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守護霊様は

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 高校時代、私のような未熟な半端モノとは違い、何倍も強い霊感を持つ人がいて、その子に「守護霊に女の人がいるね」と言われた事がある。

 当然私も守護霊がいるのは分かっていた。
 中学生の時、霊の集合体である黒いモヤから救ってくれたのが守護霊だったし。
 
 だけど女の人だなんて、何かピンとこなかったし、少し意外な感じがした。それは今現在もそうで、本当に女の人がいるのかな? と思うほど、あまりその人の気配が感じられないのだ。

 というのも、私の目の前に現れるのはいつも男の守護霊だった。




 その人は聖職者で、黒い服を着たスラっとした体型の人だった。今まで二度ほど姿形を目撃している。

 遭遇した時はなんだか不思議な感じだった。
見ても怖い気持ちになんかならなくて、まるでその人が自分自身みたいな、自分の一部のように感じるのだ。他人という気が全くしなくて。

 最初に見たのは私が結婚する少し前の事だった。

 体育座りでウツラウツラしている所に横からスッと現れたその人は、私の手錠をガチャッと外し、そのまま前を横切り消えてしまった。

 けして寝ぼけてたんじゃない。
 横から現れた時点で私はハッとなったのだし、私の前を横切って消えるまで、しっかりこの目で動きを追っていたのだから。

 何で私に手錠がかけられていたのか最初は謎だった。けれどその後、私は何となくその事の意味が分かったのだ。

 ――――卒業と解放。

 自然に頭に浮かんだのがこれだった。
 大雑把な解釈だが、要は前世での何らかのカルマが解消した事と、今世で取り組むべき課題を一つやり終えたという、そんな知らせみたいなものだった。そしてそこには今後はまた新たな課題(ステージ)へ移る、そんな意味合いも含まれていて……。
 実際、結婚してからの私はこれまた困難な難しい課題に取り組む事になってしまい、苦痛でずいぶん魂が擦り減った。全く本当にイヤになる。
 

 それはそうと守護霊様だが、二度目に会ったのは結婚してから二年ほど経った頃だった。

 私は結婚しても仕事は続けていたのだが、ある日の事、あろう事か職場で濡れ衣を着せられてしまい、そのまま退職に追い込まれた。

 いやぁ、あの時の辛さったら……。
 
 その時ふと、冤罪とか、なんだか前世でも同じ様な目にあった気がして、また同じ事の繰り返しだと勝手に言葉も浮かんできて……。異常なほど気持ちが高ぶってしまい、余計に心が痛くて仕方なかった。
 悲しくて悲しくて、家に帰ってから私は泣き叫んでは号泣し、ベットに潜り込んではまた泣いて……。

 そんな時現れたのが守護霊だった。例の聖職者である守護霊様は、また傍からスッと現れては私に毛布をかけてくれた。
 本当にその存在自体が優しかった。慰められてるような感じがして、実際それでだいぶ心が落ち着いた。

 そんな訳で、私の前に現れるのはいつも男の守護霊様だ。でも何年か前にメール鑑定してもらった別の霊能者さんによると、やっぱり守護霊は女の人だと言っていて……。

 これってあれかな? メインの守護霊様は女の人で、その人は絶対に私に見られてはいけないというシステムだったりするのだろうか?
 そしてあの聖職者の男の人は補助霊とか指導霊とかいうやつで、その人は姿が見えても構わないと……?

 分からん。守護霊システムがよく分からん。




 余談だが、あの濡れ衣事件の一件以降、私は妙に【冤罪】というものが気になるようになってしまった。何か悔しさとか苦しさ悲しみが魂の記憶に触れるのだ。
 本当に許せないし、例えドラマだったとしても冤罪のシーンを見てしまうと自分の事のようにカチッと怒りのスイッチが入ってしまう。

 あと、それに関連して言えば、友人の言う事だけを聞いてこっちを非難してくる人にも腹が立つ。

 実際、そういう経験を今まで何度もしているのだが、誰かと喧嘩や口論になった時、周りは大抵自分の友達の方を、仲の良い方を、好意を寄せる女の子の方を一方的に信じるのだ。
 もしその友達が嘘を言っていたら? そのコが嘘泣きだったとしたら? こっちはいとも簡単に悪人に仕立て上げられてしまう訳で……。

 本当に本当にやるせない。

 片方だけの意見を聞いて悪と判断するその人を私は逆に軽蔑するし、どんなに親しい人だとしても私は意見を鵜呑みにしない。

 濡れ衣を着せられる悔しさを知っているから同じ事はしたくないし、それは誰かの事を書いた記事やニュースにしてもそうで、見聞きする全てが真実だとは思わない。
 ちゃんと自分の目で見て確かめてから物事を判断するようにしている。
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