おデブだった幼馴染に再会したら、イケメンになっちゃってた件

実川えむ

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第11章 待っていられなかった私と人気俳優の彼

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 自分で決めてたこととはいえ、それでも早い時間の飛行機にしたことが今さらに悔やまれる。こんなに離れがたくなるなんて。たぶん、遼ちゃんも同じ。そして同じような顔をしてる私がいる。

「今度は、遼ちゃんの部屋に行く。」
「うん」
「次は、ちゃんと連絡してから来るから」
「うん」
「だから、浮気しちゃダメだよ」
「クスッ、うん」
「……最初の結婚記念日に、一緒にいられてよかっ!?」

 私の言葉が言い終わらないうちに、ギュッと抱きしめてられた。


 空港で見送ってくれた遼ちゃんの左手の指輪が、輝いていた。
 あの指と、私の指は繋がってる。そう思えたから、私は前に進める。





 帰国すると、山のような仕事が待っていた。
 確かに、有給消化的にぶっこんじゃった自分も悪い。
 実際、たいしたお土産も買ってこれなかったし(買う暇なかったし)、そこは労働で返さなくちゃ、とも、思うけど。

 ……ちょっと、多すぎでしょ!

 というか、笠原さんの仕事、私に丸投げって何!?
 みんなして、ニヤニヤしながらも、働け~! 働け~! というオーラが半端ない。

 ――イジメ?

 真面目にそう思ってしまうところだ。





 そして、あっという間に春の声が聞こえてくる季節になっていた。
 そう、笠原さんの山ほどの仕事の無茶ぶりのおかげで、遼ちゃんに会えなくて寂しいなんて思う暇もないくらいだった。
 ようやく、落ち着いて、次はいつ会いに行こうかな、と思う余裕ができた頃。

 ――身体の調子がおかしくなった。

 なんだかだるいし、眠くなることが増えた。春眠暁を覚えず、かな、と単純なことを思っていたら、なんだか胃がムカムカして、吐き気をもよおすことが増えた。
 そういえば、あまりの忙しさに、気にしてなかったけど、生理が遅れてたことに気が付いた。

 ――まさか。

 仕事の帰り道、ドラッグストアで妊娠検査薬を買ってきた。ドキドキしながら、確認してみた。

 判定は、陽性。

 それでも念のため、と、初めての婦人科での検診を受けてみた。

「おめでとうございます。妊娠三か月です」

 よく、ドラマなんかで聞くセリフが、私の身にもふりかかってきた。
 最初に沸き上がった気持ちは正直に『うれしい』だった。
 予定外で予想外だったけど、私の身体に遼ちゃんと私の子が宿ってる。そう思うと、幸せな気分になった。
 でも、すぐに冷静な私が下りてきて、『どうしよう』の気持ちが、吹き荒れた。
 仕事のこともそうだけど、まだ結婚の報告だって上司にはしてないし、それに、まだ留学の期間が残ってる遼ちゃんにも、言えない。

 ――彼は、戻ってくれば、人気のある俳優なんだもの。

 私のことよりも、遼ちゃんのことが心配になった。
 病院からの帰り道、最初に連絡をしたのは、寺沢さんだった。
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