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君がいないと
理科室の先生
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「伊織、授業お疲れさん! この後ラーメン食いに行かね? おごるからさ!」
「……え、何急に偽物……?」
放課後、終礼も終わってカバンに荷物を詰め込んでいると真斗からそんなお誘いを受けた。
おごるって……そんなこと今までなかったよ?
「いや、偽物って……ひどいよ伊織ちゃん。あのさ、お前朝から元気ないし、寝不足って言うには今も全然元気ないから……なんかあったんだろ、あの子と? 話聞くぜ、この恋愛マスター真斗様が!」
そう言って真っ白な歯をキラッと光らす。
眩しい奴だ、本当にありがたい。
真斗は全然長続きしないタイプだけど。
……でもやっぱり僕が、僕で解決すべき問題だから。
「心配してくれてありがとう、真斗。でも大丈夫、僕の問題だから。それにこのあとちょっと用事あるから先帰っててくれない? ごめんね、ありがとう真斗」
「……まあお前がそう言うなら。でもなあんま無理すんなよ? 本当に相談しろよ?」
「うん、ありがとう真斗。じゃあまた明日」
帰っていく真斗に手を振ると僕は目的地の理科準備室へ向かった。
理科準備室のどこか不気味な表情の扉をコンコンと叩く。
返事はないけどカギは開いてるみたいだから勝手に入ってやろう。
「失礼しまーす、田沼先生……何してるんですか、先生?」
「ん? ああ、松原君か。ごめんね、今部屋の掃除中でね」
「……手伝いますよ、大変そうですし」
本来の目的とは違うけど隅の方でほこりにまみれた田沼先生の掃除を手伝うことにした。
この部屋一人で掃除は大変だと思います。
「いやー、松原君君が手伝ってくれて助かったよ。僕一人じゃどうもしんどくてねー。」
「大丈夫ですよ、先生。これくらいクラスの一員として手伝わせてください」
「その気持ちすごく大事だよ、松原君! 誰かのために何かするって気持ちはすごい大事だから、ずっとその気持ちは持っていようね!」
「……ありがとうございます」
なんだかテンション高めの先生に褒められて、少し嬉しい気分になる。
田沼先生は本当に優しくて、色々見えてる先生だと思う……そのせいで結構舐められがちみたいなところはあるけど。
「……それで松原君はどんな大変な用事があってきたの? まさか手伝いに来てくれただけじゃないよね?」
上機嫌で棚の掃除を続けていた田沼先生が僕の方をのぞき込む。
大変って……やっぱりこの先生、ちゃんと人の事見えてる。
「すいません、田沼先生。少し用事がありまして……その星月さんの休んだ理由とかって何か聞いてたりします?」
「星月さんの事ね、松原君と星月さん仲いいもんね」
「はい……そのあんまり休む子じゃないんで心配になったというか……」
僕の言葉に田沼先生はすごく申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんね、松原君。そのお母さんから連絡はあって家にはいるみたいだけど理由とかはあんまりわかんないみたいで……ごめんね、松原君力になれなくて。こんな担任でごめんね」
「いえ、その大丈夫ですよ。その、少し気になっただけですから。だからその、自分を卑下するのはやめてください!」
そんな悲しそうな感じで来られるとこっちまで悲しくなってくる。
それからも少し「ごめんね」と繰り返しながら掃除を続ける田沼先生。
……気まずい。そのすごく気まずいし、もう一つ聞きたかったことを聞ける雰囲気でもなくなってしまった。
しばらく箒をパタパタする音とかものが移動する音とかそう言った環境音しか流れない沈黙の時間が流れる。
やっぱりこの中で話すのはすこし勇気がいるけど、でもこれを聞かないと前には進めない気もするから。
「先生、もう一つお願いなんですけど……星月さんの住所教えてくれませんか?」
「住所? もしかして星月さんの家行ってくれるの?」
「はい……その僕も心配ですから、星月さんの事」
その言葉に田沼先生の顔は一気に明るくなる。
「ありがとう、松原君! 届けてほしいものとかもあったし、そう言ってくれるなら助かるよ! それじゃあ住所だね、ちょっと待ってね」
そう言って薬品とかが置いてある机の上をゴソゴソあさりだす。
大体そういうのって職員室においておくものじゃないのかな……?
しばらくごそごそ探していて、ようやく「あった!」という声が聞こえる。
少し茶色がかった、連絡網みたいなものが出てきた。まだ3か月もたってませんよ、先生。
「よしよし星月さんの住所だね、はいここ! スマホ持ってる?」
そう言われたのでポケットのスマホでパシャリと一枚写真を撮る。
僕が写真を撮り終えたのを見て、田沼先生はパシッと胸を張る。
「よし、それじゃあ先生との約束! この住所は他の事に悪用しないこと! そして星月さんと会って理由とか聞いてくること! ……約束できる?」
そう言ってウインクを一つ。
「もちろん、わかってます。それじゃあ掃除早く終わらせましょ?」
「掃除はもうよかったのに……ありがとね、松原君」
取りあえず掃除に全力を出すことに決めた。
「……え、何急に偽物……?」
放課後、終礼も終わってカバンに荷物を詰め込んでいると真斗からそんなお誘いを受けた。
おごるって……そんなこと今までなかったよ?
「いや、偽物って……ひどいよ伊織ちゃん。あのさ、お前朝から元気ないし、寝不足って言うには今も全然元気ないから……なんかあったんだろ、あの子と? 話聞くぜ、この恋愛マスター真斗様が!」
そう言って真っ白な歯をキラッと光らす。
眩しい奴だ、本当にありがたい。
真斗は全然長続きしないタイプだけど。
……でもやっぱり僕が、僕で解決すべき問題だから。
「心配してくれてありがとう、真斗。でも大丈夫、僕の問題だから。それにこのあとちょっと用事あるから先帰っててくれない? ごめんね、ありがとう真斗」
「……まあお前がそう言うなら。でもなあんま無理すんなよ? 本当に相談しろよ?」
「うん、ありがとう真斗。じゃあまた明日」
帰っていく真斗に手を振ると僕は目的地の理科準備室へ向かった。
理科準備室のどこか不気味な表情の扉をコンコンと叩く。
返事はないけどカギは開いてるみたいだから勝手に入ってやろう。
「失礼しまーす、田沼先生……何してるんですか、先生?」
「ん? ああ、松原君か。ごめんね、今部屋の掃除中でね」
「……手伝いますよ、大変そうですし」
本来の目的とは違うけど隅の方でほこりにまみれた田沼先生の掃除を手伝うことにした。
この部屋一人で掃除は大変だと思います。
「いやー、松原君君が手伝ってくれて助かったよ。僕一人じゃどうもしんどくてねー。」
「大丈夫ですよ、先生。これくらいクラスの一員として手伝わせてください」
「その気持ちすごく大事だよ、松原君! 誰かのために何かするって気持ちはすごい大事だから、ずっとその気持ちは持っていようね!」
「……ありがとうございます」
なんだかテンション高めの先生に褒められて、少し嬉しい気分になる。
田沼先生は本当に優しくて、色々見えてる先生だと思う……そのせいで結構舐められがちみたいなところはあるけど。
「……それで松原君はどんな大変な用事があってきたの? まさか手伝いに来てくれただけじゃないよね?」
上機嫌で棚の掃除を続けていた田沼先生が僕の方をのぞき込む。
大変って……やっぱりこの先生、ちゃんと人の事見えてる。
「すいません、田沼先生。少し用事がありまして……その星月さんの休んだ理由とかって何か聞いてたりします?」
「星月さんの事ね、松原君と星月さん仲いいもんね」
「はい……そのあんまり休む子じゃないんで心配になったというか……」
僕の言葉に田沼先生はすごく申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんね、松原君。そのお母さんから連絡はあって家にはいるみたいだけど理由とかはあんまりわかんないみたいで……ごめんね、松原君力になれなくて。こんな担任でごめんね」
「いえ、その大丈夫ですよ。その、少し気になっただけですから。だからその、自分を卑下するのはやめてください!」
そんな悲しそうな感じで来られるとこっちまで悲しくなってくる。
それからも少し「ごめんね」と繰り返しながら掃除を続ける田沼先生。
……気まずい。そのすごく気まずいし、もう一つ聞きたかったことを聞ける雰囲気でもなくなってしまった。
しばらく箒をパタパタする音とかものが移動する音とかそう言った環境音しか流れない沈黙の時間が流れる。
やっぱりこの中で話すのはすこし勇気がいるけど、でもこれを聞かないと前には進めない気もするから。
「先生、もう一つお願いなんですけど……星月さんの住所教えてくれませんか?」
「住所? もしかして星月さんの家行ってくれるの?」
「はい……その僕も心配ですから、星月さんの事」
その言葉に田沼先生の顔は一気に明るくなる。
「ありがとう、松原君! 届けてほしいものとかもあったし、そう言ってくれるなら助かるよ! それじゃあ住所だね、ちょっと待ってね」
そう言って薬品とかが置いてある机の上をゴソゴソあさりだす。
大体そういうのって職員室においておくものじゃないのかな……?
しばらくごそごそ探していて、ようやく「あった!」という声が聞こえる。
少し茶色がかった、連絡網みたいなものが出てきた。まだ3か月もたってませんよ、先生。
「よしよし星月さんの住所だね、はいここ! スマホ持ってる?」
そう言われたのでポケットのスマホでパシャリと一枚写真を撮る。
僕が写真を撮り終えたのを見て、田沼先生はパシッと胸を張る。
「よし、それじゃあ先生との約束! この住所は他の事に悪用しないこと! そして星月さんと会って理由とか聞いてくること! ……約束できる?」
そう言ってウインクを一つ。
「もちろん、わかってます。それじゃあ掃除早く終わらせましょ?」
「掃除はもうよかったのに……ありがとね、松原君」
取りあえず掃除に全力を出すことに決めた。
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