魔法使いの弟子、のはず ~その依頼、魔法を使わず解決します~

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姿なき呪い

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「こんにちは。今晩、こちらのお屋敷でお世話になるミカエルと申します」
「お? おお。ご丁寧にどうも」

 マリアお嬢様が連れてきた見知らぬ連中。やたら顔の良い男と少年。こっそり気にしていた調理場の男たちは、いきなり話しかけられて動揺しました。

「お部屋にあった果物いただきました。ありがとうございます。ぼく甘い物が好きなんですが、あんなに美味しいもの生まれて初めて食べました」

 美少年にお礼を言われた料理人たちは、なんとも言えない顔になりました。
 だってあれは調理すらしていない果物なのですから、評価されたところで反応に困ります。

「……どれも南国の果物だから珍しいモンではあるが、あれで喜ばれちゃ料理人としては立つ瀬がねぇな」
「だな。坊ちゃん。甘い物が好きなら、今晩のデザートに期待しときな。ボスコ邸の料理人の腕を見せてやるよ」

 顔を見合わせた男たちは、この少年にプロの全力を味合わせてやることにしました。

「朝も子供仕様にするか。坊主、フレンチトーストとパンケーキならどっちがいい?」
「どちらも食べたことがないです」
「っかー。親はなにしてんだよ。どっちも作るのに大して手間かからねぇだろ。特にフレンチトーストなんて、家にある材料でパパッと作れるだろうに」

 思わぬ形でラファエロに流れ弾が飛んできました。



 食べなくても健康体を維持できるラファエロと、体力と魔力が直結していて魔力が充分あれば、食糧をそこまで必要としないミカエルの普段の食事は良く言えばシンプル。悪く言えば粗食です。

 朝も昼も夜もパンと、適当な野菜と肉を煮込んだスープとチーズ。
 甘い物が欲しければ、森で採れた果物。

 村に行けばお菓子を買えますが、ミカエルはお小遣いを全額貸本屋で使っています。とはいえ見かねたジョンが、店の中で読む分は無料にして、小休憩に手作りの焼き菓子を振る舞ってくれるので、軽いものならそれなりに食べているのですが、がっつりパンケーキやフレンチトーストはさすがに対象外でした。

「そうなんですか? じゃあパンケーキ食べてみたいです」

 フレンチトーストは一般家庭にあるもので作れるようなので、ミカエルはパンケーキを選択しました。
 離れた場所で会話を聞いていたラファエロは冷や汗ものです。これは家に帰ったら、フレンチトーストを作る流れです。

 ラファエロは家事妖精(ブラウニー)と契約するか真剣に悩みました。妖精を呼び出すのは簡単ですが、一度契約してしまうと破棄するのが難しいのです。
 もし出てきたのが几帳面で口うるさい――ルカのような性格だったら、のんびりスローライフの危機です。

「フレンチトーストくらいなら、わしでも作れるか……?」

 ラファエロが眉間に皺を寄せていると、小皿とスプーンを持ったミカエルが戻ってきました。



 スプーン二杯分の茶葉を小皿に出すと、ミカエルはより分けました。
 全ての缶で同じ行動を繰り返します。

「お弟子様。一体何をなさるのですか?」
「比率を確認しています。煎じ薬もですが、こういうものは量も重要なんです」

 ポットに一杯、カップに一杯というのが茶葉の基本です。ティースプーン二杯で数えているのは、それが一杯分の量だからです。

「過剰投与は体に害になり、少なすぎたら効果が無いんですよ」
「わしも手伝おうか?」
「お気持ちだけもらっておきます」
「なんでじゃ! こんだけあったら大変じゃろ」
「師匠。これとこれは別のハーブなんですが、区別つきます?」
「い、一個ずつ鑑定魔法で確認すれば……」
「それ一缶終わらせるのに、どれだけ時間がかかると思ってるんですか」

 話しているうちに、ミカエルは全ての作業を終えました。
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