婚約破棄された令嬢は王太子の懐刀になる

香月

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動き出す2

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全身を黒に包まれたその者は静かにエンデの前に立つと頭を垂れる。


「動けるかい?」


エンデはゆっくり椅子に腰を掛け、その者からの返答を待つ。


「なんなりとお申し付けください」


低い男の声で答えると、エンデは目を細めて笑った。


「暫くジルには屋敷にいてもらうことにするから護衛として側にいてほしいんだ」

「ジルウェルシア様お一人でも充分お強いですが、私は必要でしょうか」 

「暫く君には「表」になってもらう必要があってね。明日から付いてくれるかい?」

「私は「表」向きではないと思いますが」

「いや少なくても1ヶ月は君が必要だ。私もができてしまってね」

「かしこまりました。では明日から「表」として参ります」

「よろしく」

その者は音もなく消え去り、執務室は静寂に包まれた。

「さて、どうしようか」


戸棚に閉まっていた酒を取り出し、慣れた手付きでグラスへ注ぐと一息で飲み干すと、度数の高いアルコールが燃えるような熱を発して喉を通る。


「しっかり償ってもらおうか」


低く唸るような声でそう発すれば、どこからともなく風が舞い上がりエンデの少し長い茶髪が一瞬靡いた。

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