1 / 40
第一話 いざ、ダンジョンへ
1-1
しおりを挟む
アイーシャ・ラクアは、祖父エルデンの制止を振り切って家を出ていこうとしていた。鎖帷子と革製の兜を身に着け、手にはまだ新品で錆止めの油も取れていないメイス。心には強い決意を秘め、その決心が揺らぐことはなかった。アイーシャは自分を止めようと肩を掴むエルデンの手をそっと引きはがすが、エルデンもまた諦めずに今度はアイーシャの腕を掴んだ。
「一人でダンジョンに行くなんて、お前にはまだ無理だ! しかも物見の洞のダンジョンにはずっと誰も入っていない。今現在どうなっているか分からんのだぞ!」
エルデンはアイーシャを引き留めようと必死に説得を続ける。悲痛な声が部屋に響き渡るが、それでもアイーシャを心変わりさせることは出来なかった。
「だからこそ行く価値があるんでしょ? ずっと誰も入っていないなら、その分魔力が蓄積されてすごいお宝が生み出されてるかもしれないじゃない!」
アイーシャは腕をつかんだエルデンを引きずるようにして、廊下を歩いてドアに向かっていく。
「すごい何かが生み出されるというのなら、それは魔物についても同じだ! 罠もそうだ! 魔力で財宝が生まれるように、危険な物だって生み出される! とにかくやめるんだ!」
エルデンから顔を背けていたアイーシャだったが、足を止め、思いつめた表情でエルデンに鋭い視線を向ける。
「アストラダンジョンに一緒に潜ってくれるパーティはどこにもいない。この街中を探したっていなかったのよ?! だったら一人でやるしかないじゃない! それにダンジョン管理組合に払うお金もないんだから、アストラにはどのみち入れない。大昔の古ぼけた非正規ダンジョンでこっそり財宝を探すしか方法はないのよ!」
「金の事なら……わしが、何とか……。確かに疫病のせいで仕事が減ってはいるが……昔の知り合いに相談して、何とかしてみる」
力無くエルデンが言う。それが無理なことである事を、理解しながら……。
「無理よ! これ以上内職を増やしたってたかが知れてる。森の魔物を狩っても大した金にはならない。娼婦に身をやつすか、ダンジョンで稼ぐか。そのどちらかしかない……私は体を売るなんて、それこそ死んでもいやよ……」
アイーシャにそう言われ、エルデンは言葉を失った。
「しかし、やはりダンジョンは危険だ……」
エルデンは自分の足元に視線を落とした。そしてアイーシャを掴んでいた手を放し、自分の右脚を押さえる。エルデンの右脚の膝から下は義足……七年前にアストラダンジョンで魔物の生体材料を集めていた際に負傷し、結果的に脚を切断することになってしまったのだ。
それ以来エルデンは調達士を引退し、家の中で籠を編んだり動物の皮の加工等の内職でアイーシャとの生活を支えてきた。
「深層には潜らない。魔物の相手はしない。お金になりそうなものを集めて、さっさと帰る……約束するわ……」
アイーシャはエルデンの右手を取り、まっすぐにエルデンの目を見つめた。
エルデンが心配する気持ちはわかる。ダンジョンを恐れている理由も分かっている。しかし、それでも行かなければならない。そうでなければ今までの暮らしを守ることはできないのだ。自分と祖父のために、アイーシャは覚悟を決めていたのだ。
「……行くわ」
アイーシャはエルデンの手を放し、ゆっくりと家を出ていく。
「……早く帰ってくるんだぞ」
ドアの向こうに消えたアイーシャの姿に、消え入りそうな声で声でエルデンは言った。
「一人でダンジョンに行くなんて、お前にはまだ無理だ! しかも物見の洞のダンジョンにはずっと誰も入っていない。今現在どうなっているか分からんのだぞ!」
エルデンはアイーシャを引き留めようと必死に説得を続ける。悲痛な声が部屋に響き渡るが、それでもアイーシャを心変わりさせることは出来なかった。
「だからこそ行く価値があるんでしょ? ずっと誰も入っていないなら、その分魔力が蓄積されてすごいお宝が生み出されてるかもしれないじゃない!」
アイーシャは腕をつかんだエルデンを引きずるようにして、廊下を歩いてドアに向かっていく。
「すごい何かが生み出されるというのなら、それは魔物についても同じだ! 罠もそうだ! 魔力で財宝が生まれるように、危険な物だって生み出される! とにかくやめるんだ!」
エルデンから顔を背けていたアイーシャだったが、足を止め、思いつめた表情でエルデンに鋭い視線を向ける。
「アストラダンジョンに一緒に潜ってくれるパーティはどこにもいない。この街中を探したっていなかったのよ?! だったら一人でやるしかないじゃない! それにダンジョン管理組合に払うお金もないんだから、アストラにはどのみち入れない。大昔の古ぼけた非正規ダンジョンでこっそり財宝を探すしか方法はないのよ!」
「金の事なら……わしが、何とか……。確かに疫病のせいで仕事が減ってはいるが……昔の知り合いに相談して、何とかしてみる」
力無くエルデンが言う。それが無理なことである事を、理解しながら……。
「無理よ! これ以上内職を増やしたってたかが知れてる。森の魔物を狩っても大した金にはならない。娼婦に身をやつすか、ダンジョンで稼ぐか。そのどちらかしかない……私は体を売るなんて、それこそ死んでもいやよ……」
アイーシャにそう言われ、エルデンは言葉を失った。
「しかし、やはりダンジョンは危険だ……」
エルデンは自分の足元に視線を落とした。そしてアイーシャを掴んでいた手を放し、自分の右脚を押さえる。エルデンの右脚の膝から下は義足……七年前にアストラダンジョンで魔物の生体材料を集めていた際に負傷し、結果的に脚を切断することになってしまったのだ。
それ以来エルデンは調達士を引退し、家の中で籠を編んだり動物の皮の加工等の内職でアイーシャとの生活を支えてきた。
「深層には潜らない。魔物の相手はしない。お金になりそうなものを集めて、さっさと帰る……約束するわ……」
アイーシャはエルデンの右手を取り、まっすぐにエルデンの目を見つめた。
エルデンが心配する気持ちはわかる。ダンジョンを恐れている理由も分かっている。しかし、それでも行かなければならない。そうでなければ今までの暮らしを守ることはできないのだ。自分と祖父のために、アイーシャは覚悟を決めていたのだ。
「……行くわ」
アイーシャはエルデンの手を放し、ゆっくりと家を出ていく。
「……早く帰ってくるんだぞ」
ドアの向こうに消えたアイーシャの姿に、消え入りそうな声で声でエルデンは言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる