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11、突然の別れ
マリエッタとジュリエットは授業をさぼっていたので、滞在期間が延長になった。本人たちは気にしておらず、伯爵に会えるからむしろ喜んでいた。
私はカリキュラムがすでに済んでいるので、新しく来た令嬢のサポートをしたり、自分で学びたいことを自由に受講したり、申請していた。
家事の当番は滞在義務になっている。それ以外は自由で、修道院には図書館もあり、そこで薬やモンスター、武器の知識を仕入れていた。なぜそんなことを学ぶのかというと、ここに治療に来るハンターたちから話を聞いて、ハンターは儲かるのが分かったからだ!
魔獣から取れる魔鉱石は、とても高価で、グラムで取引される。大きいものだと金貨一枚から、小さい魔獣でも銀貨三枚にはなる。メイドの給料は銀貨一~二枚の間だ。一人で生きていくならいい仕事だ。年を取ったら、薬草や薬を作って売ればいい。指定の薬でなければ許可はいらない。
自分にもできそうなので、もしものために本格的にハンターになる準備を考えていた。家に帰って私がハンターになるって言ったら、お父様は腰を抜かすだろうな。まあ、お父様が私がハンターになるのを許すとは思えないので、それは最後の手段だ。
最近、なんかむちゃくちゃ令嬢が増えたような気がする。定員20名なのだが、今満員なのだ。初めに嫌味を言った令嬢もまた来ていた。
新しく来た令嬢たちが玄関で話をしていた。私は案内のために出向いていた。
「ここには、ピニオンとかいう悪役令嬢の墓があって、その幽霊が出るそうよ」
誰よ! そんな噂を流したのは!? 頭が痛い……。私は頭に手を置いて言った。
「私がピニオンです」
「ぎゃー!! 出た!!」
「えっ!? ちょっと!」
令嬢が泡を吹いて倒れた。こんなリアルな幽霊がいるわけないでしょ! 見たことないけど。
「あははは!」
ヘミがそれを聞いて笑った。休憩室でヘミとレニーに、その時のことを話した。
「もうー、笑い事じゃないわよ」
「そうですよ。貴族の世界は怖いです。働きに行かなくて良かったです」
レニーは働き口で迷っていたようだ。メイドの仕事はここより大変だけど、お給料と休みがある。修道院は居住の場なので、お手当が少しもらえるだけで、基本休みはない。言えばもらえるけど。
孤児院では養子にもらわれて行く子もいるけど、いい家じゃなければ、苦労が多い。貴族の世界だからいいことばかりじゃない。
倒れた令嬢からは嫌がられたので、私は、それ以外の令嬢たちの案内役を続けた。令嬢たちが来た目的、それは、
「ここには、カイゼル様が来るそうよ」
「実は私もそれを聞いて、ここに来たの!」
「社交界でもめったにお会いできないですからね。お近づきになりたいものですわ」
なるほど。ここが伯爵に会うための穴場スポットになっていた。めったに見られないから珍獣と同じだな。
伯爵はまた怪我をして、私のところへ来たので、二人で診療室まで行く。その後ろを令嬢たちが遠巻きについて来た。
手当ての前に、いつものように悪魔を祓ってくれた。
「社交界では、お前の死亡説が流れていたぞ。ここに墓があるらしい」
「あー、はいはい」
伯爵まで知っているとは……恥ずかしい。
診療室のドアは空いている。私は、令嬢たちに見られながら手当てをする。重圧を感じる……。伯爵は不愉快そうだった。私も黙っていた。
救急箱を片付けて、休憩室でお茶の準備をしていると、令嬢たちがやってきて、
「私が持って行ってもいいですか?」
「いいえ、私が!」
「……」
私は無視をしてそのまま持って行った。
「何よ、あの平民!」
「あの人は平民ではなくて、ピニオン子爵令嬢ですよ」
「まあ! あの死んだと噂の! 同じ名前だと思っていましたが」
「通りで意地悪な!」
「なんで伯爵様は、あんな悪役令嬢に世話をさせるのでしょう」
私は名前を言っただけだったから、令嬢たちには平民だと思われていたのか。出戻りの令嬢が言う。
「私たちの手を煩わせないためですって」
「まあ、なんてお優しい!」
「でもこれだと、お近づきになれませんわよね」
「本当!」
「お見送りをしましょう!」
『賛成!』
応接室で伯爵にお茶を出した。伯爵は外から聞こえる声や音を気にしていた。
「なんか騒がしいな」
「最近みんな、伯爵を目当てでここに来てるんですよ」
「何!?」
伯爵は驚いて、一瞬顔を歪めた。それから何事もなかったように、静かにお茶を飲んだ。ティーセットはもちろん一人分だ。二つあったら、もっとひどく言われただろう。私は横に立っていた。
「ごちそうになった」
伯爵はそう言うとすくっと立った。カバンからお菓子を取り出すと、私の頭の上にポンと置いた。私は手で支える。
「この国の王室御用達のものだ」
「貴重なものをありがとうございます!」
私は大袈裟に喜んだ! うれしい! 首都のお菓子だ。
「元気で」
「はい?」
伯爵はそう言うと、立ち去った。私はお菓子を抱えた。なんかいつもと違う。外から令嬢たちの黄色い声が聞こえる。令嬢たちよ、どうせなら片づけを手伝ってくれ。
それから伯爵はぱたりと来なくなった。
それから1か月ぐらいが経った。ヘミと掃除が終わって、バケツとモップを持って廊下を歩いていた。
「伯爵様、来なくなりましたね」
「うん」
(ピニーも元気ないな)
来なくなると寂しい気もする……。掃除道具を片付けて、自室に戻る途中、猫がすり寄って来た。
「ニャオ~ン」
「あ、サルティーまだいたの?」
悪魔猫だけはそのままいた。その後、出戻りの令嬢も帰っていき、令嬢たちの数も減って、前の静けさに戻っていった。
行商人がやって来たので、私もお菓子を補充するためにのぞきに行った。節約しているので他の物は買わない。
来月は感謝祭の月で、それにちなんだものが売られていた。感謝祭の赤くてきれいなイラストのカードがあったので、手に取ってみた。
ここに来て5か月が過ぎていた。私はお父様に、一度も手紙を送っていなかった。すぐに送ると、帰りたいからだと思われるかと思って結局送らなかったのだ。
感謝祭のカードを送ってみようか。カードと切手を買って、父に送った。
感謝祭前、ヘミやトルファは実家で新年を迎えるために帰っていった。令嬢たちも一時帰宅する。ここに来てから、一番の静けさになった。
ここは高地なので、やっぱり寒い。お父様からカードが来ることはなかった。
私はカリキュラムがすでに済んでいるので、新しく来た令嬢のサポートをしたり、自分で学びたいことを自由に受講したり、申請していた。
家事の当番は滞在義務になっている。それ以外は自由で、修道院には図書館もあり、そこで薬やモンスター、武器の知識を仕入れていた。なぜそんなことを学ぶのかというと、ここに治療に来るハンターたちから話を聞いて、ハンターは儲かるのが分かったからだ!
魔獣から取れる魔鉱石は、とても高価で、グラムで取引される。大きいものだと金貨一枚から、小さい魔獣でも銀貨三枚にはなる。メイドの給料は銀貨一~二枚の間だ。一人で生きていくならいい仕事だ。年を取ったら、薬草や薬を作って売ればいい。指定の薬でなければ許可はいらない。
自分にもできそうなので、もしものために本格的にハンターになる準備を考えていた。家に帰って私がハンターになるって言ったら、お父様は腰を抜かすだろうな。まあ、お父様が私がハンターになるのを許すとは思えないので、それは最後の手段だ。
最近、なんかむちゃくちゃ令嬢が増えたような気がする。定員20名なのだが、今満員なのだ。初めに嫌味を言った令嬢もまた来ていた。
新しく来た令嬢たちが玄関で話をしていた。私は案内のために出向いていた。
「ここには、ピニオンとかいう悪役令嬢の墓があって、その幽霊が出るそうよ」
誰よ! そんな噂を流したのは!? 頭が痛い……。私は頭に手を置いて言った。
「私がピニオンです」
「ぎゃー!! 出た!!」
「えっ!? ちょっと!」
令嬢が泡を吹いて倒れた。こんなリアルな幽霊がいるわけないでしょ! 見たことないけど。
「あははは!」
ヘミがそれを聞いて笑った。休憩室でヘミとレニーに、その時のことを話した。
「もうー、笑い事じゃないわよ」
「そうですよ。貴族の世界は怖いです。働きに行かなくて良かったです」
レニーは働き口で迷っていたようだ。メイドの仕事はここより大変だけど、お給料と休みがある。修道院は居住の場なので、お手当が少しもらえるだけで、基本休みはない。言えばもらえるけど。
孤児院では養子にもらわれて行く子もいるけど、いい家じゃなければ、苦労が多い。貴族の世界だからいいことばかりじゃない。
倒れた令嬢からは嫌がられたので、私は、それ以外の令嬢たちの案内役を続けた。令嬢たちが来た目的、それは、
「ここには、カイゼル様が来るそうよ」
「実は私もそれを聞いて、ここに来たの!」
「社交界でもめったにお会いできないですからね。お近づきになりたいものですわ」
なるほど。ここが伯爵に会うための穴場スポットになっていた。めったに見られないから珍獣と同じだな。
伯爵はまた怪我をして、私のところへ来たので、二人で診療室まで行く。その後ろを令嬢たちが遠巻きについて来た。
手当ての前に、いつものように悪魔を祓ってくれた。
「社交界では、お前の死亡説が流れていたぞ。ここに墓があるらしい」
「あー、はいはい」
伯爵まで知っているとは……恥ずかしい。
診療室のドアは空いている。私は、令嬢たちに見られながら手当てをする。重圧を感じる……。伯爵は不愉快そうだった。私も黙っていた。
救急箱を片付けて、休憩室でお茶の準備をしていると、令嬢たちがやってきて、
「私が持って行ってもいいですか?」
「いいえ、私が!」
「……」
私は無視をしてそのまま持って行った。
「何よ、あの平民!」
「あの人は平民ではなくて、ピニオン子爵令嬢ですよ」
「まあ! あの死んだと噂の! 同じ名前だと思っていましたが」
「通りで意地悪な!」
「なんで伯爵様は、あんな悪役令嬢に世話をさせるのでしょう」
私は名前を言っただけだったから、令嬢たちには平民だと思われていたのか。出戻りの令嬢が言う。
「私たちの手を煩わせないためですって」
「まあ、なんてお優しい!」
「でもこれだと、お近づきになれませんわよね」
「本当!」
「お見送りをしましょう!」
『賛成!』
応接室で伯爵にお茶を出した。伯爵は外から聞こえる声や音を気にしていた。
「なんか騒がしいな」
「最近みんな、伯爵を目当てでここに来てるんですよ」
「何!?」
伯爵は驚いて、一瞬顔を歪めた。それから何事もなかったように、静かにお茶を飲んだ。ティーセットはもちろん一人分だ。二つあったら、もっとひどく言われただろう。私は横に立っていた。
「ごちそうになった」
伯爵はそう言うとすくっと立った。カバンからお菓子を取り出すと、私の頭の上にポンと置いた。私は手で支える。
「この国の王室御用達のものだ」
「貴重なものをありがとうございます!」
私は大袈裟に喜んだ! うれしい! 首都のお菓子だ。
「元気で」
「はい?」
伯爵はそう言うと、立ち去った。私はお菓子を抱えた。なんかいつもと違う。外から令嬢たちの黄色い声が聞こえる。令嬢たちよ、どうせなら片づけを手伝ってくれ。
それから伯爵はぱたりと来なくなった。
それから1か月ぐらいが経った。ヘミと掃除が終わって、バケツとモップを持って廊下を歩いていた。
「伯爵様、来なくなりましたね」
「うん」
(ピニーも元気ないな)
来なくなると寂しい気もする……。掃除道具を片付けて、自室に戻る途中、猫がすり寄って来た。
「ニャオ~ン」
「あ、サルティーまだいたの?」
悪魔猫だけはそのままいた。その後、出戻りの令嬢も帰っていき、令嬢たちの数も減って、前の静けさに戻っていった。
行商人がやって来たので、私もお菓子を補充するためにのぞきに行った。節約しているので他の物は買わない。
来月は感謝祭の月で、それにちなんだものが売られていた。感謝祭の赤くてきれいなイラストのカードがあったので、手に取ってみた。
ここに来て5か月が過ぎていた。私はお父様に、一度も手紙を送っていなかった。すぐに送ると、帰りたいからだと思われるかと思って結局送らなかったのだ。
感謝祭のカードを送ってみようか。カードと切手を買って、父に送った。
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