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第131話 それって三華月様のことでは
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抜けるような青空から降り注ぐ太陽光が、サラサラの白い砂浜に眩しく反射していた。
海賊船が浮かぶ入り江の中には、乾いた潮風が吹いている。
穏やかに揺れるコバルトブルーの海水は透き通っており、海中を泳ぐ熱帯魚達がクリアに見えていた。
太陽光にジリジリと焼かれていたサラサラの砂浜には、陸地にあげられた魚のように土竜が不規則に転がりながら飛び跳ねていた。
言ってはならない言葉を口にし、制裁鉄拳をくらい悶絶しているのだ。
S級強度を誇るという安全第一と書かれたヘルメットは破壊され、光の粒子に戻っていた。
その土竜を、九毘羅の実年齢を聞かされスクラップ状態になっていた少年神官が、必死な様子で治療をしている。
廉廉が施している治癒効果はそれなりに高く、土竜がみるみる回復していく。
両膝と両手を砂浜についたまま虚ろな目をしている土竜に足を進めなら声をかけた。
「土竜さん。『災いは、口より出でて身を破る』ということわざの意味をご存知でしょうか。」
「…。」
ダメージが残り、思考が定まっていないせいか、土竜は返事をすることが出来ないようだ。
もし、私の言葉が理解できないようなら、もう一撃、鉄拳制裁を振り下ろす必要があるだろう。
状況を察知した少年神官が、治癒を続けながら土竜の代わりに返事をしてきた。
「三華月様。土竜君に代わりに僕からお答えします。『災いは、口より出でて身を破る』とは、軽率な判断をしたり配慮のない言葉を口にすると、やがて自身を苦しめる原因となるものを招き寄せるという諺です。僕から土竜君によく言い聞かせておきますので、ここはその矛を収めてもらえないでしょうか。」
神官用の真っ黒な黒衣を着ている簾簾が、深く頭を下げてきた。
そういうことでしたら、制裁はここまでにしておきましょう。
少年神官の言葉を聞いていた土竜が、どこからともなく出してきた、色違いのヘルメットをかぶり直している。
そして、簾簾に体を支えながら立ち上がてくると、定番となるふざけた言葉をゆっくり口にしてきた。
「もしかして、私。また何かを、やっちゃいました?」
申し訳なさそうにしながら頭を下げている土竜を見ると、ふざけている様子ではないのだろう。
何に対して反省をしてよいのか、真剣に悩んでいる感じがする。
そんな土竜に対して少年神官が、慌てた様子で言葉を捲し立ててきた。
「土竜君。どういうつもりで、そんな言葉を言っているんだ!」
「そんな言葉とは、どういうことですか?」
「土竜君が口にした『俺、また何かやっちゃいました』という意味は、失態や粗相をやらかしたという意味ではないんだぞ。」
「え。違うのですか?」
「実際の意味は、圧倒的な能力を持っているがゆえに、その強さで周囲を驚かせたり、呆れさせたりしてしまった時に、わざと使うふざけた言葉なんだ。」
「すいません。全く理解が出来ません。だが、私は言葉のチョイスを誤っていたことは分かりました。以後、気をつけます。」
言葉の選択は誤ってはいない。
だが、ふざけた者がよく使う定番の言葉なため、相手にふざけていると誤解を与えてしまう危ない言葉なのだ。
さて、もう一人の問題児である少年神官であるが…。
あなたは一体誰のファンなのか、ここではっきりさせてもらいます。
「少年神官。あなたに質問があります。」
「僕ですか。」
「先程は九毘羅の大ファンと言っておりましたね。」
「ああ。そうでしたっけ。」
「その前は亜弐羅の古参ファンとアピールしている姿を見ておりました。」
「ああ。思い出しました。あいつ等のことですか。」
少年神官の顔から感情がなくなっていく。
口が真一文字に閉じられ、目の焦点が動かなくなった。
とても嫌なことを思い出しているようだ。
そして、罪人が罪を告白するような感じで、抑揚の無い一定のトーンで言葉を続けてきた。
「信じていた亜弐羅は僕を裏切ったんです。僕は被害者じゃないですか。」
「簾簾。あなたが勝手に信じていただけではありませんか。」
「所詮、三華月様には、僕達オタクの気持ちなんて分かるはずないんですよ。」
「九毘羅についても、態度があからさま過ぎでした。」
「勘弁して下さい。年齢が僕の守備範囲外から大きく超えていると言いますか、母ちゃんより遥か年上なんですよ。詐欺ですよ、これは。三華月様には分かってもらえないのですかね。」
恋愛対象でなくなった女を庇わないその行為は、男としては間違っていない。
とはいうものの、公明正大なはずの神官が言う言葉ではないだろう。
この話しの流れだと、伐折羅提督の3人目の姫となる迷企羅に対しても、猛アピールしてくるだろうと予測がつく。
向こうを見ると、九毘羅は箒に乗り逃走を図っていた。
力関係をその身で感じても行動なのだろう。
その時、少年神官が神妙な顔つきで、ボソリと悩みを呟いてきた。
「三華月様。今のままの僕では駄目な気がするんです。」
「はい。かなり駄目な生き物だと思います。」
「亜弐羅に裏切られて、そして九毘羅に騙されてしまいました。」
「あなたは一体何の話しをしているのですか?」
「つまり、迷企羅姫ともうまくいかないというフラグが立っているような気がするんです。」
「はい。うまくいかないフラグでしたら、最初から立っておりますよ。」
少年神官が迷企羅とうまくいく要素など始めから無い。
うまくいくとは、一体どういう内容なのか少し気になるところではあるが、聞かない方がいいだろう。
というか、やはり迷企羅にアプローチをするつもりなのか。
土竜が、砂浜にしゃがみ込んでいる少年神官の背中をさすりながら、意味不明なアドバイスを始めてきた。
「少年神官君、『俺様TRUEE』になりなさい。」
「俺様TRUEEだと。」
「ハーレム王になりたいのならば、俺様TRUEEになるのが定番なんです。」
「土竜君は、こんな僕でもハーレム王になることが出来るって言うのか。」
「はい。この世には何でもの定型ルートがあるんです。」
「土竜君。その話しを詳しく聞かせてくれ!」
少年神官の目が血走っている。
聖職者にも関わらず、ハーレム王になりたいのか。
回廊を掘り進めている際、聖職者が読む本を真面目に読んでいたあの姿は幻だったのかしら。
そもそも、借金王で、女に対して問題発言をしていた土竜の話しがまともなはずがない。
その土竜が少年神官へ諭すような言葉を続けてきた。
「俺様TRUEEとは、神に横柄な態度をとることから始まります。」
「神に横柄な態度だと!」
「そして、手にいれた最強の能力で、盗賊や貴族達を圧倒的な力にてオーバーKILLするのです。」
「それって、三華月様のことじゃないか!」
少年神官と土竜が、死んだ魚を見るような目で私を見つめている。
何故、そこで私が出てくるのだ。
うんこ野郎達へ横柄な態度をすることはあっても、神に対し不遜な態度を行うことはない。
盗賊や悪徳貴族がいたとしても、同族殺しに繋がるような行為はご法度だ。
オーバーKILLについては、たまにやってしまうこともある。
私を見つめていた少年神官がボソリと呟く声が聞こえてきた。
「土竜君。俺様TRUEEになるのは辞めておくことにするよ。」
「さすが廉廉君。賢明な判断だと思います。」
そんなどうでもいいことよりも、今は、砂浜の奥の林に隠れて私達を見つめている男と、2人の女について対応しなければならない。
九毘羅が逃走を図ったあたりから、3人の者達がこちらの様子を伺っていたのだ。
男は伐折羅提督で、女の1人は迷企羅で間違いないだろう。
そう。伐折羅提督と迷企羅と一緒にいるもう1人の女は誰なのでしょうか。
海賊船が浮かぶ入り江の中には、乾いた潮風が吹いている。
穏やかに揺れるコバルトブルーの海水は透き通っており、海中を泳ぐ熱帯魚達がクリアに見えていた。
太陽光にジリジリと焼かれていたサラサラの砂浜には、陸地にあげられた魚のように土竜が不規則に転がりながら飛び跳ねていた。
言ってはならない言葉を口にし、制裁鉄拳をくらい悶絶しているのだ。
S級強度を誇るという安全第一と書かれたヘルメットは破壊され、光の粒子に戻っていた。
その土竜を、九毘羅の実年齢を聞かされスクラップ状態になっていた少年神官が、必死な様子で治療をしている。
廉廉が施している治癒効果はそれなりに高く、土竜がみるみる回復していく。
両膝と両手を砂浜についたまま虚ろな目をしている土竜に足を進めなら声をかけた。
「土竜さん。『災いは、口より出でて身を破る』ということわざの意味をご存知でしょうか。」
「…。」
ダメージが残り、思考が定まっていないせいか、土竜は返事をすることが出来ないようだ。
もし、私の言葉が理解できないようなら、もう一撃、鉄拳制裁を振り下ろす必要があるだろう。
状況を察知した少年神官が、治癒を続けながら土竜の代わりに返事をしてきた。
「三華月様。土竜君に代わりに僕からお答えします。『災いは、口より出でて身を破る』とは、軽率な判断をしたり配慮のない言葉を口にすると、やがて自身を苦しめる原因となるものを招き寄せるという諺です。僕から土竜君によく言い聞かせておきますので、ここはその矛を収めてもらえないでしょうか。」
神官用の真っ黒な黒衣を着ている簾簾が、深く頭を下げてきた。
そういうことでしたら、制裁はここまでにしておきましょう。
少年神官の言葉を聞いていた土竜が、どこからともなく出してきた、色違いのヘルメットをかぶり直している。
そして、簾簾に体を支えながら立ち上がてくると、定番となるふざけた言葉をゆっくり口にしてきた。
「もしかして、私。また何かを、やっちゃいました?」
申し訳なさそうにしながら頭を下げている土竜を見ると、ふざけている様子ではないのだろう。
何に対して反省をしてよいのか、真剣に悩んでいる感じがする。
そんな土竜に対して少年神官が、慌てた様子で言葉を捲し立ててきた。
「土竜君。どういうつもりで、そんな言葉を言っているんだ!」
「そんな言葉とは、どういうことですか?」
「土竜君が口にした『俺、また何かやっちゃいました』という意味は、失態や粗相をやらかしたという意味ではないんだぞ。」
「え。違うのですか?」
「実際の意味は、圧倒的な能力を持っているがゆえに、その強さで周囲を驚かせたり、呆れさせたりしてしまった時に、わざと使うふざけた言葉なんだ。」
「すいません。全く理解が出来ません。だが、私は言葉のチョイスを誤っていたことは分かりました。以後、気をつけます。」
言葉の選択は誤ってはいない。
だが、ふざけた者がよく使う定番の言葉なため、相手にふざけていると誤解を与えてしまう危ない言葉なのだ。
さて、もう一人の問題児である少年神官であるが…。
あなたは一体誰のファンなのか、ここではっきりさせてもらいます。
「少年神官。あなたに質問があります。」
「僕ですか。」
「先程は九毘羅の大ファンと言っておりましたね。」
「ああ。そうでしたっけ。」
「その前は亜弐羅の古参ファンとアピールしている姿を見ておりました。」
「ああ。思い出しました。あいつ等のことですか。」
少年神官の顔から感情がなくなっていく。
口が真一文字に閉じられ、目の焦点が動かなくなった。
とても嫌なことを思い出しているようだ。
そして、罪人が罪を告白するような感じで、抑揚の無い一定のトーンで言葉を続けてきた。
「信じていた亜弐羅は僕を裏切ったんです。僕は被害者じゃないですか。」
「簾簾。あなたが勝手に信じていただけではありませんか。」
「所詮、三華月様には、僕達オタクの気持ちなんて分かるはずないんですよ。」
「九毘羅についても、態度があからさま過ぎでした。」
「勘弁して下さい。年齢が僕の守備範囲外から大きく超えていると言いますか、母ちゃんより遥か年上なんですよ。詐欺ですよ、これは。三華月様には分かってもらえないのですかね。」
恋愛対象でなくなった女を庇わないその行為は、男としては間違っていない。
とはいうものの、公明正大なはずの神官が言う言葉ではないだろう。
この話しの流れだと、伐折羅提督の3人目の姫となる迷企羅に対しても、猛アピールしてくるだろうと予測がつく。
向こうを見ると、九毘羅は箒に乗り逃走を図っていた。
力関係をその身で感じても行動なのだろう。
その時、少年神官が神妙な顔つきで、ボソリと悩みを呟いてきた。
「三華月様。今のままの僕では駄目な気がするんです。」
「はい。かなり駄目な生き物だと思います。」
「亜弐羅に裏切られて、そして九毘羅に騙されてしまいました。」
「あなたは一体何の話しをしているのですか?」
「つまり、迷企羅姫ともうまくいかないというフラグが立っているような気がするんです。」
「はい。うまくいかないフラグでしたら、最初から立っておりますよ。」
少年神官が迷企羅とうまくいく要素など始めから無い。
うまくいくとは、一体どういう内容なのか少し気になるところではあるが、聞かない方がいいだろう。
というか、やはり迷企羅にアプローチをするつもりなのか。
土竜が、砂浜にしゃがみ込んでいる少年神官の背中をさすりながら、意味不明なアドバイスを始めてきた。
「少年神官君、『俺様TRUEE』になりなさい。」
「俺様TRUEEだと。」
「ハーレム王になりたいのならば、俺様TRUEEになるのが定番なんです。」
「土竜君は、こんな僕でもハーレム王になることが出来るって言うのか。」
「はい。この世には何でもの定型ルートがあるんです。」
「土竜君。その話しを詳しく聞かせてくれ!」
少年神官の目が血走っている。
聖職者にも関わらず、ハーレム王になりたいのか。
回廊を掘り進めている際、聖職者が読む本を真面目に読んでいたあの姿は幻だったのかしら。
そもそも、借金王で、女に対して問題発言をしていた土竜の話しがまともなはずがない。
その土竜が少年神官へ諭すような言葉を続けてきた。
「俺様TRUEEとは、神に横柄な態度をとることから始まります。」
「神に横柄な態度だと!」
「そして、手にいれた最強の能力で、盗賊や貴族達を圧倒的な力にてオーバーKILLするのです。」
「それって、三華月様のことじゃないか!」
少年神官と土竜が、死んだ魚を見るような目で私を見つめている。
何故、そこで私が出てくるのだ。
うんこ野郎達へ横柄な態度をすることはあっても、神に対し不遜な態度を行うことはない。
盗賊や悪徳貴族がいたとしても、同族殺しに繋がるような行為はご法度だ。
オーバーKILLについては、たまにやってしまうこともある。
私を見つめていた少年神官がボソリと呟く声が聞こえてきた。
「土竜君。俺様TRUEEになるのは辞めておくことにするよ。」
「さすが廉廉君。賢明な判断だと思います。」
そんなどうでもいいことよりも、今は、砂浜の奥の林に隠れて私達を見つめている男と、2人の女について対応しなければならない。
九毘羅が逃走を図ったあたりから、3人の者達がこちらの様子を伺っていたのだ。
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