聖女に生まれた私は元魔王の娘でした 〜勇者との結婚は避けたいところです〜

ちより

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甘い空気は避けたいところです

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 大聖堂の件が外に漏れる前に、ジェダ国を出る。なぜかずっと黙っているのが気まずく、つい話しかけてしまう。

「それにしてもあの娘のこと気に入らないって言ってたわりには、一緒に行動していたのね」

「あぁ、それは……君が疲れているようだったから……その間に必要な物資をそろえに行こうとしたら、案内すると申し出てきたからな。見知らぬ土地を1人で歩くよりは効率が良いだろう?」

 なんというか、オリバーってそこら辺割り切っているわよね。

「本当は1分でも長く君の側にいたかったんだが……」

「っ!?」

「それと、ジェダ国に来たのだからこれを君に送りたかったんだ」

 そう言っておもむろにポケットから何かを取り出す。

「これは……」

 月の石と呼ばれるジェダ国でも希少な宝石だ。しかもかなりの大きさだ。その透明度だけでも価値だけでいえば、相当なもののはずだ。ネックレスのようだが、紐に通したシンプルな作りをしている。

 月の石だわ……これ、ずっと欲しかったのよね。でも、確か大天使の瞳って別名がついていて、その希少さと神聖さから聖物として扱われて、国外には出回らない代物だったわよね……

「これ、どうやって?」

「とりあえず採掘場を相手の言い値で買い取った」

「えっ」

「そのあと聖魔法で探してみたら、案外すぐに見つけることが出来たから、この剣でカットして作ってみたんだ」

「なっ……」

 なんですって!? 確かに、月の石は聖魔法と共鳴するって聞いたことあるけど……つまり、自分で権利を買った採掘場から掘り当てて、カットしてネックレスを作ったってこと? 短時間でどれほどのお金を動かしたのか……この男が公爵で複数の事業に成功しているやり手だってこと、忘れていたわ……

「そう、分かったわ。でも、一緒にいたあの娘も黙ってなかったんじゃないの?」

「あぁっ、君にこれを渡すと言ったら、自分よりどこが良いのかと聞かれた。とりあえず全てと言ったら余計にしつこく聞いてきたから、まぁ……君のこの滑らかな肌だと伝えたんだ」

 そう言って頬に触れる。

「っ!?」

「喜んで、もらえただろうか?」

「え……えぇ。そうね。気に入ったわ」

「そうか」

 あっ、焦ったーー。なんか前より甘いというか。距離感が近いわ……でも、そういえば、この人私にキッ、キスしようとしてきたのよね。さっさと離れるつもりだったのに……結局一緒に来てしまったわ。

 でも仕方ないわね。あんな子どもに魔王を倒されたとなれば、それこそ魔族の名誉に関わるわ。適当な相手を見つけるまでは、様子を見ておいた方がいいわね。

 それにしても……いつまで触るつもり!?

「…………あの時」

 あの時?

「受け入れたってことで良いんだよな?」

 まさか、キッ……!?

 考えるより先に、そのままオリバーの唇が触れるのを感じる。今度は長く、離れようとしない。

「~~~~っ!!!!!!」

 急に早くなる心音がそのまま耳から出るのではないか、気づくとまた気を失っていた。






「っ!?」

 慌てて起き上がる。外は真っ暗で月が見える。近くに焚き火をしているオリバーと目が合うと、はにかんだ微笑みを浮かべている。

「起きたか……」

 起きたか? じゃないわよ!! この私を何度気絶させれば気が済むの……って、もしかして、聖魔法が関係している? そうよ。私が同じ人間に何度も同じ手をくらうわけがないもの。きっとキッ……キスで聖魔法がコントロール出来ずに発動しているのね。気をつけないと……


「新鮮な果物だ、1人で食べられるか?」

「えぇ」

 そういえば、荷物かなりの量に見えるけど、ジェダ国がもう見えなくなっているわね。私をおぶってここまで歩いたのかしら。

 考えながら皮ごとかぶりつくと、汁がはねる。

「あ……」

 服につく前に、ハンカチが飛んできてそれを防ぐ。

「大丈夫か?」

「えっ、えぇ。大丈夫よ」

「やっぱり一口サイズに切ってから渡した方が……」

「その必要はないわ!! 少し考えごとをしていただけよ」

「考えごと?」

 甘い空気になるのは避けたい。

「魔王のことなんだけど……気配が変なのよ。強くなっているのに、それに他の魔族がまだ気づいていないようなのよ」

 これは本当だ。ここまで魔王復活の気配が強まれば、上級魔族なら気づいてもおかしくない。復活後すぐに指揮に従えるよう待つのが普通だ。それなのに、未だ魔族が集まる気配はない。

「おかしいのか?」

「おっ……」

 おっと、危ない。人間にとっては知らない感覚だとのね。

「私なら、王の復活後すぐに命令に応えられるよう、側で待つわ」

「確かに。今まで魔王の復活の予言がされた時はすぐに大きな被害が出ている。そばで重役がいるのなら、その素早さにも辻褄があうな」

 良かったわ、納得してくれたようね。

「えぇ、だから。このまま人数は増やさず行動した方が良いと思っていたのよ」

「それは……賛成だ。俺としては、2人きりの方がいい」

 なんで、ここで甘い空気になるのよ!?



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