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北の森のダンジョン編
第62話 3人組騒動
しおりを挟む「おいコラ、放せ!」
「俺たちは何も知らねぇよ!」
「誤解だー!」
3人の男が口々に喚いている。
状況が分からないので近くのおばちゃんに聞いてみた。
「賊が捕まったんですか?」
「あぁ、そうなんだよぉ。なんでもねぇ、荷馬車の護衛で雇ってた冒険者がなんと賊とグルだったみたいなんだよ。」
なるほど、護衛任務に就いて賊を手引きしたのか、そうなると荷馬車を守るのはとても困難になると思うけど、よく賊を捕らえたもんだなぁ。ここからだとよく分からないからギルドに入ってみるか。
人混みを掻き分けて進み、何とかギルドの入り口まで辿り着いた。
中に入るとすぐに縛られた男が3人集まって床に座らされている。その奥には如何にも盗賊って格好をした男が2人、縛られて項垂れている。
その側にはサイモンの爺さん、クラナ、マッチョな冒険者と、そして大きなキノコが立っていた。
「っん?キノコ??」
思わず凝視してしまう。
確かに大きなキノコがそこに立っている。
よくよく見てみると、真っ赤なキノコの笠を被った女性のようだ。しかも大きな尻尾があるって事は、獣人の女性のようだ。
顔は笠で隠れて見えないな。
見慣れぬ女性を眺めていると。
「だからぁ、俺たちは関係ねぇんだって!」
縄で縛られたハゲ頭の男が声を荒げる。
「誤解だって言ってるだろぉ!」
腹に縄が食い込んでいる太った男も続いて喚く。
「早く縄を解けよぉ!」
その隣でバタバタと足を暴れさせているのは子供ではなくて背の低い男だった。
「実行犯が何を言っとるか!往生際が悪いぞ!!」
サイモンの爺さんの一喝にシュンと項垂れる3人組。そう言えば、この3人組は見た事あるような。
マジマジと3人組を見ていると、チビの男と目が合った。
「あぁー!お前は生意気なビリビリ野郎じゃねぇか!?」
チビの男が大きな声を出して睨んできた。
「おぅおぅ。お前か!この前は世話になったなぁ。」
ハゲ頭の男も睨んでくる。
「んー。どちら様でしたったけ?」
惚けてみたが無駄だった。
ラブラさんにちょっかい出して返り討ちにされた3人組の冒険者でしょ?
辛うじて憶えてますよ。
「なんじゃ、ガルドの知り合いか?」
サイモンの爺さんとクラナからは冷ややかな目線が飛んでくる。
「いや、以前に絡まれただけだよ。この3人が今回の犯人なの?」
「状況からしてそうだの。なかなか白状せんがのぅ。」
どうやら護衛任務に就きながら賊を手引きした実行犯がこの3人だそうだ。
「てか、護衛が裏切ったのに、よく賊を捕らえたね。」
「ほぉっほぉっ、それはワシのお手柄じゃ!念の為に護衛を増やしたからのぉ。」
「それが隣の人たち?」
「そうじゃ。先日、この町に来たばかりなのじゃが腕は確かな2人だったのでのぅ。」
「それならお手柄はその2人の方だね。」
爺さんの隣でクラナも頷いている。
マッチョな冒険者は腕を組んで笑っている。
キノコの女性は会釈したのか完全に笠で隠れてしまっている。
場が和んだその隙に、3人組が縄を抜け出した。どうやらナイフを隠し持っていたようだ。
3人組は全力でギルドの外へと逃げ出す。
2人の冒険者も即座に反応して追うが、寸前の所で手が届かなかった。
ギルドの外から悲鳴が上がる。
野次馬で集まっていた人の群れが蜘蛛の子が散った様に逃げ出していった。
しかし3人組は逃げ出す人達の中から人質を捕らえていた。
俺がギルドの外へ出た時、3人組は2人の女性を人質に取っていた。
人質にされてしまったのは、リィナとメアリーだった。
ナイフの刃を向けられ恐怖に震えていた。
「それ以上近寄るなぁ!この女どもがどうなっても良いのかぁ?」
ハゲ頭の男が大声を上げる。
2人の冒険者もそれを聞いては動く事が出来ないでいる。
現場に緊張感が走る。
「さぁ、お前らも道を開けろ!邪魔だ!!」
人質を連れて人の壁を抜けようと歩き出す3人組。
海が割れた様に人混みから道が現れた。
3人組は満足そうに道を進む。
俺の隣ではマッチョな冒険者が苦虫を噛み潰したかの様な厳しい顔をしている。
人質を取られていては迂闊に手出し出来ない。俺も歯痒い気持ちで3人組を睨む。
「ヒャハハ、おい、お前らも道を開けろ!」
3人組の道を塞ぐように2人の男が立っていた。
「おい、聞こえなねぇのか!?そこをどけよ!」
ハゲ頭の男が怒声を上げる。
2人の男はピクリともしない。
「おい、お前ら、人質を貸せ、舐めた態度のあいつらに痛い目を見せてやれ!」
チビとデブの男がナイフを持って駆け出した。
その相手はハイロさんとジャックさん。
2人は静かな怒りを秘めた表情をしている。
俺も心配になった、その一瞬。
チビとデブは宙を舞った。
白目を剥いたチビとデブは地面へと激突し、ピクピクしている。
「マジかよ。。。」
俺の隣のマッチョも驚きで目を剥き出しにしていた。
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