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第2章 チョコを剥がしたチョコ菓子の末路
第2話
しおりを挟む「――よーし。んじゃ、ここに手の平をかざしてくれるか? まずは右からだ」
煙草を咥えた柾紀の指示通りに右の手の平をタブレット端末の上にかざすと、端末画面にパッと赤い光が差した。と同時に、背後でパソコンに向かう目出し帽の少年が素早くキーボード操作する。
「次、左手な」
気さくな口調の柾紀とは反対に、目出し帽の少年――信孝は陽乃子の方に振り向きもしない。
タマコ、リリコと一緒に地下の部屋へ降りると、そこには佐武朗以外の調査員全員がいた。
陽乃子の生体認証とやらを登録するべくタブレット端末やパソコンを操作しているのは、褐色の上腕にタトゥーを彫り込んだ大男の柾紀と、ひょろりとした細い身体の目出し帽少年、信孝。
一方、皺の寄った背広を着ている小柄で貧相な印象の鴨志田は、部屋の中央に集まるデスクの一つについて書類に目を通しており、また一方で、黒髪に黒い服、ほぼ完全シンメトリーの顔立ちを持つ幸夜は、部屋の端にある長椅子に横たわって目を閉じていた。
このメンバーにタマコとリリコを加えた六名が、ここ『サブロ探偵事務所』の調査員であり、それを束ねる所長(ボスとも呼ばれる)が佐武朗なのだ、と事前に説明は受けている。
ちなみに、未成年である信孝はバイト扱い、タマコは雑用専門のお世話係、とのことだ。
「うちは職業柄、ちょいとばかしセキュリティの壁が厚くてな。すべての出入り口にこの認証システムが設置されている。車庫口と、この部屋の地下口、階上の玄関口、台所裏にある勝手口、それから正門の五か所だ。どこから入るにしても必ず解錠しなきゃ入れねぇぞ」
武骨そうな見かけによらず、柾紀は野太い声で丁寧に教えてくれる。
「解錠の仕方は簡単だ。設置してあるパネルにパスワードを入力して、お前さんの手の平をかざすだけだ。これは手の平の静脈パターンによって認証するセキュリティシステムだからな、例えば、手の平のどっかに怪我してても問題はねぇ。だけど手袋はダメだ」
陽乃子は自分の手の平を見直す。静脈認証とは初めて耳にした。
「パスワードは、『02367410』だ。 “おじさんむなしいわ” ……で覚えるといい。パスワードは時々変わるからな、その都度覚えるんだぞ。ああ、メモなんかで残すのはNGだ。うちのやつら以外の前で口にすんのもダメだぞ」
「……システムが古すぎるんだよ。最新のやつは端末がコンパクトだしパスワードもいらないのに」
陽乃子と柾紀の背後で信孝がボソボソと言っている。こちらには背を向けたまま。
「まぁ、最初はめんどくせぇだろうが、じきに慣れるさ。――それから、ねぇとは思うが、正規の出入り口以外の場所……窓とかだな……そっから侵入すりゃセンサーが反応して警報が鳴る。くれぐれも、盗人みてぇな真似はするんじゃねぇぞ」
柾紀の大きな身体を見上げて陽乃子が「はい」と返答したところで、中央のデスクから「うっそぉ!」と甲高い叫び声が上がった。
「――ちょっとこれ、依頼人 “シラサギアヤコ” ……って」
「……まさか、女優の白鷺絢子かい?」
タマコとリリコが鴨志田のそばで騒いでいる。鴨志田は目をしょぼしょぼさせて手元のタブレット端末をリリコたちに向けた。
「なんでも『サブロ探偵事務所』の評判を耳にした白鷺さんが直々に、どうか是非にと頼み込んでこられたそうなんです」
端末画面を覗き込んだリリコは呆れたように肩をすくめる。
「ほんっと、うちに依頼してくるのって金持ちセレブばっかりね。どこぞの社長やら代議士やら、大物芸能人やら。料金もそれなりにお高いんだけど」
「白鷺絢子っていったら、何かとスキャンダラスなお騒がせ女優じゃないかぃ? 昔は清純派で売ってたのにバツイチになってから印象が悪くなったよ。顔は綺麗だけどさ、あたしゃあんまし好きじゃないね」
「ママの好みはどうでもいいわ。――で? 所在調査って、誰を捜して欲しいの?」
「それが……息子さん、なんだそうで。えーと……本名は小松原大毅。年齢は現在28歳。十年ほど前に “HIROKI” の名で芸能界デビューしたそうなんですが――、これはデビューしたての頃の写真です」
「 “HIROKI” ……そんな芸能人いた? 全然知らないわ」
首を傾げるリリコの隣で、タブレット画面をのぞき込んでいたタマコがつけまつ毛をバチバチと瞬く。
「おや、あたしゃ覚えてるよこの子。ずいぶん前だけど、ドラマに出てたのを見たよ。確か……そうそう、『水も滴るイイ悪党』ってドラマだ。その頃、若手売り出し中のメンズがいっぱい出てたやつでね……この子は脇役だったけど、なかなかのイケメンだし大女優の息子だし、いっとき二世俳優ってやつで騒がれててさぁ。いやね、あたしは主演だった子の方が好みだったんだ。名前、ナンていったっけね……こう、カワイイ顔立ちのワンコ系の……」
「だから、ママの好みはどうでもいいってば。……で? 大女優の二世俳優がどうして行方不明なの?」
「あ! 思い出した! たしかこの子、警察沙汰を起こしたんじゃなかったかい?」
「警察沙汰?」
ギョッとしたようなリリコに、鴨志田が神妙な顔で頷いた。
「はい。デビューして二年くらいまでは、映画やテレビドラマの出演が相次いでいたんですが、次第にそれも減っていき、五年前に大麻所持で逮捕されております。起訴され裁判にかけられましたが、初犯だったこともあり執行猶予付きとなっていますね。当時はマスコミも大きく取り上げられて連日大騒ぎ……その渦中から逃れるためか、判決後まもなく海外留学と称して日本を出ています」
「金持ちはいいわよね。悪いことしても海外に逃げられるんだから。……え? ってことは、海外に探しに行けってこと?」
にわかに迷惑そうな表情をしたリリコに、鴨志田は「いえいえ」と首を振った。
「それが、一年も経たずして日本に帰ってきているんです。けれど芸能界復帰はしておりません。帰国後しばらくはご実家に引きこもり過ごされていたようですが、二年ほど前のある日、ふらりと家を出たきり、そのまま連絡が取れず行方が分からなくなっている……と」
「ふーん……その息子を探してくれってことなのね」
豊満な胸の下で腕を組んだリリコ。その隣でタマコも「そーだったのかい」と剃り跡青い顎下に人差し指を当てている。
「――しっかし、おかしな話だと思わねーか? 二年も前から行方知れずの息子を、ナンで今さら捜索なんだ? しかも警察じゃなくて、探偵事務所に」
新しい煙草に火を点けた柾紀が口を挟むと、鴨志田は困ったように眉尻を下げた。
「その辺の事情は色々と込み入ったものがあるようです。何せ有名人ですから、マスコミに騒がれるのは避けたいのでしょう。先ほど所長が、白鷺絢子さんの所属事務所『シータバック』の社長と会うため出かけられました。詳しい事情は追って明らかになると思います。それまでは、小松原大毅氏に関する情報をできるだけ多く集めておけ……とのことで」
空いた椅子を引き寄せてドカリと腰を下ろした柾紀は「面倒そうな案件だな」と唸った。
「――というわけで信孝くん、小松原大毅氏の大麻所持事件に関するデータを一通り上げてもらえますか? 公になっているものだけで構いませんので」
鴨志田に声をかけられた目出し帽の信孝は、こくりと頷いて見せると再びパソコンに向かって操作し始める。
リリコはデスク上にお尻を乗せて、組んだ足をブラブラさせた。
「アタシ、所在調査ってきらーい。地味ぃに聞き込み、地味ぃにビラ配り、地味ぃに情報集め……つまんない仕事ばっかりなんだもん。さんざん手ェかけたわりに結果が出ないことも多いしー」
陽乃子の背後から聞こえるキータッチの音が一瞬止まった。次いで再び打ち出した音は、心なしか前より強くなった気がする。
そこでリリコは「あ」と思いついたように顔を上げた。
「ねぇ、ヒノちゃんなら知ってたりしてー。だって、一度見た顔は忘れないんでしょ? どこかで会ってるかもしれないわよね? ――ヒノちゃんヒノちゃん、この顔、見たことなぁい?」
隅っこに一人ぽつんと立ちっぱなしだった陽乃子を、リリコはおいでおいでと手招く。
「リリちゃん、いくらナンでも」
「さすがにそんな偶然はねぇだろ」
タマコと柾紀の苦笑とツッコミが入る中、陽乃子は差し出されたタブレット端末画面を見た。
画像は一人の若い青年。カメラ目線で爽やかに笑っている。
陽乃子の認識能力、記憶能力は、実物でない媒体画像になると幾分落ちる傾向にある。――が、この顔は割とすんなり入ってきた。元の実物を何度も見ているからだ。頭の中でカチリと重なる音がする。
「……あります」
答えた陽乃子に、リリコは手を振り振りアッハハと笑った。
「そうよねぇー、いくらヒノちゃんでもさすがにそんな偶然は……え? 今、あります、って言った……?」
「顔を、覚えています」
一瞬、ポカンとした空気が流れ、すぐさま取り繕うような失笑に変わる。
「いやいやいやヒノちゃん。ゴメンゴメン、アタシ変な訊き方しちゃったわ」
「いいかい? テレビで、っていう意味じゃないんだ。実際に、この人を見たことがあるか?っていう意味で――、」
「はい……実際にお会いしました。最後に見たのは、四日前です」
またしても一瞬、時が止まり――、
「――えぇえぇぇっ!?」
リリコとタマコの甲高い叫び声が上がり、柾紀と鴨志田は困惑した顔を見合わせる。
一人離れた長椅子で横になっていた幸夜の目が、ゆっくりと開いた。
* * *
「――それで、鴨さんとリリちゃんが陽乃子ちゃんを連れて、確認しに行ったんだ」
と言いつつ、アフと漏れ出る欠伸。ノンフレームの眼鏡を外して、潤んだ淡い色の瞳を拭う。
「鴨さんの淹れたコーヒーが飲みたかったんだけど……残念、もっと早く起きてくるんだったな。正式にうちの子となった陽乃子ちゃんにも改めてご挨拶したかったのに」
「 “うちの子” 言うな」
幸夜が低く突っ込めば、亮は薄い榛色の髪をかき上げて笑った。
淡いブルーの綿シャツに柔らかそうな生地のズボンを履いた亮は、見るからにさっき起きたばかり、という抜けきった顔だ。夜勤明けなのだろう。
彼は調査員ではないが、時々こうしてコーヒーを飲みに地下へ降りてくる。鴨志田が淹れるコーヒーはプロ級に美味いらしい。家電量販店で購入した普通のコーヒーメーカーで淹れているだけなのに、変な話だ。
「でも、ラッキーだったじゃない。陽乃子ちゃんの記憶にインプットされていた人だったなんて。行方調査とか所在調査って時間も経費もかかるんでしょ? 手っ取り早く見つかったんなら、依頼人にとってもうちにとっても運が良かったよね」
亮は長椅子に寝転ぶ幸夜を無理矢理起こし、空いたスペースに腰を下ろした。あろうことか幸夜の頭を引き寄せ膝に乗せようとするので、その手を思い切り振り払ってやる。
デスクに頬杖をついた柾紀が、口からプカリと紫煙の輪を出した。
「――ま、二年も前から音信不通だった人間を捜し出すなんざ、下手すりゃ無駄骨折るだけになるからな。これが本当に大当たりなら万々歳なんだけどよ……」
「……デマカセ、なんじゃない?」
ふと上がった小さな声は、パソコンを操作している信孝だ。皆に背を向けたまま、思い詰めた暗い声音がボソボソと流れてくる。
「……ここに置いてもらうことになって、自分を認めてもらおうとして必死なんじゃないの? ここが探偵事務所だって聞いて、カッコイイとか思って、自分だって役に立つってことアピりたくって――、」
目出し帽を被った丸い頭にポスンと大きな手が乗った。柾紀の手だ。
「……んじゃ俺が、コーヒーでも淹れるか」
のっそりと階段下の給湯場へ向かう柾紀。信孝は黙って俯いた。信孝が一番心を許し懐いているのが柾紀だ。
「柾紀くーん、僕は濃い目でおねがーい」
亮が声をかけると、柾紀の片手が上がる。
幸夜は、テーブル上にあるチョコ菓子の箱に手を伸ばした。
柾紀が人数分のコーヒーを淹れて戻ってくると、続いて信孝がプリントアウトされた紙の束を持ってきた。
「小松原大毅とその周辺……白鷺絢子関連も集めてみたよ。ほとんどが新聞と週刊誌ネタの寄せ集めだけど」
「――おお、サンキュ」
柾紀が受け取ると、信孝は遠慮がちな動きで目出し帽を脱いだ。ぼさぼさに乱れた髪と青白く幼い顔立ち。まだ十六歳の少年だが特技はハッキングである。それも犯罪レベルの。
柾紀と信孝が幸夜たちの向かいに座り、ローテーブルには何枚もの紙面が広げられた。
「デビューしてからしばらくは売れてたみたい。所属事務所は母親と同じ『シータバック』。二世俳優で注目されたけど、もともと才能はなかったんじゃない? 最初だけって感じだね」
説明しながら信孝は、湯気の立つコーヒーにミルクポーションを三つほど入れる。手渡された書類に目を通す柾紀が低く唸った。
「落ち目になって悪い輩に目ェつけられて、いい金ヅルにされたんだろうよ。……五年前の大麻所持と使用については再考の余地なしだな。尿検査と血液検査で陽性反応が出てる……常習だったんじゃねぇか? 執行猶予がついただけでもありがたいこったぜ」
コーヒーを啜った亮も、柾紀が目を通し終わった紙面を受け取った。読み進める表情は意外にも興味深そうだ。しかし幸夜は一向に関心が持てず、一人アーモンド内包チョコ艶玉を味わう。
あのキノコ娘が数日前に会っているなら、この街のどこかにいる可能性は高い。ほどなく居所は判明するだろう。そうなればこの案件は解決したも同然だ。余計な情報を脳内に入れたくはない。
「友だちは少なかったっぽいよ。売れていた頃は派手に遊んでたようだけど、事件後の取材では悪い評判ばかりだね。我がまま、自分勝手、傲慢で横柄な性格……そんな証言がいくつもある。嫌われ者だったのは間違いないよ」
「女性関係は?」
「女癖が悪いとか、見境ないとかの証言はあるけど、少なくともマスコミが騒ぐほど噂になった特定の女はいなかった。一般人に手を出してたらわかんないな」
「ふーむ」
難しい顔で読み進める柾紀。一方、亮が見ているのは、その母親についてのようだ。
「白鷺絢子……本名小松原史子、54歳……へぇ、彼女バツイチなんだ。元旦那は……映画監督の邨川道臣……ん? この名前、最近どっかで聞いたような……」
首を傾げた亮に、信孝が答えた。
「死んでます。二週間くらい前」
「あ、ホントだ。……死因は……脳梗塞か。ああ、思い出したよ。こないだうちの看護師たちが話してた。……享年66歳……ってことは、ずいぶん年の離れた夫婦だったんだね」
片手でコーヒーを一口飲んで、亮は続ける。
「邨川監督が36歳、白鷺絢子24歳の時に結婚……二年後に大毅が生まれ、その六年後に離婚。結婚生活は八年と少し。大毅の親権は白鷺絢子で……、その後の再婚歴は双方ともになし……か」
「でも白鷺絢子の方は、離婚後もしょっちゅうあちこちで熱愛報道が上がってたみたいですよ。噂になった男は数知れず、って感じ。『恋多き美魔女』なんて書かれてるけど、単なるアバズレだよね」
いつになく饒舌に語る信孝。亮は声を上げて笑った。
「十六の少年にアバズレ呼ばわりされるなんて、大女優も堕ちたもんだね」
「そ、そんなつもりじゃ……」
青白い顔が薄く赤らんだところで、階上からバタバタと騒々しい足音が降りてきた。
「――あったよ! 見つけてきた! “HIROKI” が出演してるドラマ『水も滴るイイ悪党』だよ! ちゃんとディスクに落としといてよかった。久しぶりにみんなで観ようじゃないか!」
慌ただしく降りてきたタマコは、小さな段ボール箱を両手で抱えている。ドサリとテーブルに置かれた箱の中には、数十枚ものディスクケースがみっちりと入っていた。
「それだけじゃないんだ。押入れの奥の方から懐かしいドラマがわんさかと出てきてさぁ……ほらこれ、学園もので可愛いメンズがいっぱい出てるんだよ……ああ、それからこれは純愛ストーリーだったねぇ……主人公の男の子がメチャクチャ切なくってさぁ……染みるんだよ、泣けるんだよ、これはお勧めだよ?」
差し出された薄いプラスティックケース。柾紀は視線を逸らして新しい煙草を口に咥えた。
「……いや、俺はいい。ノブ、お前ママさんと一緒にどうだ」
「……遠慮しときます。リョウさん、どうぞ」
「僕もパスするよ。ドラマとか観ないんだよね。幸夜、観たら?」
「観ねーよ」
速攻で切り捨てる。
タマコの毒々しい化粧顔がギュイッと引き攣れた。
「――ナンだいみんなっ、つれないね! ここにあるのは名作傑作厳選ドラマばっかりなんだよ! ヒトがせっかく調査の参考になるかと思って持ってきてやったのにさ!」
「でもママさん、まったく関係ないドラマもたくさん入ってるよね」
亮のツッコミにピーギャーと喚き返すタマコ。
不意に小さな電子音が聞こえた。柾紀が立ち上がり、中央のデスクに置いたままの携帯端末を取りに行く。
「――ナンだどうした? ……あ?」
端末を耳に当てた柾紀は、途端に顔を顰めて耳から端末を離す。
「……ちょっと落ち着けよ……は? ……ナンだって? ……はぁ?」
かすかに通話相手の甲高い声が漏れ聞こえてくる。あれはリリコだ。何を言っているかはわからないが、興奮したように喚き散らしている。
「――鴨さんはどうし……、おいっ、リリコ――、」
と返したのを最後に、柾紀は軽く舌打ちして端末を放り投げた。一方的に切られたのだろう。
戻ってきた柾紀は耳の穴に指を突っ込みつつ、集まる視線を見渡す。
「……リリコからだ。ワーワー叫ぶからナニ言ってんだか……」
「何か、トラブル?」
亮が気遣わし気に訊く。
「……別人だった、って」
困惑を交えた柾紀の言葉に、やっぱり、と小さく呟いたのは信孝だ。どこか勝ち誇った感さえ見える。だが幸夜は瞬間的に直感的に、あり得ない、と思った。
「なんでも、あの嬢ちゃんが使ってたネットカフェの店員だったらしいんだが……」
柾紀は、腑に落ちない表情のまま言った。
「――そいつ、鴨さんが声かけたら、いきなり逃げ出したそうだ」
【用語解説】
★行方調査と所在調査
探偵事務所によってその線引きは微妙に異なる。『サブロ探偵事務所』では、警察に行方不明届を出したうえでの調査依頼を行方調査、そうでない場合の依頼調査を所在調査として区分している。
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