夢世界(オルト=フィーリア)の救世(くぜ)巫女

志野木 英里

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夢見る少女の始まりの物語

第3話

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  入り込む陽の光と鳥のさえずりによって重いまぶたをゆっくりとあける。今見たものは何だったのか……ただの夢にしてはアメリアの夢を見る感覚と近いがかといってそれは全く異なっていた。光が――オルフィリアと名乗ったモノが言っていたこと……あれはどういうことなのか全くわからない。

 「それにしてもオルフィリアってどこかで……」

 「璃乃亜りのあ~!おきなさ~い!もう朝よ!」

 夢のことを考えているとノックとともにお母さんが起こしに来た。時計を見ると起きてから30分以上経っていた。いけない……これ以上考えていては時間がもったいないと感じた私は返事をしてから朝の支度をし始める。


 朝食を終えて身支度も終わらせる。家を出ようとすると――

 「璃乃亜、最近危ない人が出るみたいだから早く帰ってきなさいよ?」

 「わかった。それじゃいってきます!」

 忠告を半ば聞き流して家を出る。そしていつものように学校へと足を向ける。

 通学路を半ばで差し掛かるとふとさっき聞き流したお母さんの言葉が頭に浮かぶ。ここ最近確かに物騒な事件が頻発しているらしいとニュースで言っていた。半狂乱状態で刃物を振り回したり、奇声を上げては暴れまわるといったまるで獣のような振る舞いをする人がいるという。世間一般ではただ頭のおかしい人だという認識のようでもちろん私もその認識で変わった人もいるのだなぁと。

 そんな風に考え事をしているとハッと我に返る。周りにいたはずの学生の姿が見えなくなっていた。近くの時計が目に入る。予鈴が鳴るまで少ししかなく、大慌てで学校に向かう。

 なんとか十分前に校門に入ることができた。息を整え教室に向かおうとしたとき。挨拶が聞こえた。

「おはよう」

 その先には高等部の生徒会長阿嶋晴あしまはる先輩。何事もそつなくこなし、容姿端麗で性格もよくて人望も厚い。そしてひそかにファンクラブが存在してるといわれている。陰から女子たちが何人かでのぞき見をしている。

「この時間帯君は見かけないが、寝坊かな?」

 爽やかすぎて私にはまぶし過ぎるどころか灼熱の太陽のような気がしてならない。

「あ~……えぇ、はい……」

 引きつった愛想笑いを浮かべて相槌を適当に打つ。今すぐここを抜け出したい。時間もそうだが、この類の人種はある意味私の天敵のようなものだからだ。

「そ、そろそろ行かないと遅れてしまうかも……」

「あ~……申し訳ないね。」

 きらびやかな笑顔を向けて寝坊の注意をやさしくしてくれる生徒会長に対して苦手意識丸だしな苦笑いともとれる精一杯の愛想笑いを浮かべてそそくさと校舎内に入る。

 ――ファンクラブの女子からの視線が痛い。

 なんとか予鈴に間に合い着席して息を整える。周りは仲のいいグループで和気あいあいとおしゃべりをしている。けしてそれに対して暗い気持ちを抱くわけではない。最低限の挨拶はみんなしてくれるし返してもくれている。ただ、それ以上の関りになることはない。友達というよりはただのクラスメイト、という関係。正直うらやましくもある。でも私のこの引っ込み思案な性格上は友達作りができないことに対して鬱々しく感じてしまう。

 私の日常はいつもこう。誰かと共有できない少しばかりの秘密とこの性格でいつも孤独で無為に過ごす。なにもないまま一日が早く過ぎればいいのにと授業を聞き流すように時間が過ぎ去るのをただ待っている。足早に学校を去る。気まずさから逃げるように、そして早くアメリアに会いたいがために。

 帰路につくなか、ふと昨日見た夢を思い出す。いつものアメリアの日常ではなく何かを示唆する映像と光が懇願するようにこぼした言葉……

「あの世界を救ってくださいか……私に何ができるんだろう……」

 私はただあの世界を夢という形でしか見ることができない。かっこよく言うと観測者という立ち位置なんだろう。行く末を見守ることができるが反面それに関わることができない。干渉してはいけない存在、物語の外にいる存在。それがあの世界を夢見る私の現状なのだろう。

 もし本当にあの夢で見た映像が……アメリアが何らかの冒険に旅立ちその結末が敗北となってしまうなら正直変えたいと思う。私に本当に何かできることがあればだが……

 そんな風に考え事をしていたら気づいたら家についていた。そしていつものように入浴も食事も済ませて寝るまでにゆったりと過ごす。今日見る夢がいつもの通りアメリアのいつもの姿であるように願いながらまぶたを閉じて眠りにつく。

 だが、現実はあまりにも無常で悲しい。私が観たものはいつもの笑顔あふれる里ではなく黒煙と炎そしてがれきの山となり悲鳴が響きむごたらしい姿と化したアメリアのふるさとの姿だった。
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