僕とリンドの半日

モッフン

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チワワのリンド、里親探して10時間

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 これは僕とチワワの半日の物語

「ワンっ」

 チワワのリンドが吠えた。僕はリンドに近づき、頭を撫でてやった。する気持ち良さそうに目を細めた。可愛い奴だなぁと思った。そして、ふとある疑問を抱いた。

「お前飼い主さんは?」

「…………」

 もしかしたら迷子かもしれない。こんな広い草原を一匹だけで彷徨うなんて可哀想過ぎる。それに、もし誰かに飼われているなら、その人の元に返してあげなくちゃいけないし。

「よし、じゃあ一緒に探すか!」

「わぅん!!」

 こうして僕たちは飼い主探しを始めた。まずは、この辺りで一番大きな家に行ってみることにした。そこならばきっと飼い主がいるはずだから。

「おーい! 誰かいませんかー!?」

 家の入口に着くなり僕は大声で叫んだ。すると、門番らしき人がこちらに向かってきた。

「どうしたんだ? 何か用かい?」

「実はですね──」

 事情を説明すると、門番の人は少し困ったような表情を浮かべた。

「その飼い主なら向かいの家の方だが、この間お亡くなりになってね……」

「えぇ!! そうなんですか!?」

 そんなことってあるのかよ。せっかく見つけたというのに。でもまぁ仕方ない。諦めるしかないだろう。

「あのぉ……ちなみにどんな人だったとか分かりますかね?」

「そうだねぇ……確か犬を飼っていたと思うけど……名前は忘れてしまったなぁ」

「そっかぁ……ありがとうございました」

 とりあえず礼を言いその場を離れた。それからしばらく歩き回りながら飼い主を探したが結局見つからなかった。

 途方に暮れて歩いていたらクラスの同級生、花梨と偶然出くわした。

「そのチワワリンドじゃない? どうしたの?」

「それがさぁ……」

 僕は事の経緯を説明した。すると彼女はクスッと笑った。

「それなら親戚のおじさん犬好きだから聞いてみるよ」

「本当か!? 助かるぜ!!」

 彼女の家はペットショップを経営しており、動物好きな客が多いらしい。早速電話をしてみるとすぐに来てくれた。

「やあやあ、君がその子を保護してくれてるっていう友達かな?」

「はい、そうです」

 ふむ、と頷くと花梨のおじさんはこう切り出してきた。

「私が引き取るというのはどうかな?」

「いいんですか!?」

 願ったり叶ったりだった。これで一件落着だ。

「良かったね~リンドちゃん♪」

「わんっ♡」

 嬉しさのあまり思わず抱きついてしまうほど可愛かった。

「半日だけだったけど、なんかさびしくなるな」

「うん……私も寂しいかも……」

「また遊びに来るといいよ。いつでも歓迎するから」

「はい! 本当にありがとうございます!」

 こうして僕らは再び別れることになった。

 あれからリンドは花梨のおじさんのとこで元気にしているとのことだ。 今度の日曜日、遊びに行ってみようかな。
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