同時に、掘削機の1台が動き出し、岩盤の破砕を開始した。
掘削機のアームが突き刺さった岩盤に亀裂が入っていくが、その音はそれほどでもない。
騒音を抑える工夫がされているようだ。
作業の開始しされると、少年神官はテーブルの上に置いてあったティーセットにお茶をつくり始めている。
土竜と少年神官は、緊張感がなく何だか凄く楽しそうにしているように見えていた。
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