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しおりを挟む「な、なにして、!?」
『なにしてるの』という短い言葉を、俺は最後まで言いきることができなかった。
…………なぜなら。
「っ、んぅ!?」
薫にキスをされたからだ……。
「ん、っ、ッ、ふ」
前置きなどなく、ベッドに押し倒された瞬間に唇で唇を塞がれた。突然のことに俺は驚いて、口を塞がれたまま言葉にならない声を上げ続ける。しかしキスの最中の息継ぎの方法など分かるわけもなく、ただただ呼吸が苦しくなるという結果だけで終わってしまった。
「ーん!っ、ーんぅ!」
だけど薫は、そんな哀れな俺をまだ解放してくれる気はないらしく、その間も行為はエスカレートしてきて俺の上唇を熱い舌先でベロリと舐めてきた。慣れない感触に怯えて、俺はギュッと目を瞑って唸ることしかできない。気持ちいいとかそういうのは一切分からない。……ただ怖いんだ。
そうやって薫に与えられる感覚に身体を縮め込ませていると、頭上から薫が鼻で笑ったことに気付く。
「か、おる?」
「はっ。情けねえ顔」
「……そ、そんなの当たり前だろっ」
無表情をのままの親友に急に押し倒されてキスをされれば、誰だってこんな状態になってしまうに決まっている。俺がこんな状態になったのも間違いなく薫のせいだというのに、それでもなお酷いことを言う薫に俺は泣きそうになりながら文句を言ってやった。
「なんでこんなことするんだよっ」
「……さあ。何でだと思う?」
「わ、分かんないから聞いてるんだけどー?」
質問を質問で返さないで欲しい。
「少しは考えてみろよ、このおめでたい頭で」
「……っ、ぅ」
意地の悪い表情を浮かべたままの薫は、俺の額にデコピンしながらそう言った。……地味に痛い。
「……お、俺のことが嫌いだから?」
「違う」
「嫌がらせ?」
「違う」
「お、怒ってるから?」
「まあ。それは間違っちゃいねえな」
『それが答えじゃねえけど』と言うと薫は、先程デコピンをしてきた俺の額にチュッと軽くキスをしてきた……。
……その行動は、まるで…………
慈愛に満ちていて。
「……俺のことが、好きだから?」
自意識過剰なんかではなく、薫の行動からそう感じ取るしかできなかった。
確かめるように恐る恐るとゆっくりと問えば、薫はニヤリと笑ってこう言った。
「分かってるじゃねえか」
「か、おる……、んっ!?」
……そしてまた軽くキスをされた。
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