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第一章
巫女はちょっと後悔した
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「とにかく、放っておくと面倒だから連れてきたってわけよ」
「そ、そうなんだ…」
戦争の話で盛り上がっていた二人は本題を思い出したかのように話を戻した。
夕菜はお茶をすすり、一息ついた。
「…さて、あんたの処遇だけど…」
湯飲みをちゃぶ台に置き、視線をステラに向けた。その鋭い目つきに捉えられ、ステラは固唾を飲み、次の言葉を待った。
「とりあえず、家事手伝いでもしてもらうわ」
「…え?」
「さすがに無駄飯を食わすつもりはないからね」
「そ…それだけですか…?」
ステラは恐る恐る尋ねた。
「?…それだけって?」
「その…他に何かないんですか?…例えば…魔王とか…」
「んなもんいないって言ったでしょ。まあ、いたとしてもあんたじゃ足手まといにしかならないだろうけどね」
ぐうの音も出なかった。唯一無二の武器である魔法を失った今、夕菜の言葉を否定できなかった。
「大丈夫。さっきも言ったけど戦争はもう終わってるし、そんな危ない真似はさせないから」
遠夜はフォローするように声をかけた。
「で、でも…家事って何をすれば…」
「そりゃあ炊事、掃除、洗濯とか一通りよ。まさかやったことないなんてアホなこと言わないでしょうね?」
「……」
ステラはうつむき、何も言わなかった。
「え…?もしかして…」
遠夜が尋ねるとステラは上目遣いで何かを訴えた。
「…あんた…マジ?」
その予想が当たったのか、ステラは静かにうなづいた。
「え、じゃあ元の世界ではどうしてたの?まさか小間使いみたいのがいたとか?」
また予想が当たったらしく、ステラはもう一度うなづいた。
「これってアレだよね?いわゆるお姫様ってヤツだよね?」
「なんかそういう雰囲気するなと思っていたんだけどね…」
巫女の姉弟は互いに顔を合わせてひそひそ話をした。
「しょうがない、教えてやんなさい」
「え?俺?」
「家事はあんたの担当みたいなもんでしょ?」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ…」
「とにかく、任せたわよ。それじゃ私は札の補充をしてるから」
夕菜は立ち上がり、障子戸を開いて自分の部屋へ戻った。
「はぁ…やれやれ」
遠夜はため息をつきながらお盆にお茶請けの皿と湯飲みを乗せた。
「んじゃさっそくだけど、洗い物でもしてみようか」
立ち上がり、お盆を持った遠夜はステラを台所へ案内した。
自分の部屋に戻った夕菜は箪笥を探りながら今日拾った鬼について考えていた。神社に連れて来たのは早計だっただろうか?本当に彼女は人間なのか?
油断を誘って暗殺しようとしているかもしれない。しかしそんな大それた事ができる佇まいではなかった。鬼達が送り込んだスパイという説も思い浮かんだが、彼女の性格はスパイにはあまりに不適切だ。身分を偽るためだけにあんな大がかりな背景を作り出すとは考えにくい。そもそもここ数年間、鬼の動きはおろか目撃情報すら一切ない。気になることは多々あるが、いずれにせよ、本来は助けてやる義理などない。
しかしあのまま一人にしていれば付近の人間達に袋叩きにされるあるいは野良妖怪の餌になる事は明らかだ。そうなっては鬼といえど正直夢見が悪い。
とりあえず食いぶちが増えた分、働いてもらわなくては。
ほどなくして台所から食器がいくつか割れる音が響いた。
「ひゃあぁあぁ!」
同時にステラの悲鳴が聞こえた。何があったか簡単に想像できた。
「…やっぱり見殺しにすれば良かったかしら…」
夕菜は頭を抱えながらこの神社に高級な食器がないことに安心した。
「そ、そうなんだ…」
戦争の話で盛り上がっていた二人は本題を思い出したかのように話を戻した。
夕菜はお茶をすすり、一息ついた。
「…さて、あんたの処遇だけど…」
湯飲みをちゃぶ台に置き、視線をステラに向けた。その鋭い目つきに捉えられ、ステラは固唾を飲み、次の言葉を待った。
「とりあえず、家事手伝いでもしてもらうわ」
「…え?」
「さすがに無駄飯を食わすつもりはないからね」
「そ…それだけですか…?」
ステラは恐る恐る尋ねた。
「?…それだけって?」
「その…他に何かないんですか?…例えば…魔王とか…」
「んなもんいないって言ったでしょ。まあ、いたとしてもあんたじゃ足手まといにしかならないだろうけどね」
ぐうの音も出なかった。唯一無二の武器である魔法を失った今、夕菜の言葉を否定できなかった。
「大丈夫。さっきも言ったけど戦争はもう終わってるし、そんな危ない真似はさせないから」
遠夜はフォローするように声をかけた。
「で、でも…家事って何をすれば…」
「そりゃあ炊事、掃除、洗濯とか一通りよ。まさかやったことないなんてアホなこと言わないでしょうね?」
「……」
ステラはうつむき、何も言わなかった。
「え…?もしかして…」
遠夜が尋ねるとステラは上目遣いで何かを訴えた。
「…あんた…マジ?」
その予想が当たったのか、ステラは静かにうなづいた。
「え、じゃあ元の世界ではどうしてたの?まさか小間使いみたいのがいたとか?」
また予想が当たったらしく、ステラはもう一度うなづいた。
「これってアレだよね?いわゆるお姫様ってヤツだよね?」
「なんかそういう雰囲気するなと思っていたんだけどね…」
巫女の姉弟は互いに顔を合わせてひそひそ話をした。
「しょうがない、教えてやんなさい」
「え?俺?」
「家事はあんたの担当みたいなもんでしょ?」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ…」
「とにかく、任せたわよ。それじゃ私は札の補充をしてるから」
夕菜は立ち上がり、障子戸を開いて自分の部屋へ戻った。
「はぁ…やれやれ」
遠夜はため息をつきながらお盆にお茶請けの皿と湯飲みを乗せた。
「んじゃさっそくだけど、洗い物でもしてみようか」
立ち上がり、お盆を持った遠夜はステラを台所へ案内した。
自分の部屋に戻った夕菜は箪笥を探りながら今日拾った鬼について考えていた。神社に連れて来たのは早計だっただろうか?本当に彼女は人間なのか?
油断を誘って暗殺しようとしているかもしれない。しかしそんな大それた事ができる佇まいではなかった。鬼達が送り込んだスパイという説も思い浮かんだが、彼女の性格はスパイにはあまりに不適切だ。身分を偽るためだけにあんな大がかりな背景を作り出すとは考えにくい。そもそもここ数年間、鬼の動きはおろか目撃情報すら一切ない。気になることは多々あるが、いずれにせよ、本来は助けてやる義理などない。
しかしあのまま一人にしていれば付近の人間達に袋叩きにされるあるいは野良妖怪の餌になる事は明らかだ。そうなっては鬼といえど正直夢見が悪い。
とりあえず食いぶちが増えた分、働いてもらわなくては。
ほどなくして台所から食器がいくつか割れる音が響いた。
「ひゃあぁあぁ!」
同時にステラの悲鳴が聞こえた。何があったか簡単に想像できた。
「…やっぱり見殺しにすれば良かったかしら…」
夕菜は頭を抱えながらこの神社に高級な食器がないことに安心した。
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