ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』

samishii kame

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第133話 摩凛は放流させるべき

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真っ青な空に白い雲が流れていた。
入り江から気持ちよい潮風が吹き抜けて心地よい良い波の音が聞こえてくる。
真っ白な砂浜が、太陽の陽射しが反射して眩しい。
日光浴をしたり、読書をしたりして優雅な時間を過ごしたくなるように思える場所だ。
伐折羅提督と一緒にいる迷企羅が、コバルトブルーの海に浮かんでいる海賊船へ小舟に乗り近づいていく。
その姿を見た少年神官の廉廉は、砂浜に両手をつきうなだれている安定の姿があった。
迷企羅に対してファンであるとアピールをしているが無視され落ち込んでいるのだ。
私は、ばっちりメイクをした猛獣使いビーストテイマーの摩凛と対峙していた。
その女の背後には、七武列島を食料不足に陥れている元凶と思われるイルカの姿をしたB級相当の魔物達がいた。
その数100個体以上。
入り江の海面にも多くその姿が視認できる。
摩凛は、数十km単位の規格外といえる規模のフィールドを展開させ、通常地上世界で生きることが出来ない魔物へ加護を与えていたのだ。
ばっちりメイクをしたポニーテールの女は、友達と呼ぶイルカちゃんが魔物であることを知って体を硬直させていたが、再び笑顔を取り戻して話しかけてきた。


「聖女さんの言う通り、イルカちゃん達が魔物だったとしても私の友達であることには変わりありません。」


その言葉のとおり、魔物が友達であることは問題ない。
私の手元にも、メタルスライムであるとか、土竜のような下僕となった魔物がいる。
奴等は人に害をおよぼす意志はない。
とはいうものの性格には問題があるのも事実ではある。
摩凛であるが、私の反応を気にする様子もなく、延々と気持ちよく話しを続けていた。


「イルカちゃん達は優しい子なのです。どうか私を信じて下さい。私はイルカちゃん達の国をつくり、みんなに受け入れてもらうように頑張りたいと思っています。」


イルカ擬き達のように外来種が外から入ってくると、そこの生態系は崩れてしまうことが分からないのだろうか。
何にしても摩凛は、メンタルの強い迷惑系の女だ。
この女からは、やらかしてしまうにおいがする。
私からすると、神託により処刑対象となり信仰心を贈呈してくれる可能性を秘めた有難い存在だ。
イルカ擬き達さえ排除出来れば、七武列島の食料不足を解決できる。
そう。神託を果たすために摩凛を処刑する必要はないということだ。
うむ。今後のことを考えると、私にとって、摩凛は世界へ放流しておく方が望ましいだろう。
ばっちりメイクをした女を説得できれば、全てが丸く収まる。
はい。そのイルカ擬きの魔物達が地上世界の生態系を崩していることを理解認識してもらいましょう。


「摩凛さん。あなたに友達であるイルカ擬きちゃん達について、お伝えしたいことがあります。」
「聖女さんもイルカちゃんの可愛さが分かってもらえたのですか。」
「いえ。そういうことではなくて、そのお友達が海の生態系を崩している可能性があるという話しです。」
「え。生態系ってなんですか?」
「そこからですか。生態系とは、生態学的な単位として相互作用する総体のことです。」
「分かるように説明してください。」
「分かりませんか。生態系の言葉の意味は重要ではないので、理解しなくても大丈夫です。つまり、あなたの友達である魔物は、地上世界にとって外来種となるということです。」
「外来種って何ですか?」
「…。つまり、その世界に生息していない魔物を持ち込み管理しないと、弊害が出てしまうわけです。」
「聖女さん。もしかして、わざと分かりにくく説明をされていませんか。」
「…。とにかく、その魔物達は私が一掃させてもらいますので、邪魔しないで下さい。」


私は連射モードで運命の弓を召喚します。
白銀に輝く弓が姿を現すと、摩凛の背後に控えていたイルカ擬き達が一斉に威嚇を開始し始めてきた。
波の音が聞こえる砂浜に、けたたましい鳴き声が共鳴する。
足元にいる土竜は、自身の背丈よりも長いスコップを構えていた。
月の加護を受けられないものの、B級相当のイルカ擬き100個体ごときが、私の相手になるはずがない。
緊張感が高まっていく。
空気を読めない摩凛は、ながいため息を吐き、首を左右に振りながら持論を話し始めてきた。


「私は、イルカちゃんが魔物だったとしても、人と共存する世界を創っていきたいと思っています。」


生態系が崩れているとは、それは共存が出来ていないといこと。
摩凛の理想は矛盾している。
イルカ擬き達の方は、摩凛の演説に戸惑い、私へ対決姿勢をとるべきか悩んでいるようだ。
笑顔を浮かべている摩凛へ、再度建設的な提案をしてみた。


「魔物と一緒に暮らしたいのなら、湖の広がっている迷宮内に摩凛あなたの国を造ってみてはいかがでしょうか。」
「どうして私が迷宮で暮らさなければならないのですか!」


そもそも魔物は、ダンジョンの住人だからだよ!
摩凛との会話は、どこまで行っても平行線で決して交わる気がしない。
説得は断念し、実力行使してイルカ擬き達を排除させてもらうことにしましょう。
その時、何故か摩凛が気持ち良さそうに歌を唄い始めた。
その歌は上手なのではあるが、聞きたくなるほどのものかと言えばそれほどでもない。
というか、何故、歌い始めたのかしら。
何にしても、摩凛に行動については無視していいだろう。
私は運命の矢を連続でリロードを開始します。
その時である。
イルカ擬き達が一斉に鳴き始め、結界を展開させてきた。
足元にいた土竜がかけていたサングラスを触りながら、その結界について分析を解説し始めた。


「三華月様。私のS級サングラスが、その結界について分析を開始しています。」
「確か土竜さんのそのサングラスには、対象のステータスを図る能力があると言っていたかしら。」
「はい。イルカ擬き達は鳴き声をシンクロさせ、防御値をS級相当にまで引き上げているようです。」
「S級相当の防御値ですか。」
「三華月様が召喚した連射モードの弓では、あの展開させている障壁を突き破るのは難しいかもしれないです。」


連射モードは至近距離から敵を殲滅することに適しているが、貫通性はそのぶん劣る。
スナイパーモードならS級相当の障壁を貫くことは出来るだろう。
だが100個体以上いる魔物達が一斉に突撃してきたら対応は難しい。
少年神官の防御については土竜にお願いできれば問題ないところか。
足元にいる土竜へ視線を送った。


「私はイルカ擬きの背後に回り込み掃討戦を開始します。土竜さんには少年神官れんれんの護衛をお任せ出来るでしょうか。」
「え、私ですか。」
「はい。よろしくお願いします。」
「超S級のヘルメットを三華月様に破壊されてしまった今の私には、あのイルカ擬きからの攻撃を凌ぐことは出来ませんよ。かぶり直しているこのスペアのヘルメットは、始まりの街の防具屋で購入する革の帽子程度と防御値しかありませんから。」
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