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 遠藤君はわりとクラスの人気者で、男子とも女子ともよくおしゃべりをしている。
 わたしはというと席は近いのに、あれ以来遠藤君と会話することもなく過ごしていた。
 最近ではそれがさみしいって思ってる自分がいて。

 ――わたし、やっぱり遠藤君が好きなのかな。

 誰が誰に告白したとか、誰と誰が付き合いだしたとか。最近ではクラスの中でそんな話が増えてきた。
 放課後手つなぎデートしたり校舎の影でキスしたり、そんな漫画みたいな恋愛はわたしも正直あこがれる。
 だけど内気なわたしに告白なんて、無理寄りの無理に決まってる。

 そんな感じで後ろから見つめるだけで満足していたわたしだったけど、結局は席替えで遠藤君との接点を失ってしまった。
 しかもわたしの席は最前列。授業中に遠藤君を観察する楽しみも奪われて、もう最悪としか言いようがない。
 今では配られたプリントを回すときにだけ、遠藤君を盗み見てるような状況だ。

 あとは短い休み時間を活用するしかなかった。
 昼休みは遠藤君はひとりどこかへ行くことが多い。
 毎日観察した結果、遠藤君は高校の近くにある小さなパン屋さんに行ってることが分かった。

 購買部は込み合うので美味しいパンは争奪戦だ。本当は昼に学校から出ることは禁止されてるけど、わたしはそのことを誰にも黙って内緒にしておいた。

 遠藤君とわたしだけのひ・み・つ。
 なんつって。

 そんな妄想をしているうちに、お昼休みのチャイムが鳴った。
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